『Enjoy Music! New Wave Generations Vol.2』インタビュー
音楽プロデューサー 保本真吾が語る、アーティスト育成に求められる姿勢 『Enjoy Music!』で発掘する次世代ヒットの可能性
ヒットするためにチームでやっていく大切さ
ーー『Enjoy Music!』はコンピレーションアルバム以外にも、ラジオ番組やライブイベントなど、幅広い活動を展開しています。
保本:『Enjoy Music!』は当初SNSで広がっていきましたけど、それがすべてだとは思っていないんです。ラジオやテレビも大事だし、特にラジオはコロナ禍以降、息を吹き返した印象があって。「ラジオで曲がかかる」というのは簡単じゃないし、そういうハードルを設けることも大事なのかなと。ラジオ番組を始めたことで、音楽業界以外のメディアで取り上げてもらえたのも嬉しかったし、勇気に繋がりましたね。あとはライブも大事です。メインストリームに出ていくためにはやはり、メジャーレーベルの力を借りることが必要だし、レコード会社の皆さんに認知してもらうにはライブが必須なので。ただ、今年2月に予定していたイベントが開催できなくて、そこで目標を見失った子もいたんですよ。そこから立て直すまでにかなり時間がかかったし、11月に東京と神戸でレコ発ライブをやれることになったのは良かったのかなと。そうやって目標を作って、モチベーションを上げるのも僕らの仕事なので。
ーーここ数年、レーベルや事務所に頼らず、アーティストが一人で世に出られる時代になったという流れもありますが、保本さんの話を聞いていると、スタッフワーク、プロデュースワークの大切さを痛感させられます。
保本:一人ですべてやるという方法もありますけど、成功している例はごく一部ですからね。あと、「何がヒットなのか」というのは見えづらくなってると思うんですよ。再生回数が多かったり、SNSなどでバズる曲はあるけど、おそらく収益には繋がっていないなと思うんです。TikTok、YouTubeなどで拡散されても、楽曲が事象としてバズっているだけで、アーティスト自身が浸透しているわけではないので。なので『Enjoy Music!』に参加しているアーティストに対しても、「絶対にTikTokをやろう」とか「フォロワー数・登録者数を増やそう」みたいなことは言ってないんです。もちろんTwitterなどでの拡散はやっていますが、そこまで意識はしているわけではなくて。そういう数字よりも、本質は別のところにあると思っています。
ーー楽曲の良さ、アーティスト自身の魅力こそが本質だと。
保本:そうですね。アウトプットというのは、YouTubeでMVを公開するとか、サブスクで配信して終わりではなくて、さらに広げてヒットさせることなので。若い子たちと話していると、「売れたい」という言葉を怖がる人も多いんですよ。「ヒットしなくていい。たくさんの人に聴いてもらいたいだけなんです」と言うんだけど、たくさんの人に聴いてもらうというのは、ヒットさせるということなので。そこがわかってないんですよね。
一人で活動するのもいいと思いますけど、先ほども言ったように、ヒットに繋がることは本当に稀なんです。成功している人がメディアに取り上げられているので、「自分もやれる」と思ってしまうんですけど、そうじゃない。最近は「顔を出さずに活動したいです」という子も増えていますが、スタッフがちゃんとついていないと、そういう活動は無理ですから。『Enjoy Music!』に参加している人たちには、そういう話もしっかりしていますね。
マネタイズ、録音……プロとして求められる感覚
ーー楽曲の制作についてもう少し聞かせてください。ヒットさせるために、音楽のトレンドは意識していますか。
保本:僕自身はトレンドに興味がなくて、追いかけてもいないんです。これまでにいろいろなアーティストのプロデュースを担当しましたが、実は新しいことはやったとは思っていないんですよ。例えばSEKAI NO OWARIもそう。もともと好きだったフィル・スペクターのアレンジや、映画音楽をロックと合体させたら、その組み合わせが面白いと思ってもらえたみたいで、多くの人に聴いてもらえて。つまり流行りは関係なくて、人と違うことをやった結果、それがトレンドになったということなんです。『Enjoy Music!』のアーティストにも、自分たちでトレンドを作ることを意識させています。「人と同じことをやっても二番煎じ、三番煎じになるだけ。人と違うことをやりなさい」というのは絶えず言ってますね。
ーー流行を追うのではなく、オリジナリティを追求すると。
