『マツコの知らない世界』で“ガールズバンド”特集 SHOW-YA、チャットモンチー、BAND-MAID…ドメスティックな進化の歴史
SHOW-YAとプリプリのブレイク、そして『NAONのYAON』の盛り上がりもあって、女性バンド“ギャルバン”のムーブメントは大きく花開く。両バンドの直系ともいえるガールズロックのRosyRoxyRollerやPINK SAPPHIRE、プログレバンドのVELVET PΛW……後進の女性バンドが増えていった。しかし、そのシーンが根付くことはなかった。90年代中盤以降は、JUDY AND MARYやthe brilliant greenのような女性ボーカルと男性メンバーによるバンドが主流となり、全員女性のバンドはいつのまにかいなくなっていた。インディーズのオルタナティブロックシーンには、先述の少年ナイフやロリータ18号、ミクスチャーラウドシーンにはSUPER JUNKY MONKEYやイエローマシンガンといったバンドが活躍していたものの、とくに「女性バンドが、」という文脈で語られるシーンではなかった。2000年代に“ガールズバンド”として脚光を浴びるまで、女性バンドシーンは氷河期だったともいえるだろう。
2005年、デビュー20周年を迎えたSHOW-YAは、寺田恵子の先導もあってオリジナルメンバーで再結成。当時と変わらぬ、いや、それ以上のパワフルな姿を見せてくれた。そして、2008年には17年ぶりに『NAONのYAON』を開催。プリプリのメンバーはもちろん、GO-BANG’S、田村直美、中村あゆみといった、当時は別の場所で闘っていた面々から、Mary’s Blood、Gacharic Spin、LAZYgunsBRISKY……といった世代を超えたメンツによって毎年開催、今なおシーンを盛り上げている。Cyntia、Mary's Bloodといった、HR/HMバンドは“ガールズメタル”、もしくは“嬢メタル”とも言われ、アイドル性の意味合いを持つガールズバンドとは線を引くことも多かったのだが、『NAONのYAON』の効果もあって、“女性バンド=ガールズバンド”という、ひとつの大きなシーンになっていった節もある。尤も、アイドル視されることに抗い続けたSHOW-YAこそ、ガールズバンドという呼称を避けそうなバンドなのだが、今やそれを牽引する立場になったことは時流を感じさせるところもあり、感慨深いところだ。
ガールズバンドは和製英語であり、女性アイドルと同じく日本特有の文化だ。そういう意味でも海外から注目されているシーンでもある。2次元的なジャパンカルチャー要素をすべて飲み込んだBAND-MAIDの海外人気を含め、その世界的な注目度は増している。ちなみにBAND-MAIDの初期を支えたのは、ジャパメタ〜「H.M.」ヘヴィメタクイーンのムーブメントを作った<ビーイング>の作家陣であり、系譜は脈々と受け継がれているのだ。
これほどまでに多くの女性バンドが活躍しているのは、世界中を見ても日本だけである。いろいろな側面から長く継続することが難しいと言われている女性バンドだが、『マツコの知らない世界』で紹介されていたように、出産後に復帰したドラマー、むらたたむの事例であったり、時代とともに環境は変化しつつある。世界で最も長く活動した女性バンドは日本のZELDAで、1979年から1996年の17年の活動歴はギネス記録に認定されている。そして、SCANDALは今年で結成15周年を迎える。
世界が羨むほどの我が国が誇るガールズバンドシーンは、この先ますます面白くなっていくことだろう。
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/Twitter