現代のポップを痛烈に射抜く4s4kiとは何者か? 気鋭の女性アーティストが表現する、カオスとしての普遍性
4s4kiの音楽が表すのは、カオスとしての普遍だ。
1月7日には『バズリズム02』(日本テレビ系)に出演しライブを披露、「今年バズるアーティスト」として紹介され、にわかに注目を集める4s4ki(アサキ)。暗い照明の中で揺らめく銀色の髪とピンクのシャツ。抑鬱した感情と生活を描き出す言葉とパフォーマンス。過剰なノイズとメロディの瑞々しさが同居する楽曲。地上波の放送で印象を強く残した4s4kiの来歴と表現の在り処を、ここでは紹介していく。
1998年3月11日生まれの4s4kiは、17歳ごろから自宅で楽曲制作を始め、やがて路上ライブを行うようになる。舞台音楽への楽曲提供などを続け、2018年に<術ノ穴>からEP『ぼくはバカだよ。』で「アサキ」としてデビュー。2019年3月には「4s4ki」にアーティスト名を改め、2021年4月にビクターエンタテインメント内の<スピードスターレコーズ>からメジャーデビューした。海外アーティストを客演に迎えたシングルを4月から3カ月連続で配信リリースし、同年7月にはデビューアルバム『Castle in Madness』をリリース。その後も精力的にEPのリリースやライブを続け、今最も勢いを感じさせるアーティストといえるだろう。
4s4kiを語るときについてまわるのが“ハイパーポップ”という言葉だ。ハイパーポップとは、「チージーで暴力的なサウンド」「頻出するノイジーな電子音」「急激に変化する曲展開」などを特徴とする、2019年頃からその名を知られるようになった「誇張したポップミュージック」などの総称であり、100 gecsやチャーリーXCX、あるいは宇多田ヒカル「One Last Kiss」の共同プロデュースを担当したA.G.クックなどが代表的なアーティスト名として挙げられる。エレクトロニック、ラップ、エモ、ゲーム音楽などが混ざり合った落ち着きのないサウンドはインターネットカルチャーのコンテンツ過多な状況とも共振し、TikTokをはじめとするソーシャルメディアで、特に海外の若者層からの支持を集めている。そんな中、エレクトロニックな太いビートにポップな歌が乗る「Sugar Junky」がSpotifyの海外公式プレイリスト〈hyperpop〉に選出されて以降、リリースごとに楽曲が選出されるなど、4s4kiは「日本におけるハイパーポップの旗手」と目されるようになる。
4s4ki自身、ネットカルチャーを背景に登場した音楽家である。引きこもり生活を送っていた10代の頃にニコニコ動画のネットラップに出会い、音楽を始めた(※1)。レーベルとの契約も、ハチ公前で揺れるようにラップする路上ライブの動画がSNS上で拡散されたのがきっかけだ(※2)。センチメンタルなトラックに淡々とラップを乗せるスタイルから音楽キャリアをスタートさせ、やがてエクストリームなサウンドを獲得することによって4s4ki独特のスタイルが開花する。