森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.214
あいみょん、SEVENTEEN……“歌”が持つ奥深さを味わえる作品 新譜5作からピックアップ
「ハルノヒ」「裸の心」などのヒットシングルを収めたあいみょんのニューアルバム『おいしいパスタがあると聞いて』、TVアニメ『炎炎ノ消防隊 弐ノ章』のオープニング主題歌として話題のAimerのニューシングル『SPARK-AGAIN』など5作品を紹介。独創的な世界観、多彩な表現、ボーカルの技術など、“歌”というフォーマットが持つ奥深さを味わってほしい。
「ハルノヒ」「空の青さを知る人よ」「裸の心」などの話題曲を収めた、約1年7カ月ぶりとなる3rdアルバム『おいしいパスタがあると聞いて』。〈金があれば何でもできるかもしれない〉〈でも鐘のなる方へは行かないぞ〉というラインに痺れまくる「黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を」、サイケデリックな音像とともに〈私はいつも運まかせ〉と歌う「そんな風に生きている」まで、あいみょんの歌には生々しい身体性が宿っていて、どこにも嘘やごまかしがない。虚勢を張るでも着飾るでもなくトレンドを追うわけでもなく、彼女自身のなかに生まれたその瞬間の感情を正確にスケッチし、誰もが共振できるポップスへと導く才能はさらに研ぎ澄まされ、普遍的な魅力を放っている。絶頂期の中島みゆきや松任谷由実がそうだったように、彼女は本作によって、“時代の歌”を紡ぎはじめた。
スネアの音が聴こえた次の瞬間、一気に走り始めるバンドサウンドとともに描かれるのは、空間を切り裂くようなギターのフレーズと、“火花を散らすような情熱を取り戻し、未来を手にしたい”という衝動。前作『春はゆく / marie』に続く2020年2作目のシングル『SPARK-AGAIN』の表題曲は、TVアニメ『炎炎ノ消防隊 弐ノ章』のオープニング主題歌として制作されたアッパーチューン。疾走するビートと鋭利なサウンドを従えながらAmierは、強い意思を持って突き進む姿をダイナミックに表現している。繊細な表情と鮮烈な思いを同時に感じさせるボーカリゼーションはやはり唯一無二だ。さらに、鎮魂歌として響くピアノバラード「悲しみの向こう側」、美しくも激しい旋律が印象的な「Ash flame」などを収録。シンガーとしての多彩な表現を味わえる作品に仕上がっている。
自粛期間中に自身のクリエイティブのスタンスを見つめ直したというちゃんみなの新作シングル『Angel』は、堕天使が落ちていく姿をストーリー仕立てにしたコンセプチュアルな作品。ラテンのフレイバーをたっぷりと注いだトラック、混乱と悲しみの中に沈む恋愛模様を描いたリリックが溶け合う「Angel」から、憂いを帯びたビートとメロディとともに地獄に落ちるかのような危うい精神状態を薄し出す「As Hell」まで、4曲を通して物語を味わいながら没入できる作品に仕上がっている。楽曲にはもちろん彼女自身の生の感情が乗せられているが、自ら生み出した世界を演じるようなボーカルも大きな聴きどころ。声自体の情報量がさらに増し、発声した瞬間に物語が立ち上がるようなボーカルの魅力につながっている。