アイナ・ジ・エンドを救ったBUMP OF CHICKENの言葉 岡村靖幸、ジェシー・J……ルーツにある音楽を語る

 2020年12月よりシンガーソングライターとしての活動を本格的にスタートし、2021年には1stアルバム『THE END』と1st EP『内緒』をリリースしたアイナ・ジ・エンド。BiSHでもハスキーな声質と歌唱力で突出した才能を見せてきたアイナだが、ソロでは作詞作曲も担当。亀田誠治らプロデューサーとの共作により、ソロならではのパーソナルな一面を表現している。

 そんなアイナ・ジ・エンドは、これまでに一体どんな音楽に触れ、影響を受けてきたのだろうか。本インタビューでは、アイナ本人が考えたAWAのプレイリストと共に、彼女の音楽遍歴〜自身のクリエイティブについて紐解いていきたい。(編集部)

アイナ・ジ・エンド「自分に影響を与えた楽曲」プレイリスト
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ソロ楽曲は「絞り出したような“ぼやき”」

アイナ・ジ・エンド

ーー今日はこの企画のために選んでいただいた「自分に影響を与えた楽曲」のプレイリストを元に、アイナ・ジ・エンドさんの音楽的なルーツを探っていきたいんですけど。その前にまず、2月にリリースされたソロ1stアルバム『THE END』と3月にリリースされたEP『内緒』が、ちょっとビックリするくらい良くって。

アイナ・ジ・エンド(以下、アイナ):そんなすごく手応えがあるとかじゃないんですよ。私が作る曲は、“ぼやき”みたいな感じで。自分から出てくる時はまだ音楽になってない感じなんですけど、それを亀田(誠治)さんたちが音楽にしてくれたというか。それは「ありがたいな」って思うんですけど、自分ではありふれた曲しか作れてないと思ってます。

ーーでも、歌詞だけでなく、曲の元となるメロディもアイナさんの中から出てきたものですよね? その部分に、天性のセンスというか、オリジナルなものを感じずにはいられないんですけど。

アイナ:ありがたいです。まあ、“ぼやき”と言っても、軽々しく出てきたものではなく、自分とずっと向き合って、やっと絞り出したような“ぼやき”なので。自分としては愛おしいものですし、少なくとも友達には届くものになってるかもしれないとは思いました。自信はないけど、愛はありました、確かに。

ーーリスナーとかファンとかじゃなくて、友達?

アイナ:友達に歌ってる感覚なんですよね。友達と、自分。もちろん、その友達の向こうにファンの方も見えてるんですけど、友達に伝わらなかったら、そこから先にも伝わらないんじゃないかなって。だから、アイナの友達じゃなくても、友達みたいな感覚で刺さってくれたらいいなって。それだけですね。例えば音楽にすごく詳しい人にも届けたいとか、そういうのは全然考えてないし、想像ができないです(笑)。

ーーリスナーとして、最初に意識して音楽を聴くようになったのはどのあたりなんですか?

アイナ:デスチャ(デスティニーズ・チャイルド)とか、ジャネット・ジャクソンとか、シアラとか、最初はほとんど女性シンガーの、ダンスでよく使われてる曲ばっかりでしたね。

ーーそっか。ずっとダンスをやっていたんですよね。

アイナ:はい。音楽というとダンスをするためのものだったから、「このアーティストが好き」みたいなのもなくて、「踊れる」か「踊れない」かだけで音楽を聴いてましたね。だから、「この声、前も聴いたことあるな」って思ってるだけで、それがビヨンセの声だと知ったのはずっと後だった、みたいな。

ーー完全にフィジカルで音楽を聴いていたってことですね。じゃあ、自分でCDを買ったりもせず?

アイナ:そうですね。自分で初めてCDを買ったのは、YUIとBUMP OF CHICKENでした。そこでようやく歌詞を気にするようになった感じで。BUMPは初めて買ったのが『jupiter』で、そこから全部過去の作品も辿っていって。昔も今も、BUMPが一番好きですね。

ーー最初に好きになったバンドが、今でも一番好きっていうのは、幸せなことですね。

アイナ:ネットオークションで過去の表紙になってる雑誌を集めて、藤原さんのインタビューを切り取って、寝る前に必ず読んで、「明日もがんばろう」って思う。一時期は、ずっとそんな感じでしたね。

ーーああ、いきなり歌詞を気にするようになっただけじゃなくて、インタビューでの発言とかも含めて、言葉がガッと入ってきた感じ?

アイナ:本当にそういう感じでしたね。学校にも家庭にも居場所がなくて、ダンスしか居場所がなかったんですけど、そこでも後ろの方で踊ってるだけで、友達はオーディションに受かっても、私は何度受けても受からないみたいな感じで。本当に、なんにもない人生だって思ってて。そんな時に、ラジオを聞いてたら「生きてください」みたいなことを藤原さんが言っていて。そういうことをちゃんと言葉にして言ってくれる人って、他にいなかったから。それがなかったら自分は死んでたかもしれない。でも、そういう人って私だけじゃなくて、きっといろんな人がBUMPに「生かされてきた」と思います。私にとってBUMPはどんなことがあっても「救ってくれた人たち」であることは変わらない。ずっとヒーローですね。

ーーでも、さっきアイナさんが「友達に歌ってる」と言ったことにも、通じているのかもしれませんね。どんなに多くのリスナーがいたとしても、常に一対一の関係でありたいっていう。そういう根本的な部分で、影響を受けているんじゃないですか?

アイナ:そんな、畏れ多いですけど。そうですね……そうかもしれない。

ーーシンガーとしてのアイナさんに着目した時に、いただいたプレイリストの中で気になるのは、やはりCharaさんです。ここでは「ミルク」を挙げてますが、これはリアルタイムじゃなくて後追いですよね?

アイナ:はい。映画の『スワロウテイル』を見てーーこれも後追いですけどーーすごくかわいくて、大好きになって。

ーーハスキーなウィスパーボイスの女性ボーカリストって、ジェーン・バーキンを筆頭に女優が歌うパターンではそれまでもいましたけど、Charaさんみたいにめちゃくちゃ歌が上手いのにハスキーでウィスパーって、デビューした時すごく新鮮だったんですよ。で、アイナさんの歌もその系譜にあると言えるのかなって。

アイナ:正直、そういう点では意識をしたことはないんです。BiSHのレコーディングの時にサウンドプロデューサーの松隈(ケンタ)さんから「Charaさんっぽく」って指示をされたことはあって、もしかしたらそこで自然に身についちゃったのかもしれないですけど。