和楽器バンドが見出した、一筋の希望の光 厳戒な感染防止対策で臨んだ有観客アリーナ公演を振り返る

 鈴華と町屋がツインボーカルで歌う和洋折衷の「シンクロニシティ」、つい身体が動いてしまいそうになるアップテンポな「ワタシ・至上主義」を立て続けに披露すると、山葵(Dr)と黒流による“和太鼓ドラムバトル”へ。両者ともに一瞬の隙も見せない激しいドラムバトルでは、互いに鋭い視線で見つめ合う場面もあり、思わず手に汗を握る緊張感が漂っていた。この時のみ撮影が許可されていたため、観客たちは二人の雄姿を夢中でカメラに収める。

 そしてライブはいよいよラストスパートへ向かう。「雪影ぼうし」では、会場を照らし出す涼しげな水色のライトとは裏腹に観客たちのボルテージはどんどんと高まっていき、「地球最後の告白を」「情景エフェクター」でクライマックスを迎える。ステージを駆け回るメンバーを照らす眩い光、そして力強くアリーナ中で揺れ動くペンライトの光が、彼らが向かう明るい未来を表しているようにも見えた。

 和楽器バンドのアンコールでは「暁ノ糸」のサビを繰り返し歌うのが定番だったが、この日は代わりに手拍子でアンコールをリクエストする観客たち。するとスクリーンには事前に募集していた、ファンが暁ノ糸を歌うリモート映像が流れ、友達や家族と共に、ペンライトを振りながらなど、思い思いに歌う姿が映し出された。大きな拍手が鳴りやまない中、メンバーが再登場すると、ファンの気持ちに応えるように「暁ノ糸」を披露。さらに10月14日にリリース予定のアルバム『TOKYO SINGING』に収録される「Singin’ for…」を全力で届け、「千本桜」で華麗なラストを飾った。

 誠実で真っすぐなライブを届けることで、会場に集まったファン、そして配信で応援するファンとの絆をさらに強めた和楽器バンド。彼らが懸命に守りぬいたステージは、苦難を強いられる音楽業界に差し込んだ一筋の希望の光のように思えた。

■南 明歩
ヴィジュアル系を聴いて育った平成生まれのライター。埼玉県出身。

和楽器バンド 公式サイト

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