King Gnuはなぜ全方位型のロックバンドになり得たのか 豊かで幅広い個性を高め合える4人のケミストリー

 日本のロックバンド像を刷新し、ロックバンドとして音楽シーンのトップランナーに位置づけられるまでになったKing Gnu。そろそろ彼らに影響を受けたバンドも出てきかねない頃合いと思うのだが、彼らを模倣するにはあまりにもメンバー個々の能力値が桁違いである。“圧倒的なソングライターと固く結びついた演奏メンバー”という従来的なバンド像の括りに収まらず、活動初期から各々の場所で八面六臂の大活躍を続けているのが彼らの大きな特徴だろう。King Gnuを全方位型のモンスターバンドとして動かしつつ、それぞれの存在を着実に様々なシーンに浸透させる。分かりやすくオープンなフィールドにおいても、コア層に支持されるマニアックな分野においても、4人の活躍は広く深く行き渡っているのだ。

 例えばバンドの首謀者でソングライターの常田大希は、音楽集団 millenium paradeの中心人物でもある。J-POPを志すKing Gnuに対して、millenium paradeは実験的な音楽性だが、2021年の『第72回NHK紅白歌合戦』にも出場を果たし、刺激的かつ独創的なポピュラリティで世間を撃ち抜く音楽を生み出し続けている。チェロ奏者としてもNYのファッションショー『N.HOOLYWOOD COMPILE FALL2020 COLLECTION』で音を鳴らし、家入レオやSixTONESなどへの楽曲提供も活発。また常田が中心となって結成された制作チーム PERIMETRONも、Mr.ChildrenのアートワークからTVドラマ『アバランチ』(フジテレビ系)のビジュアルに至るまで幅広く担当している。野心と破壊性を持ち、あらゆるジャンルの人々を深く虜にできる固有の作家性も凄まじいが、近しいアーティスト全体をクルー化した作品づくりを重視している常田。仲間と連帯することでより強靭なプロダクトを生み出そうとするリーダー資質に富む人物なのだ。

Daiki Tsuneta - N.HOOLYWOOD COMPILE IN NEW YORK COLLECTION
millennium parade - U

 そして、ボーカルと鍵盤を務める井口理の親しみやすさがバンドのキャッチーさとして光っている。King Gnuが快進撃を続けた2019年4月~2020年3月の間、ニッポン放送のラジオ『オールナイトニッポン』でパーソナリティを務め、異様なテンションと過剰なトークに惹きつけられたリスナーも多いはず。また俳優としても、主演のWebドラマ『GOSSIP BOX』では冴えない会社員、映画『劇場』では才能豊かな演劇人、映画『佐々木、イン、マイマイン』では粗暴なチンピラ役など多岐に渡る役柄を演じておりその表現力はMVやライブパフォーマンスでも大きく解き放たれている。常田は井口を「誰にでも届き得る声質」(※1)、「人間としてのパワーがめちゃくちゃあるヤツ」(※2)と称しており、その甘美な歌声と人懐っこさがKing Gnuの入り口を広げているのだ。

【第1話】King Gnu井口理主演Youtubeドラマ「GOSSIP BOX/ゴシップボックス」■1_謎の部屋
King Gnu - It's a small world

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