THE BACK HORNが放つ「生きる」というメッセージ ストリングス交えてドラマチックに再構成した『リヴスコール』

 THE BACK HORNの『「KYO-MEIストリングスツアー」feat.リヴスコール』は、彼らにとって大切なものを詰め込んだツアーだ。彼らが活動のキーワードとしている“KYO-MEI”、10年前の東日本大震災後に発表した9thアルバム『リヴスコール』、そして2014年の『ARABAKI ROCK FEST.14』以来の付き合いになるキーボードの曽我淳一と、めかるストリングス(Violin:銘苅麻野&雨宮麻未子/Viola:須原 杏/Cello:松尾佳奈)との共演。メジャーデビュー20年目にふさわしいツアーだ。本来なら全国6カ所のZeppを回り、今回取材したZepp Hanedaがツアーファイナルとなる予定だったが、大阪公演が延期になり6月27日に振替公演を開催する。

 中盤のMCで松田晋二(Dr)が言った。

「アルバム『リヴスコール』は改めて音楽とはどういうものか、自分たちに何ができるか向き合った本当に大切なアルバム。それ以後のTHE BACK HORNの歩み方・音楽の作り方、音楽に対する向き合い方が変わった。10年経って、またひとつ自分たちにとって大切なものになってきているので、改めてアルバムをもう1回演奏してツアーを回ろうというのが今回の思いでした」

「ストリングスツアーは今までもやってきていて、ストリングスが入ると新たな景色が見えたり、見えなかった感情が沸き上がったり、音ってそういう力があると思っていて。4人だけの俺たちの、隙間も含めて自分たちの音なんですけど、そこにストリングスが入って、立体化したTHE BACK HORNの楽曲になっています。『リヴスコール』の生の曲・音に酔いしれる最高の1日にしたいと思います、たっぷりと感じてください」

山田将司

 その言葉通りのライブだった。シンセとストリングスによる荘厳なSEの中で登場したTHE BACK HORNの4人は、アルバム『リヴスコール』の1曲目「トロイメライ」からスタート。穏やかに山田将司が歌い出し、ストリングスとバンドがひとつになって、見事なスケール感のある演奏に思わず息を呑んだ。だが、これはまだ序の口であることが、続く「シリウス」で示された。THE BACK HORNのタフなバンドサウンドに負けずパワフルに響くストリングスと両者の間を繋ぐキーボードとが、まさに共鳴し合い大きなうねりとなって会場を揺らした。その波が「ブラックホールバースデイ」でさらに大きくなったのはいうまでもない。

 これまで何度も共演してきたキーボード&ストリングスだけに、アグレッシブなバンドに引けを取らないキレッキレの演奏でせめぎ合う。ストリングスにリフを渡した菅波栄純のギターはこれでもかと暴れまわり、岡峰光舟の歪んだベースが追い打ちをかける。様々な音が重なり合う中で、きっちりビートを叩き出す松田のドラムがひときわ存在感を放った。一息いれた松田がマイクを手に、初めて来たというこの会場のフロアを見渡す。

松田晋二

「初めて、みんなと俺たちの空気をここに刻み込んでる、そんな想いもあるので、今日はストリングスとキーボードを交えた編成で、新たなTHE BACK HORNのライブを楽しんでいただけたらと思います。配信でご覧になってる皆さんもそれぞれの場所で楽しんでもらえたら。声が出せない環境だったりしますけど、音楽最高だなという実感を味わって、素晴らしい夜にしましょう」

 キーボードとストリングスが退席した「超常現象」は、剥き身のバンドのエナジーがほとばしるような演奏になった。山田が全身から絞り出すように歌った「ジョーカー」は起伏に富んだ演奏で人間の闇と光を描き出し、その闇と光は「自由」に引き継がれた。ベースソロから始まった「グレイゾーン」は再びストリングス&キーボードと共にドラマチックなサウンドスケープに。滑らかなストリングスが響いた「いつものドアを」、センチメンタルな「シュプレヒコールの片隅で」。さらに、落ち着いて力強い歌を聴かせた「君を隠してあげよう」は住野よる作品とコラボした曲だが、ライブではこのツアーが初披露。このステージのために書かれた曲のように澄んだストリングスが馴染んでいた。

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