ヒトリエというバンドの終わらない物語ーー柴那典がベストアルバム『4』を“起承転結”で辿る

 僕が行った『WONDER and WONDER』リリース当時のインタビューで、wowaka自身、それまでと曲作りの方法論が変わってきたことを語っている(参照:高速ロックシーンの源流=ヒトリエが提示する、次の一手とは?「今ある武器を全部出した」)。それまではボーカロイドを作って箱庭を作るように曲作りをしていたのが、バンドで演奏してライブをするようになり、それが楽しくなってきた中で、発想が真逆になった。そのせいでなかなか曲が生まれず、制作が紆余曲折したという。

 「センスレス・ワンダー」リリース時のインタビューでwowakaは、ヒトリエというバンドが目指す音楽性として「ヒリヒリしたもの、メンバーが一人ひとりぶつかっているもの」と語っていた。それが実際に4人の化学反応として生まれ始めたのがこの頃と言えるだろう。

 バンドは2015年にミニアルバム『モノクロノ・エントランス』を、2016年2月に3枚目のフルアルバム『DEEPER』を、そして同年12月に4枚目のフルアルバム『IKI』をリリースしている。このあいだにツアーやフェス出演も行っていたわけだから、振り返ってみると、相当ハイペースな活動だ。

 目まぐるしい制作の日々のなかで、4人の化学反応はさらに進んでいった。当初はwowakaが基本的に全てのパートを構築する曲作りだったのが、メンバーにアイデアを求めるようになっていった。それぞれの相互作用のなかで音楽性が深まっていった。RADWIMPSの作品などを手掛けるアートディレクター・永戸鉄也とwowakaの出会いもクリエイティブへの刺激として大きかったはずだ。いわば起承転結の“承”と言えるのがこの頃だ。

 「ワンミーツハー」や「トーキーダンス」や「フユノ」、「リトルクライベイビー」や「doppel」や「目眩」がこの時期の曲にあたる。アッパーで躍動感ある曲が取り柄なバンドだけに、特に「フユノ」や「目眩」のような静かに心に刺さる曲が印象に残る。

 2017年、wowakaは初音ミクの誕生10周年にあたり、久しぶりにボーカロイドを用いた「アンノウン・マザーグース」をニコニコ動画やYouTubeで発表。それをヒトリエとして演奏し歌った同曲を配信リリースした。

 同曲が収録されたミニアルバム『ai/SOlate』や、2019年にリリースされたアルバム『HOWLS』が、いわば起承転結の“転”と言えるだろう。「ヒリヒリしたもの、メンバーが一人ひとりぶつかっているもの」を目指したヒトリエとしてのバンドのアイデンティティは、ひとまず確立された。だからこそ、wowakaは改めて自身の創作のルーツとしての初音ミクに向き合うこともできた。

 そして、バンドに「音楽集団」としての結束力が高まっていったことで、さらに幅広い音楽性を取り込むことができるようになっていった。同じく永戸鉄也がアートワークに携わったRADWIMPSに喩えるならば、4枚目の『RADWIMPS 4〜おかずのごはん〜』から5枚目の『アルトコロニーの定理』に至るまでの変化に近いようなバンド力学の変化が起こっていた。

 ベスト盤収録曲で言うならば「ポラリス」や「コヨーテンゴースト」や「Loveless」や「SLEEPWALK」や「青」がこの時期にあたる。

 こうやって彼らのヒストリーを“起承転結”として振り返ってみると、ヒトリエは、まだまだ転がって、変わって、進化していく途上だったことがよくわかる。

 このベスト盤『4』は、タイトルが示すとおり、wowaka、シノダ、イガラシ、ゆーまおという4人のバンドとしてのヒトリエの起承転結の、ひとまずの“結”を示すものだ。

 しかし、バンドの物語はまだ終わらない。続いていく。そういう風に僕は思っている。

ヒトリエ BEST ALBUM「4」トレーラー / HITORIE – BEST ALBUM 4 trailer
ヒトリエ BEST ALBUM「4」初回盤収録ライブ映像ダイジェスト / HITORIE – COUNTDOWN JAPAN18/19 Digest Movie

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

ヒトリエ『4』

■リリース情報
ベストアルバム『4』
発売:2020年8月19日(水)
<初回盤(2CD+BD)>
価格:4,500円(税別)
<通常盤(2CD)>
価格:3,000円(税別)
CD 
iTunesプリオーダー

 <CD収録曲>
Disc 1:
1.カラノワレモノ
2.SisterJudy
3.モンタージュガール
4.Inaikara
5.センスレス・ワンダー
6.アンチテーゼ・ジャンクガール
7.踊るマネキン、唄う阿呆
8.(W)HERE
9.インパーフェクション
10.NONSENSE
11.トーキーダンス
12.シャッタードール
13.ワンミーツハー
14.フユノ

Disc 2:
1.リトルクライベイビー
2.イヴステッパー
3.doppel
4.目眩
5.アンノウン・マザーグース
6.絶対的
7.Loveless
8.ポラリス
9.日常と地球の額縁
10.コヨーテエンゴースト
11.SLEEPWALK
12.青
13.ローリンガール 2016.2.18 at下北沢GARDEN
 
BD収録曲:
COUNTDOWN JAPAN 18/19 2018.12.31
M1 踊るマネキン、唄う阿呆
M2 トーキーダンス
M3 アンノウン・マザーグース
M4 ポラリス
M5 センスレス・ワンダー
 
特設サイト:
ヒトリエ ベストアルバム『4』特設サイト

■配信ライブ概要
ヒトリエ BEST ALBUM RELEASE 生配信ライブ “4”
2020年10月5日(月)
入場19:15 開演19:30/終了予定 21:00
ライブ配信時間 90分予定

アーカイブ視聴可能期間:
2020年10月8日23:59まで
※ ライブ配信後にアーカイブ再配信処理を行うため視聴できない時間あり

視聴チケット:
2020年8月18日10時〜2020年10月8日21:00ま で
購入先URL
視聴チケット ¥2,200(税込)

視聴方法:
イープラス「Streaming+」

<ツアー払い戻し>
払戻し期間:8月18日10:00〜9月20日23:59

■イープラスにて購入
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お問合せ:イープラスインフォメーション 

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■チケットぴあにて購入
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「LINEチケットinfo」アカウントより、 チケット持参後(購入者ではない)LINEのトーク上で案内。
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※LINEの公式アカウントは問い合わせフォームへ
アカウント下部の「トークで質問」より問い合わせ

■その他
他プレイガイドやイベンターで購入者は購入元にて払戻しを受付
 
・グッズ販売
受付期間:8月17日21:00〜8月24日 23:59
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