BiSH、個性的なメンバーと“変わらない軸”が魅力に WACK所属グループの特性を分析

 7月8日にBiSHが初のベストアルバム『FOR LiVE -BiSH BEST-』を発売した。5年間の歴史を振り返るように27曲が収録された集大成的な作品だ。アルバムによるエイベックスとWACKの収益は過去にBiSHがワンマンライブや自主企画を行った全国のライブハウスに全額寄付される。今までグループを育ててくれたライブハウスへの恩返しの意味と、新型コロナの影響を受けて苦しい状況になった大切な場所を救うという意味が込められたリリースだと感じる。

 メジャーデビュー以降は「楽器の持たないパンクバンド」をキャッチフレーズに活動してきた。ライブでの魂のこもった全力のパフォーマンスとファンの熱気は、そのキャッチコッピーを体現し続けており、それによって人気と評価を獲得してきた。最近はテレビ出演が増えているものの、彼女たちはあくまでライブハウス出身なのだ。

BiSH / ALL YOU NEED IS LOVE [Thank you for KiND PEOPLE FREE LiVE in Matsuyama] at WstudioRED

 ライブの魅力だけでなく、エモーショナルなロックサウンドであったり、破天荒なプロモーションも人気を獲得した理由に思う。そして個性的なメンバーの魅力も多くのファンを獲得した理由だ。

 歌唱とダンスでグループを引っ張っているのはアイナ・ジ・エンドだ。彼女の特徴のあるハスキーボイスは一度聴けば忘れられない。何かに憑依されたかのように、歌に感情を込めて歌う姿や表情に引き込まれる。もともとダンサー志望であったことを活かして振付を担当していることも彼女の凄い部分だ。メンバーの動きの特徴や癖を把握していることに加え、ステージの低いライブハウスでもダンスが見えるようにと上半身を大きく動かす振付をしている。それでいてファンが一緒に踊れるようにシンプルで真似しやすいのに印象に残る動きを心掛けているようだ。プロの振付師とは異なる、実際にステージに立つメンバーだからこそ考えることができる視点のように思う。

 セントチヒロ・チッチも初期からアイナと共にパフォーマンス面で引っ張ってきた。透き通って真っ直ぐな歌声はアイナのハスキーボイスとは対照的で、2人が組み合わさることで化学反応が起きている。また彼女自身が銀杏BOYZなどロックバンドのファンであり、その魂を受け継いだような感情的なパフォーマンスはまさに「パンク」だ。作詞した「Story Brighter」では〈このままで諦めたらだめだよ/my story〉と歌詞を綴り、「ろっくんろおるのかみさま」ではロックへの想いを歌詞にしている。「パンクバンド」としての精神はチッチがメンバーで最も強い。

 モモコグミカンパニーも楽曲制作面で才能を発揮する重要で必要不可欠なメンバーだ。彼女はメンバー内で最も多くの作詞をしている。詩的な表現と伝わりやすく優しい表現をバランスよく組み合わせ、想いが真っ直ぐ伝わる歌詞を書く。「KNAVE」では〈愛も変わらず〉と〈相も変わらず〉と同じ発音で言葉を変えることで意味が変わるフレーズを書いたりと、テクニカルな作詞ができることも魅力だ。「summertime」では英語での作詞に挑戦したりと、彼女のセンスや才能はBiSHの音楽性の幅を広げることに大きく貢献している。

 リンリンの作詞センスが優れていることも忘れてはならない。内面を吐露する生々しくも真っ直ぐで感情が伝わってくる歌詞が多い。特にライブ定番曲で人気曲の「beautifulさ」の〈どんなとげとげな日でも/息してれば 明日は来るんだし〉というフレーズは多くの人に力を与えている。また、声が枯れるほどにシャウトするなどパフォーマンスでも生々しく感情を爆発させている。こうした彼女の歌詞やパフォーマンスには生き様が表れているようだ。

BiSH / beautifulさ [NEW HATEFUL KiND TOUR]@NHKホール

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