伊藤美来のエンターテイナーとしての実力 映画スターやヒロインのように魅了したワンマン公演を観て

 「傘の中でキスして」のイントロが流れると、傘をさしブルーのドレスに衣装チェンジした伊藤が再登場。ダンサーたちとの絶妙なコンビネーションと、ステージを大きく使ったパフォーマンスは、映画『雨に唄えば』を彷彿とさせる。続いて披露されたのは「恋はMovie」と、なんとも心憎い選曲に唸ったファンも多いのではないだろうか。青いメガホンを片手にミュージカル映画のような世界に観客を惹き込み、エンターテイナーとしての実力を大いに見せつけた。

 次に最新曲「青100色」について「アーティストデビュー5周年を迎えて初めての主題歌、5年経ったからこそ大きくなった姿を見てもらいたい」と“原点回帰“を掲げ、「今まで守りつつ作ってきた音楽の方向性や雰囲気を踏襲して、でも成長した姿を見てもらいたい」と熱い想いで作られたことを語ると、きらめいたサウンドをそのままに透明感あふれるボーカルで聴かせた。次に歌われたのは、まさに原点となるデビュー曲「泡とベルベーヌ」だ。変わらない部分と積み重ねられた魅力を示す秀逸な演出に、客席のテンションをぐっと上がる。

 「疲れてないですか?」「まだまだクラップ行けますか?」と手を振りファンを盛り上げると、ライブもいよいよラストスパートに。大人っぽさと無邪気さが入り混じった「La-Pa-Pa Cream Puff」、前にステップを踏み出す振り付けでポジティブなメッセージを届ける「ミラクル」と続き、ハンドクラップでステージと観客が一体となった「all yours」で会場のボルテージも最高潮に達する。

 ダンサーを拍手で送り一人ステージに残ると、「今回のライブツアーはみんなに笑って帰ってほしいなと思ってました。たくさん笑顔になれましたか?」「この5年間、みなさんの声のおかげで自信を持つことができたり、自分を肯定することができるようになって、この5年を区切りにここから先は私がみなさんを肯定したり、安心させたりできるようなアーティスト・役者・表現者になっていきたいと思います!」と、全ての人への感謝の想いを丁寧に言葉を紡ぐ姿に、客席からもあたたかい拍手が起こる。

 「みんなの今日の色、たくさん私に見せてください。これが私です。これからもよろしくお願いします!」と叫ぶと、ラストナンバー「ワタシイロ」を歌唱。目を輝かせながら客席の隅々にまで心を寄せる、温かい笑顔のパフォーマンスで本編を締めくくった。

 鳴り止まないアンコールの拍手ののち、ポニーテールにアレンジされたツアーTシャツに身を包んで登場し、「孤高の光Lonely dark」を熱唱した。ライブ終盤にも関わらず力強く美しいハイトーンを響かせる姿に、客席も負けじと大きくペンライトを振る熱いエネルギーのやりとりが印象的な一曲だ。

 「また絶対にみんなに会いたいです。会いに来てくれますか?」「本当にずっとみんなと一緒にいたいなと思います。また会えることを信じてもう一曲歌っていいですか? みんなと私はBest Friendですよー!」と呼びかけ、最後の一曲「君に話したいこと」を熱唱。最後にはマイクを外し、生声で「みんなまた会おうね!」と再会を約束した。

 練られた演出やセットリスト、ハイレベルなパフォーマンスの数々……誰が観ても笑顔になれるような、楽しく温かいステージだ。まるで映画の中のスターのようでもあり、観客それぞれにそっと寄り添ってくれるヒロインのようでもあった。原点回帰を経て次なる目標を掲げた伊藤美来は、これからどのようなステージを見せてくれるのだろうか。終演後も無限に期待が膨らむような、幸福なライブであった。

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