SKY-HI、“問答無用で楽しいを作りたい”を体現 ちゃんみな&Novel Core駆けつけた『遊戯三昧』東京公演を観て

 怒涛のラップセクションを駆け抜けると「勝てるとこあるなら探してみな!」と煽り、BFQ(BLUE FLAP QUARTET)と共に魅せるダンスセクションへ。挑発的な「Mr. Psycho」、官能的な「Sexual Healing」と楽曲ごとに様々な側面を演出。「Chit-Chit-Chat」では、チルアウトな空気感を柔らかな歌声とダンスで表現した。ビートを掴むのが難しいアウトロでも、スクワッド&BFQとのチームワークは健在。安心と信頼の実績なんていうと嘘くさく聞こえてしまうかもしれないが、何年も一緒にステージを作り上げてきたからこそ生み出せるエンターテインメントは抜群の安定感を保っていた。ミュージカルのようなキャッチーさで「Blue Monday」を描き、“I wanna be…be me!!”と高らかにコール。徐々にキーをあげて歌いきり、一幕のラストとなるような大団円を作りだした。

 MCで「同じように考えて、同じように戦える人は、なかなかいない。熱量で繋がれる人は大切だ」と、ちゃんみなのことを語るSKY-HI。宣教師風に「ちゃんみなのことを信じなさい、私のことも信じなさい」なんてふざけてみせるが、その言葉にはしっかりと想いが宿っていた。

 「すべての人に愛をこめて」と告げると、シンガー SKY-HIのターンへ。願いをこめるように、祈るように「そこにいた」を歌い上げる。何度も唱えられる“君”はオーディエンスひとりひとりに向けられ、会場中が自然と聴きいっていた。「I Think, I Sing, I Say」ではフリースタイルで“これが生きた証だ!”と刻み、「#Homesession」ではフロア全体でクラップを巻き起こす。「君の番だぜ!」と焚きつけつつも、誰よりもステージで踊り騒ぎ遊ぶ様はいかにもSKY-HIらしかった。

Novel Core

 そして、いよいよコラボステージが繰り広げられる。「この世で1番の美人を呼んでいいですか」というSKY-HIのMCを受けちゃんみなが登場するかと思われたが、姿を現したのはなんとNovel Core。突如始まった「SOBER ROCK」に観客は驚きを隠せない様子だったが、そんなことはお構いなしにすぐさま空気を自分のものにし、MVの延長線のような仲睦まじいステージングを披露していく。〈ありがとう運命見ていろよ〉のリリックは色濃く響き、ここからBMSGが快進撃を巻き起こしていくことを予期しているようだった。

 SKY-HIがシーッと会場を沈めクリックが4つカウントされると、ちゃんみなとのナンバーである「Holy Moly Holy Night」へ。とにかく楽しそうで自由なふたりを見ていると、これが実力者同士の本気の遊びなのだと思わずにはいられない。彼らに共鳴するかのごとく、クラップをしたりサイリウムを振ったり、オーディエンスにも自由に楽しむ空気が流れていた。

 ライブチューンの「Double Down」をきっかけに、ここからは一気にラストスパート。会場もグッと前のめりになり、より一体感が増していく。「Snatchaway」「Seaside Bound」と続けざまに投げ入れると、Zeppの熱気は最高潮。観客が声を出せない環境であっても、コール&レスポンスが脳裏に直接響くよう。『BMSG Audition 2021 -THE FIRST-』のテーマソングである「To The First」でライブを締めくくると、深々とお辞儀をしてステージを去ったのだった。

 SKY-HIは「BMSGを設立して初めてのツアーだから、これが俺のデビューステージだと思ってる。新しい時代を創るのは俺らだ。こっちはとっくに人生をかけてんだよ!」と話していたが、その言葉を疑うことなく鵜呑みにするには十分すぎる一夜だった。問答無用の楽しいを作るためには、真のアーティシズムが必要であり、演者自身が誰よりも音楽を楽しむ必要があると、ライブツアー『遊戯三昧』を通して伝えきっていたのだから。

 今月からは『SKY-HI Round A Ground 2020』の再振替公演が行われ、名古屋、大阪、宮城、東京、福岡の追加公演も決定している。新たな歴史が始まる起点を目撃するなら、今しかない。

■坂井彩花
ライター/キュレーター。1991年生まれ。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。Rolling Stone Japan Web、EMTGマガジン、ferrerなどで執筆。Twitter(@ayach___)

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