AKB48グループ、本田仁美&矢吹奈子の復帰が起爆剤となるか 必要なのは『PRODUCE 48』モデルにした実力の可視化?
『乃木坂に、越されました。』をブラックジョークで終わらせるのか?
衣装面、メイクなどビジュアル面も、AKB48グループは「全員ほぼお揃いの色や形」で統一感を出すスタイルが根強い。かなりの大人数のメンバーを抱えているため、ルックス的な違いを作り出すのは、時間、人手の面でも大変な作業になる。ただ、NiziU、IZ*ONEらの衣装、CDジャケットなどを見ていても、メンバーの個性を際立たせるためかくっきりとした違いがあり、今のトレンドを押さえた格好良さを感じる。色づかいも濃い目を基調としており、攻めのイメージを与えてくる。IZ*ONEの、強烈なピンクで彩られたアルバム『Twelve』(2020年)や、原宿の街などを背景にしたシングル『Vampire』(2019年)のアートワークは鮮烈だった。
そういったアートワークから感じるのは強烈な「個」である。CDジャケット、ミュージックビデオなどの背景や装飾がどれだけ情報量が多くても、人物が負けていない。この「個」はどういったところで磨かれ、そして際立っていくのか。徹底的なレッスンによるものかもしれないし、別の何かがあるのかもしれない。私たちもAKB48グループのメンバーの際立った「個」をもっと見てみたい。
と、ここまでアレコレと好き勝手に書いておいて、そもそものところ「AKB48グループは果たして変わる必要があるのか」という気持ちにも駆られた。「変わるべし」と考えているのは、実はメディアや一部のファンだけではないだろうか。かつてほどの注目度の高さや楽曲セールスがなくても、グループとしての規模を調整していけば現状維持はできるかもしれない。
ただ現在のメンバーは、毎日のように世間を賑わせていた頃のAKB48グループに憧れていた世代ばかり。次は自分たちが歴史を創りあげる番だと意欲を燃やしているはず。5月23日には、7月からの新番組『乃木坂に、越されました。~崖っぷちのAKB48の大逆襲~(仮)』のスタートが発表された。あきらかに今のAKB48の現状を皮肉った内容である。これを単なるブラックジョークで終わらせるのか。それとも悔しさや危機感を覚え、停滞ムードの打破につなげるのか。本田仁美、矢吹奈子という「世界を知るメンバー」を中心に、グループがふたたび隆盛をきわめることを期待したい。
■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter:https://twitter.com/tanabe_yuuki/