『T.B.D.』インタビュー

謎に包まれた2人組バンド The Burning Deadwoodsとは? kiki vivi lily、伶、春野……実力派シンガー招いた『T.B.D.』に至るまで

 ダンスミュージックを基軸としつつ、AlternativeR&B、Jazz、Lo-fi、Citypopなど様々なジャンルを横断したサウンドを奏でる 東京発の2人組バンド、The Burning Deadwoods。今年9月1日、kiki vivi lilyをゲストボーカルに迎えた1srシングル「Turn Me On feat. kiki vivi lily」を皮切りに、PEARL CENTERからボーカルのMATTONとinuiを迎えた「Mystic feat. MATTON & inui from PEARL CENTER」、次世代ガールズユニオンFAKYからAKINAをフィーチャーした「Everlasting Eternity feat. AKINA」、期待の新人シンガーを抜擢した「Fantasy feat. Kona Rose」、E-girlsなどで活躍した鷲尾伶菜のソロプロジェクト・伶との「Labyrinth feat. 伶」やネット発の次世代シンガーソングライター春野、多国籍なルーツを持つSincereを迎えた「Behind feat. 春野 & Sincere」など、立て続けに配信リリースしてきた。シーンを問わず確かな実力を持つシンガーたちが集結しているのも興味深い点だ。

The Burning Deadwoods / Mystic feat. MATTON & inui from PEARL CENTER 【Official Lyric Video】
The Burning Deadwoods / Everlasting Eternity feat. AKINA 【Official Lyric Video】
The Burning Deadwoods / Fantasy feat. Kona Rose 【Official Lyric Video】
The Burning Deadwoods / Labyrinth feat. 伶 【Official Lyric Video】
The Burning Deadwoods / Behind feat. 春野 & Sincere 【Official Lyric Video】

 The Burning Deadwoodsの結成は2020年末。メンバーはDeadwood F(Ba/Gt/ Pro)と、Deadwood K(Key/Pf/Pro)の2人。特定のボーカリストを持たず、毎回多彩なゲストを迎えて現代的かつ洗練されたトラックと、日本人の琴線を震わせるポップでリリカルなメロディを融合させている彼らだが、年齢など素性は一切明かされていない。

「人となりをあまり気にしてほしくないんです。『そんなことより、まずは音楽を聴いてほしい』というのが我々の基本スタンス。ストリーミングを通して新しい音楽を知る時代になってからは特に、その曲の作詞作曲、演奏家が誰であるのかということはリスナーにとってそこまで重要な情報ではなくなってきていると思うんですよね」

 そう語るのはDeadwood F(以下、F)。中高生の頃、ロックバンドに憧れてベースを始めた彼は、一人でも楽曲制作ができる打ち込みを始めたという。同時期にクラブへ通い出し、DJとしての活動を並行して行うようになる。

「そのためのトラックメイキングもやり始めました。バンド仲間からは『あいつはDJだから』、クラブ界隈では『あいつはバンドマンだから』と言われることもありましたが、どちらも自分にとってはやりがいのあるものでした。そのうち、いろいろなアーティストのレコーディングを手伝うようになりました」(F)

 一方、Deadwood K(以下、K)はアカデミックな音楽教育を長年受けてきた人物。「クラブの現場で鍛え上げられたFのスキルと、僕が培ってきた要素が混じり合ったり、逆にコントラストを生み出したり、そのバランスがThe Burning Deadwoodsのサウンドを特徴づけていると思いますね」(K)

「自分がクラブにいるときは、誰がどういう音楽を作っているかよりも、その音楽が自分にどう『効く』かが重要。だからこそ、僕らThe Burning Deadwoodsが作る音楽もどう『効いた』か、その音楽によってどういうフィーリングを得たかが全てだと思っていて。しかも、その効き目がどういう成分なのかは秘密にしておきたい。The Burning Deadwoodsの音楽は秘密の成分で作られた薬のようなもの、ということですね(笑)」(F)

 そんな2人の作曲プロセスもユニークだ。共作といっても、一緒に膝を突き合わせて作るようなやり方ではなく、まずは各々がトラックのアイデアの原型(彼らはそれを「タネ」と呼んでいるそうだ)を作って相手にそのデータファイルを送り、それをまた相手が送り返す。お互いがお互いの「タネ」に対し、自分なりの「解釈」を加えることで、この2人にしか生み出し得ないトラックになるという。

「(データファイルの)やりとりは、多くても2往復くらいですね。それでトラックはほぼ完成します。言葉を交わすことは一切なくて、音で対話をするような感覚というか。『なるほど、ここにこういうフレーズを加えたのか。だったら、こういうコードに変えよう』みたいな感じで仕上げていきますね」(F)

 例えば「Turn Me On feat.kiki vivi lily」は、最初の段階ではKの作ったメロディとコード進行のみで構成されたタネだった。そこにFがリズムとベースを加えて完成させたという。要するに、往復すらせず片道で出来上がってしまった楽曲ということになる。

 どこか80年代~90年代のシティポップに通じる涼しげで洗練されたトラックと、その上で歌うkiki vivi lilyのキュートなボーカル。The Burning Deadwoodsの洋楽的なセンスと、kiki vivi lilyの持つJ-POP的なケレン味が、いい意味でのアンバランスさを醸し出す。しかしタネの時点では、Kの中にシティポップのイメージは全くなかったそうだ。

「僕自身も『シティポップを作ろう』みたいな狙いはあまりなくて。どちらかというと、コード進行とメロディの感じがChicみたいだなと思ったくらいなんですよね(笑)。それで、この曲なら、こうなるだろうなと思った方向……いわばレイト70‘s・ディスコっぽいアレンジに寄せようかなと思ったら、結果的にシティポップと呼ばれるような仕上がりになったんです」(F)

「Fと一緒にやることで、思いも寄らない方向へと楽曲が発展していく、そういうところもThe Burning Deadwoodsの作り方ならではなのかなと思っていますね」(K)

The Burning Deadwoods / Turn Me On feat. kiki vivi lily 【Official Music Video】

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