2nd Album『自白』インタビュー

DUSTCELL、創造に向かう破壊衝動 過去を嫌う両者が求める変化への渇望

 今年10月で活動開始からちょうど2年が経ったDUSTCELL。ワンマンライブの成功や、「命の行方」がCMソングに抜擢されるなど、これまで順調な活躍を見せている。しかしコンポーザーのMisumiは、今回の2ndアルバム『自白』を完成させたことで「これまで作り上げてきたものを一度壊したい」という境地に至ったという。それはボーカルのEMAも同じだそうだ。型に嵌まりたくない、次に進むために壊したい、過去を捨てて変わりたい。取材してみると意外にも2人から変化することへの強い意志が伝わってきた。(荻原梓)

次に進むために全てを破壊したい

DUSTCELL - 命の行方

ーー2019年に結成されてからコンスタントに作品をリリースし、「命の行方」が専門学校HALのCMソングとして全国でオンエアされるなど、徐々にDUSTCELLの認知も高まっているように思います。ご自身としてはこの2年での広がりについてどのように感じていますか?

Misumi:作品を出す中で認知も徐々に広がっている印象はありますが、やっぱり生でお客さんを見ないと全く実感が湧かないというか。前回開催した2nd ONE-MAN LIVEも(会場は)100人限定でしたし、コロナの状況もあってそういう機会に恵まれなかった。次のライブでお客さんを見たときに、初めて実感できるのかもしれません。CMに関しては、インターネットでは届けられないところに、届けてくれたような感覚もあって。でも、僕ら以上に家族が喜んでくれましたね(笑)。

EMA:わかる! お茶の間に流れると、私たちの音楽と接点のない方々にも聴いてもらうことができると思うんです。それこそ私の両親は普段あまり音楽を聴かないんですけど、そういう方々にも触れてもらえるきっかけになったのなら嬉しいです。

ーーすごく順調に活動が進んでいる中、今回の2ndアルバム『自白』はどんなアルバムになりましたか?

Misumi:前回の『SUMMIT』というアルバムはそれまでに作った曲を全部入れる形だったんですけど、今回の『自白』は全体的にトーンを統一したいなと思っていました。なので僕らの世界観がより出せた作品になったと思います。あと自分的には『SUMMIT』と『自白』という2枚のアルバムを出したことで、”DUSTCELLらしさ”がある程度完成したと思ってて。今は全部を破壊してしまいたいというか、次に進むために一度これまで作り上げてきたものを壊したい、創造するための破壊をしたいという思いが自分の中では強いです。

ーーそれはEMAさんも同じですか?

EMA:そうですね。型に嵌まりたくないというか。

Misumi:最近はそのための修行をしてるところです。今まで聴いたことのない曲を聴いてみたり、今まで興味なかったものに手を出してみたり、視野を広げたくて。やっぱり今回の『自白』を完成できたことで、次に進みたいという思いがより強くなりましたね。

EMA:いつも作品を作り終えると「じゃあ次はどうしよう」って次のことを考えたくなるんです。特にアルバムって活動していくなかで大きな区切りだと思っていて。そういう意味では、今回もひと区切りついた感じがするから、いろんな人の音楽を聴いたり普段は歌わないような曲を歌ってみたり、今はそういう期間に入ってます。

ーーこの2年間の活動で2人の関係性も深まってきましたか?

Misumi:制作やライブをしてきたなかで音楽のフィーリングが合ってきたと思います。今はEMAがどういう感じの曲が好きなのかとか、言葉で言わなくても伝わるようになったんじゃないかな。

EMA:トラックとか送られてくるデモとかで、これは良いなとか、これちょっと形に出来ないなとか、お互い言葉がなくてもなんとなく分かるようにはなったよね。

Misumi:そういうある種の信頼関係みたいなものは出来てきていると思います。

周りが思う理想と自分の違いに苦しむ時もある

DUSTCELL - 独白

ーーでは今回の『自白』ですが、まずタイトルにはどんな意味を込めたのでしょうか?

Misumi:連想的に作った部分があります。前作『SUMMIT』のアルバムジャケットが真っ黒だったのですが、今回はそれと対照的になるように白いジャケットのイメージが最初に浮かんできました。それでEMAの方から”白”の付く言葉で良いタイトルをつけようという話があって、僕も一緒に考えてたんですけど良い言葉が見つからなくて、EMAから「自白」が良いんじゃないかと。今作の歌詞に顕著なのですが、僕もEMAも感情だったり内面だったりを歌詞に晒け出してるものが多いんです。そういう意味でも「自白」っていう吐き出すような単語が相応しいなと思いました。そこから「独白」も白ですし、あと「albino」も白を連想させる言葉です。

ーーDUSTCELLは2人とも作詞をされてますが、それぞれどのように歌詞を書いてますか?

Misumi:僕の場合は映画がインスピレーションになってる場合が多くて。今回は何作か映画を観て書いた曲があります。映画ってある種、現実から半分浮かんでいくというか、一歩だけ非現実の世界に踏み入れる行為だと思うんです。映画を観ることで普段の自分とは違うポジションに自分が置かれるような気がしてて。そうすることで自分の中から言葉が出てきやすくなるんです。たとえば「独白」は、岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』を観て思い浮かんだ言葉を紡いで書きました。あと最近は韻に対しての興味が強くて、今作は結構韻を踏んでる箇所が多いです。言葉の意味は決して捨てずに、声に出して心地いい、聴いていて気持ち良い言葉をよく使うようになりました。前作『SUMMIT』は逆に意味のことしか考えてなかったんですけど、今回は歌詞でそうやってある種遊びたいという気持ちが強くなってます。

EMA:私の場合は自分自身の今までの経験とか、過去に辛かったこととか、今生きてる上で感じてる感情にまかせて書いてる感じです。逆にMisumiさんのように小説や映画から汲み取って自分なりに解釈して歌詞を書くってすごく難しくて。

ーーたとえばEMAさん作詞の楽曲だと、「INSIDE」という作品に〈理想の自分が 僕の終わりまで首を絞め続ける〉というフレーズがありますよね。理想と現実のギャップに苦しむことはありますか?

EMA:それはずっと活動をはじめたときからあって。”みんなが想像してるEMA”に近づこうとすればするほど辛くなったりします。言葉にするのは難しいんですけど、視聴者からの応援のされ方とか、SNSとかで人と交流するときに、”EMAにはこうであって欲しい”というものが何となく伝わってくるんです。それと現実の自分がリンクしてないときは結構辛くて。人間味のある自分があまり好きじゃないんです。そういう、みんなが思う理想の自分と実際の自分の違いに苦しむときは多々あります。

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