異色DIY音楽ユニット mubi、無二の歌声を最大に生かすクリエイティブの魅力を紐解く
己の存在意義と向き合い、葛藤している様を綴った「春疾風」
そのmubiが、4月15日に2ndデジタルシングル「春疾風(はるはやて)」を配信リリースする。KAKUWAが詞曲と編曲を手掛けたこの曲は、爽快かつ抒情的なメロディラインが、まさに薫風を思わせるアップチューン。擬音にしたら“ポン”と表現してしまいそうな、軽やかな音色のシンセサイザーのフレーズがフックになっていて、非常にキャッチーだ。リズムや他の楽器のフレーズもシンプルかつミニマムで、短いタームのループで構成されたバックトラックには、KAKUWAの手腕を感じる。
KAKUWAが惚れ込んだたにおの歌声の魅力は、年齢も性別も超越したピュアさにある。母音にふわりと舞うように抜けていく独特のニュアンスがあり、朴訥とも取れる無垢さが清々しい。音符の上に言葉を置きにいく丁寧な歌唱法が中心でありながら、フレーズの最初の一音にクレッシェンドをつけていたり、逆にフレーズの最後の一音をジャストより少し早めに切り上げていたりと、歌い手としての天賦の才を感じずにはいられない。あまり声を張らずにロングトーンを鳴らすところも、前述した清々しさを後押ししている。
歌詞は、己の存在意義と真っ向から向き合い、葛藤している様を綴った内容。タイトルの「春疾風」は、俳人であり、亡くなったKAKUWAの祖父が読んだ句に登場する言葉だ。祖父っ子だったKAKUWAはいつの日か、「春疾風」という言葉を使いたいと思っていたことから、KAKUWAの中でも非常に思い入れが強い曲であることが伝わる。
〈教室〉という言葉からわかるように、主人公はティーンエイジャーの設定だろう。〈「明日」も「らしさ」も全部/今ドブに捨てて/暴れたい〉といった、字面だけみると鮮烈な印象の言葉もあるが、たにおの歌声の魅力によって、負の感情や衝動だけがフィーチャーされない聴き心地に仕上がっている。しかしながら、例えば小さな子供がそうであるように、無垢なことはある意味、残酷でもある。特に、半分ため息のように歌う〈暴れたい〉というワンフレーズは、その残酷さが浮き彫りになった最たる形のように思う。年齢を重ねるにつれ忘れがちになるこの誰もが持つ感情に、筆者は改めてハッとさせられた。
「春疾風」は、人間にとって忘れてはいけないことを引っ張り出してくれる1曲だ。
■リリース情報
「春疾風」
4月15日(金)よりデジタルシングル配信
https://lnk.to/dsLPjQ
■関連リンク
mubiオフィシャルサイト:http://mubi.jp
mubiYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCpCC8hGopctUyEDf_of43Kw