AKB48『歌唱力No.1決定戦』、NMB48『NAMBATTLE』……正念場迎えた48グループ、新プロジェクトで活性化なるか

WACK、ラストアイドルなどに見るグループ内の競争意識向上

 『AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』、『NAMBATTLE』のように、メンバー同士の競争意識を高めてグループを発展させる企画はほかにもいくつかある。なかでも代表的な事務所として、BiSH、BiS、豆柴の大群らが所属するWACKがあげられる。

 WACKは新しい所属タレントを決める合宿オーディションを毎年開催。候補生たちはそこで生き残りと脱落をかけた過酷な試練を課せられ、参加者同士で競い合い、芸能界でやっていくために必要な気持ちの強さを試される。既存グループのメンバーも安泰ではない。各グループから合宿参加者がチョイスされ、候補生たちとともにミッションに取り組んで汗と涙を流す。そこでは残酷なまでに勝者と敗者に振り分けられていく。売れっ子のアイドルになっても、そういったシビアな現実に向き合って活動しているWACKのタレント陣。だからこそ各グループは名実ともに評価が高い。

 ラストアイドルは、春にリリースする10枚目のシングルにちなんだ企画として、インド映画のミュージカルでおなじみのボリウッドダンスに挑戦。ダンス指導の関本恵子の判断とファンの投票をもとに、36名のメンバーのなかから楽曲のセンターとミュージックビデオのヒロインが決められる。

 関本は自身のTwitterのアカウントで「ボリウッドダンスが日本で上手く伝わるように私なりに頑張ります!」と意気込みをツイートした。日本にはインドの映画、音楽の熱狂的ファンが非常に多い。ラストアイドルのメンバーは、そうったファンからの注目にこたえられるような実力を、短期間で身につけなくてはならない。これは何気にかなりのプレッシャーである。

 ただ今回の企画をきっかけに新しいジャンルと文化を知り、ダンス力も身につき、何よりセンターやヒロインを目指すメンバー間の競争意識も高めることができる。2020年12月にデビュー3周年を迎えたラストアイドル。2021年の課題は、48グループ、ハロー!プロジェクト、STARDUST、WACKなどの上位グループにどれだけ肉薄できるかである。ラストアイドルにとっては、こういった一つひとつの経験がモノをいう時期になってきた。

 実力重視のこの時代。アイドルグループを長く持続させ、なおかつ人気も保つには、企画を通して歌やダンスなどパフォーマンス面での地力を底上げしなければならない。個人の人気に着目した企画は、波に乗ったときの瞬間最大風速は強い。しかしメンバーの卒業・脱退が起こった場合、グループの人気が落ちるのは早い。だが歌、ダンスといったスキル向上を第一の目的にグループを作れば、まず時代のトレンドに流されることはない。

 たとえばモー娘。は確かに初期メンバーの人気を地盤にしていたところはある。それでもここまで長く続いたのは、明らかな実力主義にシフトチェンジしたところ(もちろん初期メンバーも歌、ダンスともに素晴らしかったが)。そういう意味でモー娘。のスタイルはアイドルグループとしてもっとも理想的なのかもしれない。

 さて、48グループはこれらの企画を機にどれくらいパフォーマンス力があがるのか。新しい才能は、グループを強くすることはできるのか。実は今が正念場なのかもしれない。

■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter

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