『D.LEAGUE』特別対談 第5回

FISHBOY×神田勘太朗『D.LEAGUE』対談 プロダンサーとして有意義なキャリアを送るためのチームづくり

「戦っているけどピースが残るのは、ダンスならでは」(FISHBOY)

ーーROUND.10ではBenefit one MONOLIZディレクターのHALさん、ROUND.11ではavex ROYALBRATSディレクターのRIEHATAさんと、FULLCAST RAISERZディレクターのTWIGGZ"JUN"さんが自らステージに立っていました。 それについてFISHBOYさんはどのように見ていましたか。

FISHBOY:僕は全く考えてないですね。サプライズとしてはあり得るかもしれませんが、今は絶対出ないと思います(笑)。個人的に『D.LEAGUE』は20代の彼らが輝くから意義があるので、35歳の僕が参加すると意味合いが変わってしまうのかなと。ダンサーとしての自分自身はリーグとは別にありますから。意義のないことはやらない、というスタンスなんですよ。

ーーなるほど。Legitは、チームスポンサーであるAdobeとのDance Motion Awardやソフトウェアを使ったクリエイティブ研修もされてますね。

FISHBOY:はい。他リーグのいくつかのチームではそのチームに所属する選手への研修などを充実させて、ただその競技をする人間ではなく、セカンドキャリアや人間としての能力の拡張を図っています。僕もLegitはそういうチームであるべきだと思いますし、彼らに彼ら自身の人生の可能性を『D.LEAGUE』を通して広げていってほしいんです。Adobeさんにご協力いただいたクリエイティブ研修は非常に良い取り組みでした。

 ただ正直、初シーズンは両立不可能でした。だから今後ですね。Dリーガーも試合だけになったら広がりのないダンサーになってしまいます。奥行きのある選手になるためには余裕が必要なように、僕自信も余裕を作りたいです。

ーーチームとディレクターをシャッフルしたエキシビションマッチをやったら面白い、という話もこの対談企画で上がっていますが。

FISHBOY:ディレクターの役割が全く同じだったら良いですが、ナンセンスだなと正直思います。僕に当たったチームが気の毒ですよ。長期的に取り組んでいくタイプなので、「ごめんね」という感じになる(笑)。ディレクター=振付師という誤解があるから、視聴者のコメントにもねじれがあるんだと思います。ディレクターの役割は現段階ではファジーなものである、という認識をぜひ持っていただきたいですね。

ーーでは、他チームを含めた12戦のなかで感銘を受けたショウケースはありました?

FISHBOY:SEPTENI RAPTURESのROUND.7のナンバーは好きで、カッコいいなと思いましたね。あとROUND.12のKOSÉ 8ROCKSは本当にすごかった。本当に順番や状況が違ったら優勝していたかもしれませんよ。順番も運なんですよね。

神田:KOSÉは今シーズン、1〜3番目ばかりでしたから。それでチャンピオンシップに進出したのはすごいと思います。来季は出演順も平等になるように調整していくつもりです。

【D.LEAGUE】ROUND7 SHOW 6・ SEPTENI RAPTURES / 第一生命 D.LEAGUE 20-21 ROUND.7
【D.LEAGUE】ROUND.12 KOSÉ 8ROCKS / Dai-chi Life D.LEAGUE 20-21 ROUND.12

FISHBOY:あと『D.LEAGUE』はコンタクトスポーツではないので、相手を打ち負かしたり、邪魔をしたりできないじゃないですか。だから一緒に盛り上げる雰囲気になるところがいいと思ってます。審査に参加もしてくれたKATSU ONEさんが、以前ブエノスアイレスで行われたユースオリンピックにブレイキンで参加した時の話をしてくれたんですよ。負けたチームは先に合同の合宿所から帰国していくのですが、各チームが帰る時に他の国のメンバー全員が玄関で見送るらしいんです。「また会おう」とハグして別れると。練習する時も仲良く一緒になんて、他の競技だとあり得ないじゃないですか。それを見てIOCの方々が感動していたそうです。戦っているけどピースが残るのは、ダンスならではですね。

神田:そういう意味では、ダンサーよりも視聴者同士の方が戦っているかもしれません。現場のダンサー達は「あれ良かったよ」と讃え合っているけど、観ている方は「何で推しのチームが負けるんだ!」と(笑)。

FISHBOY:あれは面白いですよね。個人的には(SEPTENI RAPTURESディレクターの)akihic☆彡さんとも深く会話させてもらっていました。チームのタイプは似ているかもしれませんが、僕と彼は全く違うので、2人で渋谷を2時間くらい歩きながら話したりして。だからRAPTURESの活躍も嬉しかったです。

ーー来季に向けての取り組みなどもあれば教えて下さい。

神田:各チームはオーディションをしてますが、Legitはどうですか?

FISHBOY:1人増員して、あとは全部SPダンサー(期間限定で出演するダンサー)で対応しようかなと思っています。他にもかなり増やすチームもあると聞いていますし。それから、「練習生」という立場は何人いてもいいんでしたっけ?

神田:それについては正直そこまで議論できてないんですよ。「練習生」という概念が出てきた時は、なるほどと思いました。でも、そういう制度がなくても仮にLegitがダンススタジオを作ったら、そこに通っている子たちは練習生みたいなものじゃないですか。あとはレギュラー/SPダンサーの枠に入れるか入れないか。

ーーその点は今後も議論していく領域になりそうですね。

神田:あと野球でいう「宮崎キャンプ」みたいなものはやる予定はありますか?

FISHBOY:僕らは市役所からスポーツ誘致としてお話をいただいていて、鹿児島・鹿屋市で合宿予定ですが、現状コロナにより保留になっています。

神田:SEGA SAMMY LUXは宮崎でキャンプしましたね。今後野球のように、キャンプインがニュースになるといいなと思ってます。

FISHBOY:legitはまだまだチーム拡張の余地はあると思うので、模索していければと思います。1年で各メンバーの特性がよく分かったので、2年目は一人ひとりにポジションを任せていこうと。例えばTRACEYには、文化服装学院とコラボして衣装をお願いするつもりです。KAI→にはAdobeと組んで映像クリエイトを、Kotoriにはデザインを、TAKUMIはディレクションとリーダー兼エースというような形で、全員にそれぞれ「ダンス+α」を獲得していってほしいです。それにダンス面でも、ひと味やふた味も堀りがいのあるキャラクターを来シーズンはお見せできればいいなと。シーズンを通して作品で伝えたいテーマは「Impossible is nothing.」ですが、シーズン2のメンバーに対しての裏コンセプトとしては「何者かになる」なんですよ。これは全員に伝えていて、彼らの将来をひたすらバックアップしていきたいです。

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