大橋ちっぽけが考える、音楽における“共感”の生み方 ヒット曲「常緑」以降の制作モードを語る
「10年先でも聴けるだろうな」が曲のコンセプト
ーー映像が浮かんでくるような演出ですよね。サウンドに関してはどんなイメージがあったんですか?
大橋:これも「常緑」とのつながりになるんですけど、あの曲のサウンドに自分が好きなエッセンスを詰め込んでるんですよね。ちょっと懐かしいサウンドというか、モータウン時代のジャクソン5だったり、自分が思うエバーグリーンな要素を自由に反映させて、「10年先でも聴けるだろうな」と思える曲にするというのがコンセプトだったんです。今回はそれこそThe 1975だったり、現在のUKサウンドの雰囲気みたいなものも取り入れていて。岩崎さんと「こういう音になったらいいよね」と話しながら調整していきました。
ーーギターのカッティングやリズムもそうですが、かなり軽快でポップな仕上がりですよね。
大橋:そうですね。これも歌詞の言葉の選び方と同じで、悲しいことをポップに歌うということをやりたかったんです。そうすることで、主人公が抱えている“もう無理だとわかってるけど、期待してる”という気持ちを表現したかったので。洋楽を聴いていると、そういうことが多いんですよ。僕は英語ができないので、パッと聴いただけでは歌詞の意味はほぼわからない。「心地いいビートだな」という感じで聴いていて、歌詞の翻訳を見てみると、すごく暗い内容だったりして。そういう体験は自分が作る曲にも出ているのかもしれないですね。跳ねるようなビート、ボカロみたいにMIDIで打ち込んだメロディに乗せてめっちゃ悲しいことを歌うっていう。
ーー「嫌でもね」のメロディもかなり緻密ですよね。これを歌うのは相当な技術が必要な気が……。
大橋:本当にそうなんですよ(笑)。この取材の前に歌番組の収録があったんですけど、けっこう大変で。曲を作ってるときは、生で歌うことを無視しがちなんです。ライブが嫌いとかではなくて、人力で歌えないメロディであっても、「ここにはこのメロディが来てほしい」を優先させるというか。中学生の頃からDAWやボカロに親しんだ世代ですからね。最初からギター1本の曲作りではないし、エディットも当たり前にやっていたので。そのぶんライブのときが大変なんですよ(笑)。自分で作った曲を必死に練習して、ようやく何とか歌えるようになるっていう。自分の曲ながら「なんだこれ」って思いますから。「常緑」も息継ぎの場所がないんですよ。TikTokなどでカバーしてくれる方もたくさんいらっしゃるんですけど、申し訳ないなって思います(笑)。
ーー「常緑」からの流れで「嫌でもね」をチェックする人も多いだろうし、大橋さんとしては当然、自分の音楽を更新していきたい気持ちもある?
大橋:そうなんですけど、「常緑」と同じくらいとか、それ以上にバズらせたいという意識は特になくて。いろんな楽しみ方があっていいし、“「常緑」だけ知っていて、その他の曲は聴いたことがない”でもいいんです。もちろん「嫌でもね」に辿り着いてくれた方が「この曲もいいじゃん」と思ってくれて、自分のことを好きになるきっかけになったら嬉しいですけど。そうなるだけのサウンドやリリックを作れた手ごたえはあるし、いろんな人に愛される曲だと思うので。さっき「曲が書けない時期があった」と言いましたけど、じっくり成熟させて、「常緑」の次に出すべき曲を作れたかなと。曲を聴いてくれた人が「これも沼りそう」ってコメントしてくれたのも嬉しかったです。
ーーしかも“自然にできた”曲が、自分で納得できるクオリティに至ったのは素晴らしいですよね。大橋さん、トレンドはあまり意識しないタイプですか?
大橋:洋楽はずっと聴いていますけど、J-POPの最先端はあまり知らなくて。「常緑」がヒットしたときに、同じタイミングでチャートに入っている曲を聴いてみたんですけど、そこから何か影響を受けたわけでもなくて。もちろん良くないということではないんですけど、自分の場合は好きなことを突き詰めて、アレンジャーやエンジニアの方と一緒に形にしていくのが合っているんだと思います。ヒットメイカー的なスキルも必要かもしれないけど、実力以上、知識以上のことはやれないと思うんですよ。「J-POPとしてどうか?」を意識するよりも、自分が好きなことや得意なことーー歯切れの良いビートだったり、キャッチーなメロディラインだったりーーを追求するのがいいのかなと。
ーー徹底してますね、そこは。では、大橋さんにとって理想のポップス像とは?
大橋:家や車などでとりあえず何かかけたいときに、1曲目に聴きたくなる曲を作りたいと思ってます。軽快でポップで、特別に濃いわけではないけど、ずっと記憶に残っていて、ふとしたときに聴きたくなるような。そういう曲は長く聴かれるだろうし、愛してもらえると思うんですよね。
ーー何気ないときに聴きたくなるって、確かにすごいことですよね。それこそがまさにポップスというか。
大橋:結局、そういうものが好きなんだと思います。聴いてくれる方も、はじけるポップスというか、ビートやメロディが心地いいものを求めてくれることが多い気がしていて。自分としては特定のイメージを付けないようにしてきたんですが、リスナー側に“ちっぽけっぽい”と思ってもらえるのはうれしいですね。「嫌でもね」に関しても、“いかにもちっぽけ君が好きそうな音だ”というコメントがあったんですよ。自分で意図しているわけではないけど、自然と“らしさ”が定着してきたのはいいことなのかなと。
ーー最近はTikTokで曲と出会うリスナーも多いですが、楽曲の一部が拡散することだったり、ユーザーが曲を使って楽しむことについてはどう感じていますか?
大橋:どういう形であれ、曲が愛されるのは嬉しいです。もちろん全体を聴かないと伝わらないこともあるので、一部だけではなく、全部聴いてほしいという気持ちはありますけどね。どこを切り取られても印象に残るし、「全体を聴きたい」と思ってもらえるような強さが必要なんだろうなと。どこまでやれるかはわからないですけど……。
ーー今後の楽曲も楽しみです。「嫌でもね」以降も制作は続いてるんですか?
大橋:はい。レーベルを移籍したことでスタッフも変わったんですけど、仕事の進め方がこれまでとかなり変わっていて。“やりたいことをやる”“好きなことを追求する”というのは変わらないんですけどね。新天地で新しい刺激を受けつつ、どんどんチャレンジしていけたらなと。せっかく勇気を出して移籍を決断したので。
ーーもしかして環境が変わるのが苦手?
大橋:そうなんですよ(笑)。小学校、中学校のときに何度か転校を経験してるんですよ。そのたびに人間関係がリセットされて、新たに構築しなくちゃいけない煩わしさがイヤで……。「この人はどういう人だろう?」とわからないまま、声をかけるのって大変じゃないですか。今はそんなこと思ってなくて(笑)、チームのみなさんも言い方ばかりだし、すでに信頼関係があって。このチームのためにがんばろう、というマインドになってますね。
■リリース情報
大橋ちっぽけ
New Digital Single
「嫌でもね」
配信中
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