eillの歌に元気をもらえるライブ空間ーーメジャーデビュー目前に遂げた新たな“幕開け”

 ライブ本編は、聴く人誰もを肯定し、明るい光を照らしてくれる「SPOTLIGHT」で終了。そこからアンコールでは、ファンからの事前アンケートで選ばれた「special girl」のみを歌う予定が急遽、もう一曲の候補に挙がっていた「2025」もワンコーラスだけ歌いたいというeill。ファン想いな心意気か、あるいは「Ma boy」のようなワガママ心が疼いたのか、年相応な無邪気さで見事なおねだりを成し遂げる。

 この日の最後を飾ったのは、インディーズデビュー曲「MAKUAKE」。新生活の始まる春らしく、「さよならと終わりは、何かの始まり。そんなキモチをこめて」という一言を添えて、期待感に満ちた毎日へとファンを送り出してくれた。同時に、“メジャーデビュー1年生”として、自身も新たな挑戦に臨むeill。今度はそんな彼女の背中を押すためか、ライブ終演後に嵐の止んでいた渋谷の空は、「MAKUAKE」の歌い出しのフレーズ〈雨上がりの空 一言で言い切れる〉ともリンクするようで、運命的な巡り合わせに微笑んでしまった。

 この日のステージで、「今日を思い出して元気になるような、そんな日になればいいなと思っています」と語っていたeill。本題からは少し外れるが、筆者は昨年のステイホーム期間を通して、人はなぜ日常のなかに音楽の彩りを求めるのかを改めて再考する時間を過ごしていた。勝手な考えだが、その答えのひとつは、好きな音楽を通してたくさんの人に出会い、同じ感情を共有できるからだと思う。

 

 この日のライブでもそうだったように、eillは数あるアーティストのなかでも特に、R&Bをはじめ、ソウル、ファンク、ロック、エレクトロ、J-POPやK-POPなど、あらゆるジャンルをクロスオーバーし、卓越したシンガーソングライターとして、聴き手のあらゆる感情にそっと寄り添ってくれる。やはり、我々の生活に必要なのは音楽……もっと言えば、eillの紡ぐ歌と、彼女に元気をもらえるライブ空間。つまり、“ここで息をして”いるのだ。改めてそう感じさせられる一夜だった。

■一条皓太
出版社に勤務する週末フリーライター。ポテンシャルと経歴だけは東京でも数少ないシティボーイ。声優さんの楽曲とヒップホップが好きです。Twitter:@kota_ichijo

■セットリスト
『eill the show 2021』
2021年3月21日(日)WWW X

01. 踊らせないで
02. FUTURE WAVE
03. HUSH
04. 20
05. Ma boy
06. Fly me 2
07. Succubus(Remix)
08. Into your dream
09. ここで息をして
10. FAKE LOVE/
11. ((FULLMOON))
12. Night D
13. この夜が明けるまで
14. 片っぽ
15. SPOTLIGHT

En1. special girl~2025
En2. MAKUAKE

eill オフィシャルサイト

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