ポルノグラフィティ、「THE FIRST TAKE」で届けた圧巻のパフォーマンス 新曲「テーマソング」の強いメッセージ性を読み解く
デビュー曲の「アポロ」をはじめ、初期作のほとんどの作詞を手がけてきた新藤の詞の世界は、岡野の歌唱力と並び、ポルノグラフィティのもう一つの顔である。元来読書家で、自身の小説やエッセイを3冊上梓、現在もnoteにて日常雑記や散文などを発表し続ける、文筆家の顔も持つ。時にシニカルに、時に小説のように語りかける新藤特有の詞の世界観は奥が深い。
「サウダージ」のように物語性を帯びた作品は、「アゲハ蝶」「メリッサ」「オー!リバル」「カメレオン・レンズ」等々枚挙にいとまがなく、豊かな語彙力で物語を紡いでいる。一方で「テーマソング」のようなエールソングも、「幸せについて本気出して考えてみた」「ギフト」「VS」など、その時々の立場で自問自答しながらも勇気を与える詞を綴ってきた。
さらに新藤は比喩表現に卓越している。「テーマソング」の中でも、〈歴史学者のペン先が/決して描くことのない/ささやかな私のストーリー/退屈なことには慣れている〉と主人公が特別な人間ではないことを表現したり、〈耳に届く音はいつも/不安な鼓動のドラムだけ〉と“ドラム”で鼓動の音をさらに強調したり、様々な喩えが楽曲の説得力を増す。
そして最後は〈今 その胸は震えているか?〉と、歌の主人公にも、岡野と新藤にも、リスナーにも、問いかけるような言葉で締める。若さや未熟さだけではなく、岡野や新藤のようにキャリアを重ねても自問自答を繰り返して前進しようとしているようにも感じられる。つまり彼らの立ち位置で歌うからこそ、“万人のテーマソング”として響くのだ。そんな歌詞の世界観が、エネルギッシュな岡野の歌力に乗ることで、この曲のメッセージ性がより強く届けられている。
コロナ禍にあっても、岡野は昨年春からスペースシャワーTVと連動したYouTube番組『DISPATCHERS』をスタートさせ、秋からは様々なジャンルのアーティストとのコラボ企画“歌を抱えて、歩いていく”を始動。新藤はミュージカルの脚本を執筆中とのことで、各々精力的に前進している。ポルノグラフィティとしては今月25日から12月にかけて、20カ所28公演の全国ツアー『17th LIVE CIRCUIT “続・ポルノグラフィティ”』が幕を開ける。全国にいる“テーマソングの主人公”に歌を響かせてくれることだろう。