2nd Album『自白』インタビュー
DUSTCELL、創造に向かう破壊衝動 過去を嫌う両者が求める変化への渇望
人間としてレールを外れてしまっているみたいな部分は共通点
ーー今作の歌詞には〈信用できるのはこの己のみ〉(「DERO」作詞:EMA)とか、〈人間に適合できないや〉(「火焔」作詞:Misumi)といったように、両者ともに社会への生きづらさが根底にあるように思いました。
Misumi:僕もEMAも普通に生きれないというか、人間としてレールを外れてしまっているみたいな部分は共通点にある気がしますね。
EMA:生々しい話ですけど、昔の高校の同級生に会えなかったり、以前みたいに学生してたときのような人間味は自分には無いなって思います。音楽活動を本格的に始めてから、周りを見渡すといろんな人がいて、人をどうしても信用しきれない部分とか、人間って怖いなという気持ちが抜けないんです。
ーー全体的に思い出や過去を捨てたいといったモチーフも多いですよね。
Misumi:それは昔からなんです。僕がボカロPとして活動を始めた頃から「過去を捨てたい」とか「何かを捨て去りたい」というのが歌詞に何年間も出続けてるんですよね。たぶん僕たち、変わりたいんだと思います。そのために過去を捨て去りたい。生きていくために常に変わり続けなくちゃいけない。そういう思いが歌詞に出てるのかなと思います。
EMA:過去が嫌いなのめちゃくちゃわかります。過去に一生すがられても困るので、正直今が一番大事っていう思いですね。
ーー日本語に対するこだわりはありますか?
EMA:言われてみれば『SUMMIT』の頃の方が歌詞に英語を使ってたかもしれないですね。
Misumi:そうかもね。最近日本語が好きかもしれない。たとえば「火焔」なんかはアルバムのなかでも一番日本語で遊んだ曲ですね。アルバムの最後の方にできた曲なんですけど、この曲を作るまでは全体的にシリアス過ぎたので、ちょっと砕けた感じの雰囲気がアルバムに欲しいなと思って作ったんです。「火焔」とか「堕落生活」とかはあまり意味を求めず、歌って楽しいとか、聴いて楽しいと思える曲を意識しました。
EMA:今回の『自白』は歌ってても語呂の良さや、歌いやすさを感じます。よくよく考えてみると母音が同じだったり、ワンフレーズワンフレーズが声に出して歌いやすい、心地よく発声できるところが多いなと思いますね。
EMAの歌声はある種の神聖さが宿っている
ーーなるほど。一方でサウンド面に注目すると、近年のEDM的なアプローチやヒップホップ系のリズム、K-POPのエッセンスなど、海外のサウンドの影響を強く感じます。
Misumi:今回はK-POPからの影響がすごく強いですね。「DERO」「TOUBOU」「Mad Hatter」あたりの曲はドロップが強くて、構成的にはK-POPに近い。その辺は普段聴いてるものの影響が出たのかなと思います。たとえば「火焔」の最後の方だけ曲調が変わってUKのドリルっぽい感じになるんですけど、そうやって面白いと思ったものはすぐ楽曲に取り入れたくなるんです。最近は音楽を聴くのが楽しくて、特に最近は音楽シーンのスピードも早いので、いろいろな音楽に刺激を受けている日々です。
ーートラックとメロディはどちらが先に出来ますか?
Misumi:僕の場合は先にリズムとコードを作ってから、その上にメロディラインを乗せます。メロディからトラックを作ったことが一回もなくて。あと、メロディが先にできて歌詞を当てはめていく、いわゆる曲先なんですけど、EMAの場合はメロディと歌詞が同時に出てくるタイプ。そこが僕とEMAの対照的なところなのかなと。
EMA:私は先に頭の中でこういうことを言いたいなって思って、それをその場で気持ちの良いメロディに乗せて歌うっていう感じで、ほぼ同時なんです。言葉をパズルみたいに当てはめることができないので、先に歌いやすいように歌詞を作っちゃうタイプです。
ーーちなみにEMAさんは、先日ボーカリストとしてMAISONdesの楽曲「ダンス・ダンス・ダダ(feat. EMA, たなか)」に参加されてましたよね。DUSTCELLとそれ以外では、歌う上で何か意識に違いはありますか?
EMA:MAISONdesのときはプロデューサーが元ぼくのりりっくのぼうよみのたなかさんだったので、曲を作っていくにあたって自分の個性も入れつつ、後ろにたなかさんの影がほのめいているみたいな感じになりました。たなかさんの仮歌が入ったデモをいただいたのですが、たなかさんの歌い方はとても特徴的なので、自分から寄せた部分もありますし、もともと私自身がぼくりりさんのファンだったのもあって無意識に寄っちゃったというのが正直なところです。逆にDUSTCELLのときは特に意識はしてなくて、ただ自然体という感じで。
Misumi:EMAの歌声はある種の神聖さが宿っているというか。なので僕らの曲って宗教っぽさがあるというか、ポップではあるんですけど神聖さとか神々しさを感じてもらえることが多くて。その神聖さみたいなところが人を惹きつけてる要因になってると思うんですよね。だからDUSTCELLの曲を作るときはEMAが歌っているのを想像して、EMAありきで作ってます。それと、EMAの声には宇多田ヒカルさんの声を聴くときの感じと近い感覚も感じてて。