【特集】ラブソングが映す時代の変化:SHIROSE

SHIROSE(WHITE JAM)、時代に求められるラブソングの変化を言葉の視点から考える

 3人組ユニット・WHITE JAMのメンバーであり、ソロのシンガーソングライターとしても活躍するSHIROSE。彼はKis-My-Ft2、ジャニーズWEST、AAA、Da-iCEなど数々のアーティストへの楽曲提供で知られる人気作家でもある。

 以前リアルサウンドで行ったインタビューにも明らかなように、時代に即したワードチョイスで綴られるSHIROSEのラブソングは多くのリスナーの共感を呼び、記憶に残る楽曲として長く親しまれている。

 今回リアルサウンドでは特集「ラブソングが映す時代の変化」の一環として、新たなSHIROSEのインタビューを掲載。前回の内容とも地続きとなる本稿では、SHIROSEが考える優れたラブソングの定義や短いフレーズで伝えることへのこだわりなど、ラブソングにまつわる「言葉」について語ってもらった。(編集部)

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音楽がアーカイブされるようになったことがラブソングに与えた影響

ーー作詞において特に攻めた表現が多いSHIROSEさんですが、ラブソングを作る上で心がけていることはありますか。

SHIROSE:攻めてる表現や、物事の奥まで書ききるのが好きですね。どんな作詞家も作曲家も一回曲ができた時は割と攻めた感じなんです。でも、それが後からきれいに整えられていってしまうことが多いと思うんですよね。例えば〈YouTube〉という言葉を歌詞に使った時に攻めた表現だと思ってくれた人がすごく多いんですけど、同じ歌詞を5年前に使った時、レーベルの人にやめたほうがいいと言われたことがあるんです。でも、自分的にはそういう身近にある誰もがわかる、すぐそばにある表現を捨ててはいけないと思っていて。音楽って記録するメモ用紙のようなものでもあると思うんですね。今その人がここにいることを50年後、100年後も残しておける記録。そんな言葉は普段歌詞で使わないとか、既成概念にとらわれて削ぎ落とされていくような音楽にはしたくないから、なるべくパーソナルで自然体な表現をしていきたいと思っています。

ーー幅広い人に共感できる曲にしようと考えると、身近すぎたりパーソナルなイメージの表現を避けようとするのは理解できるかもしれません。ただ、今そういう曲は逆に誰にも引っかからないものになってしまう可能性もあります。

SHIROSE:そうですね。ここ数年で世界中の音楽がアーカイブされるようになったじゃないですか。僕たちが生まれる前の音楽でも、海外の音楽でも、簡単に聴くことができる。これって、ここ数年の出来事なんですけど、その影響で例えば10代の人たちの中にはThe Beatlesを新人バンドだと思って聴く人もいる。そういうはるか昔の音楽でさえライバルになるということなんです。じゃあ今この2022年に書く音楽の価値がどこにあるかというと、使い古されてきた言葉じゃない言葉の中にあるはずで。今感じた衝動とか、自然体に出てきた言葉とか、この時代を生きていて生まれる言葉が一番の価値だと思うので自然体でありたいんですよね。

ーー時代に求められるラブソングの変化について感じることはありますか?

SHIROSE:世の中が変化しているかどうかはわからないですけど、自分が聴く音楽もより個性的なものを聴くようになってきていますね。それも音楽がアーカイブされている影響からなんじゃないかなと。もちろん変わらないものもあると思うんです。例えば、ヒット曲を作ろうと思った時に「こういうコードとこういうテンポ展開が絶対必要」みたいな法則は今も変わらなくあると思います。だけど、それは5年前も10年前もやっていることではあるから、どうしてもありふれたものになってしまう。10年前はその年に出た楽曲が主なライバルだったけど、今の世の中は全部の音楽がライバル。だから強烈に人の印象に残していこうと思ったら、個性が求められる度合いも半端なくなっている。逆に言うと圧倒的に個性のある人が今後出てくる可能性、そういう楽曲がJ-POPから出てくる可能性は広がっているんじゃないかなと思いますね。

ーーそう考えるとハードルは年々上がる一方ですね。

SHIROSE:だって世界各地で過去に作られた音楽がまたチャート1位になったみたいなことが度々起こってるんですよ。つまりライバルが最新の音楽だけじゃないという、ライバルが100倍ぐらいになったような感覚です(笑)。

ーーやはりラブソングにおいても個性的なものが増えている印象ですか。

SHIROSE:そうですね。その個性というのは尖っているとかそういうことではなくて、誰がどういう立ち位置で歌っているかみたいなことで。サブスクが現れる前は他の国とか、他の世代の音楽を簡単に聴くことができなかったこともあって、最大公約数みたいな歌詞が求められていたと思うんですけど。今はそうじゃないので、もっとその人にしかありえない表現みたいなものがどんどん出てくる可能性があると思います。

Boyfriend - SHIROSE from WHITE JAM (Official Music Video)

ーー歌詞を書く時に大切にしていることはありますか?

