グループ魂による“激しくておもしろくて切ない”世界 理由なき前向きさ生む『神々のアルバム』の醍醐味

 その他にも「昼も蕎麦だった」「それでも生きなきゃ死んじゃう音頭」「痛風だけど恋愛したい」なども、50代ならではの“おもしろくて、やがて悲しき”状態の楽曲だが、一方でこのアルバムは、パンクロックバンドとしてのグループ魂のまったく枯れることのないパワーが感じられる作品でもある。前作『20名』(「津川雅彦」「彦摩呂」など全曲“人名”タイトルによるアルバム)では幅広い音楽性を取り入れていたが、今回はシンプルなパンクロックに回帰。1970〜1980年代の洋邦のパンクロック(つまりメロディックパンク以前のパンクです)を軸に、いなたさと鋭さを兼ね備えたサウンドを体現している。破壊こと阿部サダヲのボーカルも絶好調。ジョン・ライドン(SEX PISTOLS)のような巻き舌や近藤房之助ばりのソウルフルなシャウトを交えながら、“激しくておもしろくて切ない”グループ魂の世界を生々しく描き出している。

 名作コント「中村屋」の新作「助演男優賞」(フリーアナウンサー・幸坂理加の演技も聴きどころ!)などコントもたっぷり。くだらなさ、情けなさ、どうしようもなさを笑い飛ばすパンクロックを聴いているうちに、「いろいろあるけど、まあ大丈夫じゃない?」という理由なき前向きさが生まれてくる。これが本作『神々のアルバム』の醍醐味であり、グループ魂の最大の魅力なのだと思う。いや、マジで。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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