保本:そうですね。あとはスタジオワークで、いかに良い音を録るかも教えたいと思っています。今の音楽制作はコンピューターで完結しているので、かなり創意工夫をしないと、同じような音ばかりになってしまう。スタジオに入って、マイキングや録音方法を知らないと良い音にはできません。「生でドラムを録ったことがありません」という子がほとんどですからね、今は。
ーー確かにロックバンドでも、スタジオの経験が浅い人が増えている印象がありますね。
保本:「お金をかけない」というのが前提になってしまっていますからね。とりあえず録って、あとはコンピューターでなんとかするということが多いと思いますが、まずは良い音で録らないと、後で処理なんてできないんですよ。人間の耳はよくできていて、音楽に詳しくない人でも良い音かどうかはわかる。そこをしっかり追求するのも、音楽の良心だと思います。
ーー『Enjoy Music!』の次の展開はどうなりそうですか。
保本:まずはコンピレーションアルバムの「Vol.3」をリリースしようと思っています。次のメンバーがスタンバイしていて、制作も続いているので。「Vol.1」「Vol.2」に収録したアーティストを確実に世に送り出す作業にも力を入れたいですね。ラジオでは募集を続けていますが、SNSでの募集はいったん打ち切っているので、その2つをやっていきたいと思います。あとは僕たちもしっかりマネタイズしないといけなくて。
ーー活動を継続するためには、マネタイズは必要不可欠ですよね。
保本:そうなんです。参加しているアーティストたちにも、お金の感覚を持ってほしくて。契約や権利のこともそうだし、MVを作るのにいくらかかるか、プロモーションがどのように行われるかも知ってほしいんですよね。
ーー『Enjoy Music!』の活動は本当に意義深いと思いますが、保本さんはじめ、スタッフの皆さんの負担は相当大きいですよね。それでも続けているモチベーションはどこにあるんでしょうか。
保本:まず、今までと同じことをやっていては、自分の仕事はなくなるだろうなと思っているんですよね。音楽業界も世代交代が進んでいるし、一緒に仕事をしていたディレクターなども現場を離れ始めていて。僕はこの仕事が好きだし、自分の居場所がなくなるのは嫌なので、「次の世代のアーティストをプロデュースして、ヒットさせる」ということが最大のモチベーションになっているんですよね。大物アーティストと仕事をしているときのヒリヒリ感とは違いますが、「この先、どうなっていくんだろう?」という楽しさがあるし、「この子たちが音楽シーンをひっくり返すかもしれない」という可能性も感じていて。お金は必要ですけど、バカほど儲けたいわけではなくて、関わってくれる人たちが幸せに暮らしていければいいと思っているんですよ。それよりも自分たちが手がけたアーティストの楽曲がヒットして、「ほら!」って言いたいですね。
■リリース情報
『Enjoy Music! New Wave Generations Vol.2 Chapter #1』
配信リリース日:2021年10月20日(水)
収録曲:
01.生残者 / 水咲加奈
02.Ferment / SUKEROQUE
03.向日葵 / 寿々叶
『Enjoy Music! New Wave Generations Vol.2 Chapter #2』
配信リリース日:2021年10月27日(水)
収録曲:
01.少女 / 山田あさひ
02.枯れてしまえば / 中野大地
03..ナンセンス / BUGGG
『Enjoy Music! New Wave Generations Vol.2 Chapter #3』
配信リリース日:2021年11月3日(水)
収録曲:
01.嘘 / きばやし
02.名前をつける / くすり
03.You & I / 坂上太一
04..あなたを待つ夏夜 / 椎井音夢
■ライブ情報
『Enjoy Music!ジョイミューラジオ!Presents「ジョイミューBig Waves Live Tour! in Tokyo & Kobe」』
【東京編】
日付:11月13日(土)
会場:新宿ReNY
チケット:前売 ¥3,000 当日 ¥3,500
出演者:
水咲加奈 / SUKEROQUE / 坂上太一
OA:ネオンテトラ
【神戸編】
日付:11月27日(土)
会場:神戸VARIT.
チケット:前売 ¥2,500 当日 ¥3,000
出演者:
きばやし / 山田あさひ / 中野大地
OA:Sigma-T
本日よりチケット購入はこちら↓
https://l-tike.com/enjoymusic/
https://eplus.jp/joymu-tk/
Enjoy Music! 公式Twitter:https://mobile.twitter.com/joymu_official