2021.10.04 16:00

Morfonica、シンフォニックロックから生まれる祝祭感　『バンドリ！』第4のリアルバンドが育む音楽における個性

文＝一条皓太

　加えて「ハーモニー・デイ」では、“今の場所から次の場所へ”という、バンド全体として未来へ駆け出す意志が歌われたが、カップリング曲「Sonorous」のように、メンバー個人に焦点を当てた楽曲もまた聴き応えがある。

　「Sonorous」の歌詞とリンクするのが、『ガルパ』イベントストーリー「調和と変化のアナリーゼ」。同ストーリーでは、ドライな性格の瑠唯がつくしを中心に、バンドメンバーからとある場面で手助けをされるほか、瑠唯がMorfonica加入後、バイオリンの音色が「みんなの音に寄り添って、導いているよう」に変化したと指摘されるシーンも。こうしたシナリオは、楽曲の歌詞にも大いに反映をされている。そのほか、前作シングル収録曲「flame of hope」の歌詞も、透子と瑠唯の衝突と和解までをベースにしたもので、メンバー個人を深掘りするような楽曲が着々とその数を増やしているのだ。

　何が言いたいかというと、Morfonicaのバンド構図を最もわかりやすく示すと、基本的には瑠唯が自身のバイオリンを通じて、ましろに対する夢の導き手に、3人のバンドメンバーがその仲介役になっているのだ。しかし時として、ましろと瑠唯の役割が逆転したり、メインとなる人物が他メンバーとなることも。ここで大切なのは、才能のステータスや考え方の異なる彼女たちが、同じ歩幅で成長を重ねているという事実である。

　そして、前述のましろ対瑠唯といったメンバー同士の関係性は、バイオリニストとして長年の経験があるAyasaと、最年少の進藤などにも当てはまるもの。このように、バンド内での役割や関係性を共有するキャスト、キャラクター、何より彼女たちが生み出す作品が密接な三位一体となっているところが、Morfonicaの持つ強みなのだろう。知らない世界へと踏み出し、そこで出逢った新たな感情に心を震わせる。楽曲の雰囲気や雰囲気は言わずもがな、キャストとキャラクターの双方が切り拓いていく発展途上な過程を今、リアルタイムで追いかけられることにも、我々は強く心惹かれてしまうのではないだろうか。

　最後に今後の展望については、今作のカップリング曲「Fateful...」がバンド初のタイアップソングとして、TVアニメ『カードファイト!! ヴァンガード overDress』エンディングテーマに起用されるという新たな一歩もあった。加えて『ガルパ』での次なるシナリオと関連楽曲の発表も気になるばかりである。

　リアルバンドについては、キャスト個人／バンド全体のスキルがどこまで底上げされるのかは、誰もが注目しているはず。目下では、10月末から東京と大阪で開催予定のバンド初ツアー『Morfonica ZEPP TOUR 2021「Amabile」』が次なるステージに。9月には富士急ハイランド・コニファーフォレストで行われた大規模ライブ『BanG Dream! 9th LIVE「Mythology」』にて、『バンドリ！』随一の演奏力を誇るRAISE A SUILENとツーマンライブを経験。インタビューでは小原莉子（RAISE A SUILEN/Gt）が、MorfonicaがRASの楽曲でツーステしたことを喜んでいたが、RASと同じくAyasa、mika、直田と楽器経験者が多いMorfonicaのパフォーマンス力がどんな進化を遂げているのかも見所だ。また、今年5月に開催した2度目のワンマン公演『Andante』で、朗読劇を交えた声優ならではのライブを展開しているだけに、今回の演出にも期待が集まることだろう。

　バンドとして着実な成長を重ね、バイタリティ豊かな活動を展開しているMorfonica。彼女たちが涼やかに、“愛らしく”奏でる音楽は、まだまだ無限の可能性に満ち溢れている。