秋山黄色「サーチライト」で描かれる激情と静寂 水溜りボンド 佐藤寛太によるMV、ドラマ『先生を消す方程式。』での役割も

 秋山黄色の新曲「サーチライト」が11月13日にデジタルリリースされた。同曲は、テレビ朝日の土曜深夜「土曜ナイトドラマ」枠で放送中の『先生を消す方程式。』の主題歌。また、秋山にとっては、メジャーデビューアルバム『From DROPOUT』以来、約8カ月ぶりのリリースとなる。

 「サーチライト」は、ギター/ベース/ドラムによる武骨なロックサウンドを打ち出したアッパーチューン。作詞作曲同様、編曲も秋山自身が手掛けていて、「こうして作品と共に鳴ろうという時には、 めちゃくちゃアレンジに悩みますが、 そのあまりに強烈な物語に触発されストレートを選びました」とのこと(参照:秋山黄色、新曲「サーチライト」で田中圭主演ドラマ『先生を消す方程式。』主題歌担当)。放送時間30分内(「土曜ナイトドラマ」は前作まで50分だったが、今作から30分になった)で展開される濃密かつスリリングなドラマの脚本に呼応し、疾走感溢れる青春ロックサウンドに仕上げた。サビのボーカルでは秋山のハイトーンが気持ちよく突き抜ける音域が多用されていて、芯のある歌声が存在感を発揮している。また、直前の展開も起爆剤に。BメロのラストではボーカルがA♭→G→F→E♭と一段ずつ下降。そこから間を空けずサビに突入することで、サビ冒頭でのmid2E♭→hiB♭の跳躍がより際立っている。

 こうして“激情”が表現されている一方、それとは対照的な“静寂”も逃さず描かれていることに注目したい。最も分かりやすいのはAメロにおける対比。ここでは、似た構成のメロディがオクターブ違いで歌われていて、低い方(1~8小節目)では弱々しい本音が、高い方(9~16小節目)では本音を覆い隠す建前が歌われている。さらに興味深いのはオープニング。この曲はハミングによるハーモニーを主体とした非常に静かな場面から始まっているが、仮にこの場面がなく、0:11~のイントロから始まっていたとしても、この曲は違和感なく成立するのでは? と思わないだろうか。それでもあえてハミングのパートを冒頭に配置したのは、輝かしい“表”だけではなく、寂しく孤独な“裏”まで掬い取りたかったからなのでは、と推測できる。

 人の心に宿る光と影。笑顔と涙。誰かといるときの堂々とした立ち振る舞いと、一人になったときにだけ曝け出せる裸の本心。その両方を認めるように、対比を盛り込んだ「サーチライト」。MVでは、スポットライトに照らされながら演奏する秋山の姿が映されているが、秋山の影は本体と違う動きをしていて、観衆が認識する“秋山黄色”と本人の心の内側にある“本当の自分”とのギャップが表現されている。影はやがて、導線でグルグル巻きになった黒ずくめの人に変わっていく。もがくように身体を動かす導線人間は、おそらく、光を浴びる者が抱える苦悩や葛藤のメタファーだろう。MVの監督を務めたのは、水溜りボンドのカンタこと佐藤寛太で、彼は制作にあたり、かねてから憧れていたクリエイターズカンパニー株式会社コエに直接アプローチしたとのこと(その結果、関和亮監督監修、コエの全面協力のもとMVは制作された)。佐藤がそこまで能動的な行動に出たのは、同じクリエイターとして秋山と共鳴するポイントが彼自身の中にあったからなのかもしれない。

秋山黄色『サーチライト』

 弱さを受け入れることが真の強さだとよく言うし、実際この曲の序盤にも〈僕らは弱さも迷いも捨てなくていい/抱えた全てを強さと叫ぶから〉というフレーズがある。しかし本筋はきっとそこではない。〈凍えても花火みたいに生きるお前が良いんだ/ごめんな…〉、〈弱さと生きる事は楽じゃない/強さもきっとロクなもんじゃないよ/だから悩み続けよう そんなもんだろう/もがけ僕等の足〉とあるように、“強くなる”行為のしんどさを知っていてもなお“光へ進め”というメッセージを、この曲は発している。

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