シングル『みどりのケセラセラ』インタビュー

丘みどり「みどりのケセラセラ」は底抜けに明るい“今歌いたい曲”に ファンとの約束、リサイタルへの意欲も語る

 2021年第1弾シングル『明日へのメロディ』で新境地を開拓した丘みどりが、ニューシングル『みどりのケセラセラ』をリリースした。表題曲は、80年代の名曲「浪花恋しぐれ」(都はるみ)を始め、美空ひばりや石川さゆりなどのヒットソングを生んだ岡千秋が作曲。丘みどりの明るいキャラクターと、昭和感漂う明るいサウンドがマッチした軽快な楽曲だ。「コロナなんかどこ吹く風」といった前向きさに溢れた、令和時代の応援歌となった。カップリングには「明日へのメロディ」に通じるポップス調のミディアムナンバー「楡」を収録。楽曲制作のエピソードや、それにまつわる様々な話を聞いた。(榑林史章)

「くよくよしたってしゃあない」という精神

ーー「みどりのケセラセラ」は岡千秋さんの作曲で、「Wおか」ですね(笑)。

丘みどり(以下、丘):岡&丘で(笑)。

ーー前回の「明日へのメロディ」は歌謡ポップスでしたが、今回は演歌に戻ってきまして。

丘:はい。曲調は全然違うんですけど、根底にあるのはどちらも今だから聴いていただきたいという気持ちです。なので、大まかには、そこまで違わないんじゃないかと思っています。

ーー今回は演歌にしようと決めていたんですか?

丘:はい、着物を着て歌えるものにしようと決めていました。前回の「明日へのメロディ」ではワンピースを着て歌わせていただいて、そこで好きだと言ってくださる方もたくさんいらっしゃったんですけど、うちの祖母は「やっぱり着物を着て歌う姿が見たい」と言っていて。そういう意見も多かったので、それじゃあ今回は着物を着て歌える楽曲にしよう、と。それに前回の「明日へのメロディ」はメッセージ性がとても強い楽曲だったので、今回は歌詞の内容よりも、とにかく底抜けに明るくて、ちょっと関西弁が入っていたらいいなというリクエストをさせていただいて。そうしてできあがったのが、「みどりのケセラセラ」です。

ーー岡千秋さんの楽曲は、これまでにも歌ったことがあったのですか?

丘:シングルではないのですが、2019年のアルバム『女ごころ~十人十色~』に収録の「女の夢航路」や「薩摩半島」を作っていただいたことがあります。楽曲という形でのご縁はまだ少ないのですが、実はテレビ番組で何度かデュエットしたことがあったり、距離感としてはすごく近い存在だと思っていて。それで今回、「先生、曲書いてくださいよ〜!」とお願いして(笑)、作っていただきました。

ーー岡千秋さんと言うと、都はるみさんとのデュエットで歌った「浪花恋しぐれ」が有名です。〈酒や!酒や!酒買うてこい!〉というセリフが印象的で、桂春団治の人生を歌った曲ではありますが、そういう昔かたぎな破天荒さがありつつも、庶民的でユーモアもある楽曲を作る人というイメージです。

丘:はい。そういう意味で「みどりのケセラセラ」は、とても岡先生らしさのある曲なんじゃないかと思います。

ーー「みどりのケセラセラ」を最初に聴いた時は、どんな印象でしたか?

丘:「待ってました!」という感じです。私の希望以上のものを作っていただけて、とてもうれしかったです。こういうタイプの曲はこれまでも歌ってきたのですが、どうしてもA面ではなくカップリングという感じだったんですよね。だからこういう曲がA面曲として歌えることがうれしいですし、以前から1曲でもこういう最初から最後まで笑顔でいられるような、底抜けに明るい曲があってもいいんじゃないかと思っていて。コンサートの定番曲になりそうで、12月のステージで歌うのが今から楽しみです。

ーー曲名に「みどりの」とご自身の名前が入っているのがいいですね。「きよしのズンドコ節」とか演歌ではよくあって。

丘:はい。名前が入る曲は演歌に割とありますけど、私個人としてこういうのは初めてです。特にそうしてほしいとお願いをしたわけではなかったのですが、岡先生のユーモアで入れてくださって、すごくいいなと思いました。

ーーレコーディングはどんな感じでしたか?

丘:すごく楽しかったです。気合いを入れて歌うというよりは、しゃべるような感じで、〈そやね そやな〉という歌詞のところは、隣にいる人に話しかけるようなイメージで歌いました。それこそ岡先生からも、「歌っちゃダメだよ」って何度も言われて。

ーー歌っちゃダメだと。

丘:はい。先生は、アルバムで曲をいただいた時もそう言ってくださったんですけど、私が力をいっぱい入れて歌った時の声よりも、力を抜いて歌った時の、それこそリハーサルの時の声のほうが絶対いいと言ってくださって。デュエットをさせていただいた時も、「そんなに歌おうとしなくていいんだよ」とおっしゃって。なので今回のレコーディングでも、「もっと力を抜いて」「リラックスして」って、ずっと言われていました。そうやってリラックスできる雰囲気を作ってくださるんです。

ーーがんばって何かを伝えようとするよりも、リラックスして自然に歌ったほうが、より伝わる曲なんですね。

丘:そうです。なのでレコーディングも、和やかなムードで順調に進みました。

ーーがんばろうと思ったり気合いが入ったりすると、無意識に力が入ってしまうので、力を抜くってけっこう難しいですよね。ステージで、つい力が入ってしまうことはありませんか?

丘:ありますよ。でも舞台に立っていざお客さんを目の前にして、皆さんの表情を見ていると、「がんばって歌わな!」みたいなことよりも、「楽しんでくださっているな」という気持ちになるんです。なのでどんなに力が入ってしまっても、皆さんの笑顔を見ると自然にリラックスできます。今は皆さんマスクを付けていらっしゃいますけど、それでも笑顔って伝わってくるんですよね。

ーータイトルにある「ケセラセラ」は、「なるようになる」とか「風が吹くままに」といった意味があって、昔ドリス・デイが歌った「ケ・セラ・セラ」という曲も有名です。

丘:はい。私も聴いたことがあります。それに「なるようになる」って、私自身も好きな言葉です。これはファンの方に言われて気づいたんですけど、ずいぶん昔にTwitterで「ケセラセラ」って言ってたらしくて。

ーー言いそうですね。

丘:私も自分で、確かに言ってそうだなと思いました(笑)。

ーー性格的に、そういうところがあるんですね。

丘:ありますね。深く考えすぎても仕方ないって、思いがちです。歌詞に〈くよくよしたってしゃあないね〉って出てくるんですけど、それは本当にその通りだなと思います。私、基本的にどうせだったら失敗してもいいからチャレンジする、それで後悔したのならしょうがないと思うほうで。そういう意味では、臆せず一歩を踏み出せる力とか勇気は、持っているほうかなと思います。

ーー10年前に1人で上京したくらいですからね。

丘:はい(笑)。

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