2021年クリスマスソングの大本命? 鈴木鈴木「ホワイトキス」がTikTokで大ヒット中

 なぜ鈴木鈴木の楽曲はTikTok経由で次々とヒットしていくのか。現状、鈴木鈴木の楽曲は“ダンス動画を通じて楽曲が広まる→そこから派生して他の動画でも使われるようになる”という流れで認知を拡大させているものが多いため、振り付けのつけやすさは無視できない。例えば、「海のリビング」で拡散された2番Aメロは、〈「喉渇いたあ」「一旦コンビニよろ!」〉と会話から始まるのがフックとなっていること、ジェスチャーで表現できるモチーフが歌詞にたくさん詰まっていることは以前にも言及した(※5)。同じように、「ホワイトキス」ではサビ前の〈キスをしたい〉がポイントに。特にローカルカンピオーネ発案の“唇の前で人差し指を立てる→その指でWを描く”という振り付けは多くのユーザーが真似ている。‟この振り付け、やってみたい!”というユーザーに思わせるだけの仕掛けが鈴木鈴木の楽曲には設けられているように思う。さらに、「キスをしたい」という日常生活ではあまり言わない言葉=ポップソングでしばしば見受けられる“日常生活では恥ずかしくて言えないけど歌詞の中では歌える”的なフレーズが、TikTokにおいては‟あざとかわいい”動きを誘発させる歌詞として機能しているのが面白く感じられた。そしてまた、「ホワイトキス」の〈緑黄赤の信号機もこの日だけはクリスマス色/夜の裏原もきっとLoVeで溢れ返る銀世界〉や、「海のリビング」の〈ファミチキ食べて気分豪華〉などに象徴される“何気ない日々の景色も見方次第では特別な物に代わる”という価値観が、お金がなくても青春は謳歌したいという若者の心情にフィットしているのではないだろうか。リスナーに‟自分事”として聴いてもらうためには歌詞で用いる固有名詞も重要で、〈POLOのマフラー〉などアイテム選びも絶妙である。

@bgirlcocoa

#ホワイトキス#恵比寿#bgirl

♬ ホワイトキス - Suzukisuzuki

 冒頭で紹介したように、「ホワイトキス」は今も広がりを見せている最中で、季節ごとのヒット曲もTikTokから生まれる時代になりつつあるようだ。そんななか、個人的に興味深く感じたのが鈴木鈴木の活動姿勢。他のTikTokクリエイターとのコラボ動画も公開している彼らだが、その背景には‟実力があるのに日の目を見ないシンガーがより注目されるようになれば”という想いがあるようだ(※6)。つまり、ライブハウスでの対バンに気になったバンドを誘うのと同じような感覚で、彼らはコラボ動画を発表しているということ。様々な機能がオンライン上に移行(拡大)していったこの1~2年を象徴する事案だと思った。

※1 https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/104196/2
※2 https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/106685/2
※3  https://www.musicvoice.jp/interview/music-interview/179977/
※4 https://www.fujitv-view.jp/article/post-431671/3/
※5 https://realsound.jp/2021/10/post-884653.html
※6 https://ananweb.jp/news/372499/

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