LAMP IN TERREN、歌とバンドがドラマティックに織りなす“生の呼吸” 全20公演『Progress Report』ツアー最終日をレポート

 アルバム収録曲以外で印象的だったのが「balloon」と「BABY STEP」。「balloon」はとにかくバンドの音が雄弁で、助走をつけるような1サビ前、旋律同士が絡み合う2サビ前、歌とともに燃えるラスサビなど、胸を打たれる場面が多数。徐々にテンポを落とすアウトロの隅々まで丁寧に演奏されていて、配信では、余韻を噛み締めるような表情をした中原健仁(Ba)がカメラに抜かれていた。「BABY STEP」は音源だとストリングスの音が大きめに入っていて華やかだが、ライブでは、松本によるアカペラ/エレキ弾き語りパートを随所に挟んだアレンジに。ボーカルとギターが掛け合いするサビで、大屋真太郎(Gt)が歌心たっぷりに奏でていた場面からも、ボーカルのロングトーンを引き受けてバンドがたっぷりと鳴らすアウトロからも、歌とバンドが意思疎通している感じが伝わってきた。

 「balloon」は2015年リリースの曲だが、〈空っぽの 風船 みたいに/街を 見下して 浮いていたんだった/それ故 気付けなかった/温もりは ずっとそばにあった〉というフレーズには、自然体で音楽を鳴らすようになった今のバンドのモードに通ずるものがある。先述の通り、今回のライブは『FRAGILE』を中心に構成されたものだったが、だからこそ、それでもあえて演奏された既存曲の存在意義も大きかったように思う。

 まるでコンセプトライブのように本編が固められていた分、アンコールでは、ライブで定番のアッパーチューン「地球儀」や、前アルバム『The Naked Blues』リリース後に発表されたものの、『FRAGILE』のカラーとも違うためアルバムに収録されることがなかった「ほむらの果て」などが演奏された。なお、アンコールで演奏する曲は事前に決めておらず、本編終了後、その日の気分に応じて決定する方針。その試みからは“心の赴くままに”というバンドの姿勢が感じられたし、マイクを通さず歌ったりMCしたりする場面が何度かあったのは、何にも媒介させず、できるだけ素のままの状態で自分たちの“心”を観客に伝えたいという想いがあったからであろう。

 おそらくそれこそが、彼らが会場に観客を入れた上でのライブ、ツアーを強く望んだ理由だ。孤独が嫌いな自分にとって音楽とは、誰かと共に生きるための方法である。だからこそ自分たちが鳴らす音楽は、人を感動させられるもので在り続けたい。そのために死に物狂いで歌いながら生きていくーーと決意を語った松本。本編ラストの「EYE」は、燃え残り一切なしといった熱演。コーラスが厚く重ねられた音源とは違い、音数自体は少ないはずだが、装飾など要らないと思わせられるほど、バンドのサウンドはドラマティックだった。静かに、しかし確かに燃えるこのバンドの熱が、広く波及していく日はきっと遠くない。そう信じたくなるライブだった。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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