recheが踏み出した大事な一歩 本人コメントと共に紐解く、オリジナル曲も披露した初ライブに至る道

「みなさん温かく見守ってくださって、その空気感が心地よいライブでした。とにかく緊張していたんですけど(笑)、そんな良い緊張感の中でrecheとしての大事な一歩目が踏み出せたと思います」

 recheが、12月25日に初のワンマン配信ライブ『reche 1st live online cloud 9+1』を開催する。去る12月8日に同ライブのプレミア公開収録が行われ、抽選で選ばれたごく少数のファンクラブ会員に紛れて筆者も現場にて観覧することができた。配信は本稿では、ライブ直後に聞いた本人のコメントと共に、recheの活動やライブの裏側を紐解いていきたい。

reche

 EGOISTのボーカリスト 楪いのりとして活動するchellyが、ソロプロジェクト“reche”をスタートしたのが今年の6月。そのキックオフインタビュー(※1)で本人が「“まる(円)”をイメージしたライブがやりたい!」と唐突に語り、その予期せぬ発言を受けて中村”なかむー”和明プロデューサーが「え、“まる”とは……?」と困惑した話は余談だが、会場として選ばれたクラブeXの円形ホールは、まさに“まる”を体現するようなステージだった。

 ネタバレにつき詳細は控えるが、recheを中心にファンやバンドメンバー、制作スタッフが360度取り囲むような配置、そしてライブ演出やセットリストに至るまで、「recheが見せたかった景色はこういうことか!」と納得できるものだった。そして、“まる”という言葉の温かみや親しみやすさは、recheとファンの距離感やバンドメンバーとのやりとりにも表れていたように思う。

「肉眼で直接ファンの方を見るのは今回が初めてで、予想以上に客席が近くて『顔がある!』と思いました(笑)。緊張しながらもファンの方々の表情を見ることができて、みなさんの拍手にすごく助けていただきました。お客さんが見守ってくれて、それを受けて私が音楽でお返しする。そこでも“まる”というか、ワンループできていたのかなと。それに今回は周りにバンドメンバーの方もいてくれたので本当に心強くて。インタビューの時にとっさに言った“まる”が、こんなに素敵な“まる”になるなんて思わなかったです」

reche 初ライブの模様

 白を基調とした衣装に身を包み、顔にはベールのような装飾がかかっていたものの、彼女の歌手キャリアにおいて観客と対面してライブをするのは、今回が初めてのこと。ライブ中盤になっても「まだ緊張している」と発言していたが、recheにとっての初めての経験が多すぎただけに、それも当然のことだろう。初ライブ特有の緊張感の中、ゆるりとしたMCに対して温かい拍手を送るファン。アットホームな雰囲気の中で、recheの歌声はもちろん、彼女の人となりをより身近に、存分に楽しむことができる時間が流れる。円形状のステージも手伝ってか、アーティストが提示するというよりも、会場全体で一つのライブを作り上げるという空気感に近かった。なお、配信ライブはソニーの360立体音響技術を使った「360 Reality Audio」の疑似体験版として公開されるようで、音響面にもこだわった映像になることが期待できる。

「幽霊東京」reche (original : Ayase)【りしぇかば】

 そんなrecheがソロ活動のひとつとしてスタートしたのが、YouTubeでのカバーソング企画「りしぇかば」だ。最新鋭の国産ファンクミュージックをさらっと乗りこなしてみせた「幽霊東京」(原曲:Ayase)から始まり、ジャジーなメロディをふくよかなボーカルで表現する「月のワルツ」(原曲:諫山実生)、低音ボーカルに感嘆するファン続出の「ビターチョコデコレーション」(原曲:syudou)、尖った歌詞と透明感のある歌声のギャップが癖になる「KING」(原曲:Kanaria)、そして昨日新たに「命に嫌われている。」(原曲:カンザキイオリ)がファンクラブ限定で先行公開されるなど、立て続けにアップしている。

「ビターチョコデコレーション」reche (original : syudou)【りしぇかば】

 カバー曲の選曲は公募形式で、ファンが歌ってほしい曲をリクエストし、それに彼女が応える形をとっている。本人も「ファンの人は本当に私のことを理解していて。“これ好きでしょ?”みたいな感じでリクエストしてくれるのがすごく心強い」とファンとのコミュニケーションを楽しんでいるようだ。ボーカリストとして培ってきたキャリアを考えると口にするのも野暮だが、どんな楽曲にもフィットできてしまう歌声、そして感情を乗せることができる技量の高さをカバー企画では改めて体感できる。そして同時に、reche自身の趣向やファンのリクエストが反映された選曲なだけに、彼女をずっと追いかけてきた古参ファンですら、ハッとするような新しい一面を感じることができるだろう。

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