荒井由実、赤い鳥、YMO、ハイ・ファイ・セット、ガロなど錚々たるアーティストを世に送り出したアルファレコードの設立者・村井邦彦。その青春期の多くを、当時の文化人や知識人が集ったレストラン「キャンティ」にて過ごした村井は、同店の創業者である川添浩史の薫陶を受け、才能あふれる多くの人々と交流し、国際的な教養やコミュニケーション感覚を養った。
写真家のロバート・キャパをはじめ、建築家の坂倉準三、フランス文学者の丸山熊雄らと若かりし頃から交流し、1950年代には吾妻徳穂による日本舞踏の欧米公演「アヅマカブキ」を成功させるなど、“文化交流プロデューサー”の肩書きで八面六臂の活躍を果たした川添浩史とは、いったいどのような人物だったのか。
本連載『モンパルナス1934~キャンティ前史~』は、村井邦彦が日本経済新聞編集委員の吉田俊宏とともに、川添浩史の交流の足跡を辿り、戦前から戦後にかけてグローバルな文化がどのように日本に息づいてきたのかを、数多くの資料と関係者たちの証言に基づいて綴る物語だ。なお、関係者たちへの取材もまた貴重であるため、取材相手の許可を得て『メイキング・オブ・モンパルナス1934』と題した対談企画として記事化していく。(編集部)