Morfonica、朗読劇×音楽で表現したバンドのストーリー デビューからの成長を見せた2ndライブ『Andante』

 荒野のなかで立ち止まりそうになった少女に対し、直田演じる炎の声が語り掛ける、「どこに行きたいのか?」と。ここからハードな楽曲が続いていく。赤いライトが会場を染めあがり、バイオリンとギターがせめぎ合う「flame of hope」が始まった。彼女らの中でもハードな楽曲に、バンドアンサンブルも少しだけ走り気味になりつつも上手くまとめていく。9曲目にはまたしてもハードなサウンドの「Nevereverland」が続く。

 体を前後に思いっきり動かしながら弾き続けるギターの直田、徐々に気持ちが高ぶり動きだすバイオリンのAyasa。アグレッシブな楽曲を弾き切る2人の姿を見ると、空を見上げた少女がみつけた光が、声を発して語り掛けてくる。演じるのは西尾だ。自分が何者であり、どこからきて、どこへ向かっていくのか、アイデンティティを探していくようなこの朗読劇は、本をパンッと強く閉じ、「導く声に向かって、私は今羽ばたく」という進藤の強い言葉で締めくくられる。

 聴きなじみのあるベースイントロを西尾が弾き始め、「メリッサ」(カバー)へと繋がっていく。原曲に忠実な形でカバーしたアンサンブルは、ライブ序盤と変わることなく丁寧かつ安定していた。ここまできたらMorfonicaらしい品の良さにも思えてきてしまう。

 海・花・炎・光などの声に導かれていった物語は終盤へと向かっていく。初披露となる新曲「Sonorous」と「ハーモニー・デイ」を立て続けに披露。特に「Sonorous」はこの日が初披露にもかかわらず、観客が自然とペンライトを左右に振りだし、徐々に一体感が生まれていった。バンドライブに加えて朗読劇の物語を絡めた世界観に、深く没入させられていったのがよくわかる。

 5人がステージから離れたあともアンコールを求める手拍子は鳴りやまない。アンコールの客電がついて5人が戻ってきて、ようやくこの日初めてとなるMCタイムになったのだが、5人全員が「Morfonicaの5人」としてMCをしていたことには驚かされた。デビューしてから1年ほど経った今宵は、キャラクターを貫いたステージングをしっかりと披露し、「Morfonicaの5人が奏でられた朗読&音楽劇」というストーリーとしてもひとつ完成されていたのだ。

 アンコールには本編で披露されていた2曲、「Sonorous」と「金色のプレリュード」を再び披露する。1曲目とラストに披露した「金色のプレリュード」は、同じ歌詞なのに、どこか違って響いていく。〈今を懸命に進むよ 目指す場所なら見つけた〉という言葉は、この日の朗読劇をみたあとでは非常にポジティブな響きになっていくのだ。

 朗読劇に登場した少女は、ボーカルの倉田ましろとしても、Morfonicaというバンドそのものとしても読めるが、もちろん観客一人一人にも語り掛けるような内容だったと思う。時には自分自身に迷いつつも、強かに一歩を踏み出す勇気の物語は、それぞれの「Andante(歩くような速さ)」で紡がれる物語でもある。

 デビュー間もないバンドの成長というのは、なにも楽器の演奏力や歌声だけではない。Morfonicaは朗読劇という形式を援用しながらも、「心に強く訴えていく」というメッセンジャーとしての力を、この日ライブをみたファンに知らしめる一夜だったろう。

■草野虹
福島、いわき、ロックの育ち。『Belong Media』『MEETIA』や音楽ブログなど、様々な音楽サイトに書き手/投稿者として参加、現在はインディーミュージックサイトのindiegrabにインタビュアーとして参画中。
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