SHIROSE:短いフレーズでいかに伝えられるか、でしょうか。今までのJ-POPのラブソングは、感動を伝えるのにだいたい4行とか7行かかっていたんですよ。以前は人に曲をしっかり聴いてもらえる時代だったしそれはそれで良かったんです。でも今7行で感動させていたら遅くて。2行とか1行とか短いフレーズで伝えられれば伝えられるほどいいと思っています。曲が切り取られて楽しまれる仕組みがここ数年特に強くなってますし、どこが切り取られて、どう受け入れられていくかはわからないですからね。大袈裟にいうと世の中の高校生がラインを1文字で「バ」とか「マ?」とか会話する時代なので、世の中の人の言語感覚は2022年以降ももっと短くなっていくと思います。でも1行、2行で物事を書き切るのが一番難しいことなんですよ。

ラブソングは失恋して最悪だった感じを歌うのが最強

ーーSHIROSEさんが考える優れたラブソングの定義はありますか?

SHIROSE:お守り感ですかね。音楽ってなくても生きていけるじゃないですか。でも、あるとちょっと頑張れたり、ダメージが減ったり、プラスのパワーをもらえたりする。そういうラブソングはいいんじゃないんですかね。また2パターンあって、寄り添ってくれる、応援してくれる感じのラブソングもあれば、バッドエンドすぎる、何もいいことがないラブソングもある。僕はどっちもいいと思います。バッドエンドすぎるラブソングを聴いていて「自分もそうだわ」みたいな気持ちになってよかったと思えることってあるじゃないですか(笑)。だからバッドエンド系も好きです。それをまとめて言うと、お守りっぽい感じ。握り締められるようなラブソングっていいなと。あと、女性の書くラブソングには絶対勝てないなっていつも思うんです。失恋して、最悪だった感じを歌うのが最強というか。だから西野カナさんってやっぱり最強だなって思いますし。

ーーSHIROSEさんも失恋の経験を書いている曲がありますよね。

SHIROSE:「9つも離れた君との恋」ですね。前の恋人と別れ際に交わした9通のLINEがあるんですけど、それをコピペして歌詞にした曲で。歌詞というか、歌詞にもしてなくて音に乗せてそのまま読み上げた曲なんですけど、YouTubeのコメント欄はリスナーの相談ボックスみたいになってます。ナチュラルな感想がラブソングになっているという意味では、この曲はたしかにいいなと思いますね。

ーーやはりリアルに勝るものはないのかもしれないですね。

SHIROSE:そうですね。どういう感じで聴かれるのかなと思ったんですけど、先生に恋している人とか、すごく年下の彼氏がいる人とかが聴いてくれているみたいで。みんなが同じような気持ちになっているんだなと。

恋人に送ったLINEを歌にした、実話曲。 「9つも離れた君との恋」SHIROSE from WHITE JAM [泣き歌]

ーー曲作りにおいて一貫していることはありますか。

SHIROSE:自分が書いた曲に共感してほしいと思っているけど、こういう生き方もあるんだよという提案もしたいと思っていて。ソングライターとか音楽の価値として、提案も残せたら、それは全然違うなと。自分の気持ちをメモすることが大前提なんですけど、それだけじゃなくて、一つでも新しい考え方の提案が曲ごとにたったワンフレーズでも入れることができたらすごくいいですよね。そういったフレーズを常に探し求めているような感覚です。でもやっぱり自分の人生の中で大きな衝動があった時にこそそういうフレーズに出会えたりするもので。最悪なことが重なった時にできた「ウソツキ」という曲の〈口癖の「大丈夫」も辛くなった時の合図でしょ〉という1行が今でも誰かのお守りになっていたりする。そういう共感だけではない1行の提案が何年経っても覚えていてもらえるフレーズになるんだなって。

【実話】今ネットで1位獲得の話題の泣き歌!!【PV】ウソツキ/WHITE JAM(シロセ塾)

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