EP『Angel』インタビュー

ちゃんみなが明かす、コロナ状況下で得た“創作活動の気づき”「自分の物差しが壊れていたら何も作れない」

 ちゃんみなが、7月24日に最新EP『Angel』表題曲を配信リリースした。同曲は、エナジードリンクブランド「Monster Energy」の新商品「Monster Ultra Paradise」のタイアップソングを担当。激しく燃え上がる恋模様と夏の情景をイメージさせるサマーチューンに仕上がっている。

ちゃんみな – Angel (Official Music Video)

 ちゃんみなは、新型コロナウイルスによる自粛期間中にすべての創作活動をストップし、自己と向き合う中で“アーティストとしての物差し”を見直したという。その期間を経て完成させた4曲入りの同名EP(9月9日リリース)は、ちゃんみな自身が「今までにないコンセプチュアルな作品」とSNSで述べていたように、“堕天使が地獄へ堕ちる様”がユーモラスな言葉と視点で表現された意欲作となった。

 ちゃんみなは、コロナ自粛期間から現在までのめまぐるしい状況の変化、思うように活動ができない現状をどのように受け止め、自身のクリエイティブと向き合ったのか。『Angel』での新たなアプローチをはじめ、全方位で花開く創作への情熱、そして例を見ない未曾有の事態に得た、創作活動における“気づき”について話を聞いた。(編集部)

自粛期間中は何もしなかったし、何もしたくなかった

ちゃんみな

ーー今作『Angel』は多彩なラブソングが収められた一枚です。収録曲の制作時期はそれぞれいつ頃でしょうか。

ちゃんみな:「Rainy Friday」「Very Nice To Meet You」に関しては去年の11月くらいで、「Angel」「As Hell」は今年の6月頃です。自粛が解除されて一番最初に作ったのが「Angel」ですね。

ーー4月7日から約1カ月半にわたった新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言中は、アーティスト活動はもちろん、私生活にも制限や変化があったかと思います。そんな今まで経験したことのない時間をどのように過ごしていましたか。

ちゃんみな:自粛期間中は何もしなかったし、何もしたくなかったですね。社会が騒がしかったせいもあるんですけど、感情を揺さぶられたくなかったので、映画も観なければ音楽も聴かない、テレビやSNSからも距離を置いていました。私自身も心を休めたいと思っていたので、その時期はクリエイティブな活動も一切しなかったです。(自粛期間の)後半で少し絵を描いたくらいで。

ーーそういう様々なものから距離を取る中で、何かを作ってみようという気持ちが自然と湧いてきた?

ちゃんみな:もともと何か作ろうかっていう話はスタッフの方とも話していて。シングルを出そうとなった時に曲自体はストックがあったんですけど、私から新しい曲を作らせてほしいとお願いして「Angel」を作ったんです。歌詞を書くのも本当に久々でしたね。半年ぶりくらいかな。予想してなかった曲ができて、自分でも驚いています。

ーー曲を作ることで、見えてきたものがあったと?

ちゃんみな:そうですね。私にとってのチャージの時間だったと思います。今振り返ると、必要な時間だったなって。自分には何が大切で何が大切じゃないのか、会いたい人は誰なのか、克服できないもの、絶対に許せないものは何なのか。そういうこととしっかり向き合えたと思っています。

ーーそこで浮かんだ大切なものとは何でしょうか。

ちゃんみな:自分の中にある“物差し”ですね。測って、線を引いてっていう物作りのもとになる道具なので、自分の物差しが壊れていたら何も測れないし、何も作れない。私は「自分の物差しだよね」っていう言葉が良い言葉だと思っていて、逆に自分の物差しがない人ほど「自分の物差しでものを言うよね」って他者に言うと思うんです。だからこそ、その物差しをちゃんとメンテナンスする必要があるんだなって。

この作品はすごく散らかっていても、心地いい

ーーなるほど。今回の4曲はちゃんみなさんの“物差し”が伝わる内容ではないかと思います。ご自身もInstagramで投稿していたように、4曲すべてが繋がりを持つコンセプチュアルな作品でもありますね。

ちゃんみな:最初から最後まで繋がっているのは、一つの感情を一曲で整理しなかったがゆえだと思います。ひとつの出来事や関係性をモチーフに、様々な角度から見ているというか。それに“堕天使”が作品全体のテーマになっているので、1曲目からラストまでだんだん地獄に堕ちていくような物語にもなっていますね。

ーーその中でもリードトラック「Angel」が作品全体を示すダイジェスト的な楽曲になっていると思いました。Angel=堕天使というキーワードを軸に、恋愛にまつわるディープな感情が描かれていますが、これまでの作品と同様に実体験をベースに制作したのですか?

ちゃんみな:基本的にはノンフィクションです。ただ、今までの楽曲は割と俯瞰的な視点、監督の目線に近かったんですけど、今回はプレイヤー=当事者寄りの視点で作りました。

ーー監督視点からプレイヤー視点へと変化したと。

ちゃんみな:これまでは一つの出来事が終わって、それを一つの感情に落とし込んでから歌詞やメロディを考えていたんですけど、今回は自分が出来事の中心にいて、その周りで起こる事件を追っていくような感覚でした。正直、なんでこういう曲になったのかは、自分でもわからないんです。ただ、今回はプレイヤーにならざるを得なかったという理由もありますし、あと今までは寄りすぎて周りが見えなくなる感覚がイヤだったんですけど、そういうアート表現もアリだなって思えるようになったからですかね。クローズアップし過ぎて理解できない作品も、自分が引いていくことで楽しめるようになったと思います。

ーー作っていく中で、色んな感情がどんどん湧き上がってくるみたいな?

ちゃんみな:例えば、私からさよならを言いたいとか、誰かから言われたいとかではなくて、ただその渦中にある感情を表現した感じです。発狂に近くて、怒鳴っている感覚。まさに喧嘩の中にいる時の感情の爆発に近いですね。

ーー当事者だからこそ整理できないような感覚でしょうか。〈嗚呼あなたの涙を忘れません/まだ私の心はありますか?〉と歌う「Angel」は、別れの曲にも聴こえますが、そうではない高揚感も同時に伝わってきます。

ちゃんみな:プリプロを録った段階で歌詞をブワーって書いたんですけど、曲ができた時は自分でも少し意味がわからないかもしれないなと思いましたし、そこで書き直すこともできたんです。でも、考え抜いて書かれた歌詞よりも、感情が整理できていない言葉の方が伝わるものもあると思って。頭の中がごちゃごちゃしている感じとか、むき出しの感情は言葉で表現しきれないので、このままでいこう、と。別れを示唆する直接的な言葉はなくて、むしろ〈2人血が繋がる〉〈心を込めて愛をしましょう〉という別れとは逆の歌詞が並んでるんですけど、全体としては別れの歌にも聴こえる。その真逆な感じが面白いなって思います。

ーー今回、これまでとは異なるアプローチをしたことで、ご自身の中で何か新しい発見はありましたか。

ちゃんみな:本当は私、散らかっている状態って嫌いなんです。でも、この作品はすごく散らかっていても、心地いいって思えたんですよね。部屋が散らかる時は心も荒れていると言いますけど、その状態の部屋が心地良いこともあると思うんです。その感覚に近いですね。今は散らかったままでいたいかもっていう。

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