日向坂46、DISH//、3時のヒロイン……MTV「#AloneTogether」が広げたアーティストや著名人と音楽の繋がり

 緊急事態宣言が5月末に全国で解除され、見慣れた光景が徐々に取り戻されつつある昨今。我々を取り巻く音楽事情といえば、無観客での生ライブ配信といった新たな試みが広がる一方で、やはり人と人とがリアルな場所に集い、音楽を通して心を“繋げる”のには、まだまだ時間を要しそうだ。

 そんな状況下で、MTVが主催している企画が「#AloneTogether」である。同企画には、様々なアーティストをはじめ、タレントや俳優、さらにはスポーツ選手からお笑い芸人までもが幅広く参加。「一緒にひとりを楽しもう!」というメッセージの下、それぞれが10曲前後のオリジナルプレイリストを公開している。

 企画参加者と彼らのプレイリストをざっとなぞると、シンガーソングライターの枠組みでは、自身のルーツに迫る楽曲を選んだAAAMYYYから、「Home party with eill」を掲げたeill、「昼下がり揺れるカーテンとともにコーヒーを飲みながら」と、そのシチュエーションが今にも見えてきそうなDAOKOまで、各々が“おうち時間”の楽しみ方を提案してくれている。

 またバンド枠では、橘柊生(DISH//)が「作業妨害プレイリスト」として、BIMやSIRUP、iriといったヒップホップジャンルが目立つ今の若者観に満ちたラインナップを発表。辻村勇太(BLUE ENCOUNT)は、タイトルに「心が綺麗になれる曲10選」を掲げながらも、あまりにバイブスが溢れすぎたためか、なぜか11曲まで枠をはみ出すなど、相変わらずの彼ららしい、エンターテイナーな“お約束”に脱帽だ。

 そして特に注目されたのが、乃木坂46、欅坂46、日向坂46による“坂道シリーズ”。欅坂46と日向坂46からは、まだ加入間もない新メンバーも参加しており、その選曲も気になるところ。そんな彼女たちがグループ別に公開したプレイリストには、秋元真夏(乃木坂46)が挙げた「きっかけ」など、それぞれの歴史を語る上で欠かせない楽曲のほか、メンバーがブログやラジオ番組などで紹介していたアーティストの名前も。ほかにも、松村沙友理(乃木坂46)が放課後ティータイム「いちばんいっぱい」、宮田愛萌(日向坂46)がゆいかおり「Promise You!!」を挙げるなど、根強いアニソン/声優楽曲リスナーとしての表情が垣間見れた点も面白い。

 そんな坂道シリーズについては、これほど多くのメンバーが、ここまでまとまった形で個人のレコメンドソングを公開する例は非常に珍しく、今回の「#AloneTogether」企画全体を通じたコンテンツの充実ぶりをまさに示している。また、詳細は後述するが、リスナーはこのプレイリストを基に、メンバーのパーソナリティがこれまで以上に気になり、形式はどうあれ、本人たちともっとコミュニケーションを取りたくなったのではないだろうか。

 その想いは、浜崎あゆみをモデルとしたドラマ『M 愛すべき人がいて』で一躍に話題となった女優/シンガーの安斉かれん、“ぐっさん”の愛称で親しまれる山口智充や3時のヒロインといったお笑い芸人などにも通ずるのではないか。普段こそ、彼らの姿をテレビで観るのがほとんどだが、今回のプレイリストが、彼らの人となりをイメージする上で有効なキーアイテムになり得るはず。音楽によって、相手との思わぬ共通点を見つけられるほか、各人のプレイリストの曲順などにも、曲と曲の間にその人だけのエピソードや関連する感情が秘められているに違いない。これまでと違った角度で、彼らと“繋がる”のはいかがだろうか。

 さらに、元女子バレーボール日本代表選手の迫田さおりが、現役時代に聴いていた楽曲、プロクライマーの大場美和が、自身の忘れられない楽曲をまとめていたりと、上記の“繋がり”は無論、スポーツ選手にも例外ではない。特に、迫田が紹介している楽曲は、おそらく当時の試合前にも聴いていたのだろう。GReeeeN「Green boys」やケツメイシ「僕らのために...」といった、自分の優しさを育み、誰かに寄り添えるような温かい楽曲揃いである。

 今回の外出自粛期間を通して、自宅で音楽を聴く時間が長くなった人もいるだろう。前述した通り、音楽はその人の人生やその時々で芽生えた感情と強く結びつくなど、いわば道標のような役割を担うこともある。一人で音楽を聴く行為は、ともすれば孤独に思えるかもしれないが、それは自分自身と向き合いながら、時には己を励ます意味合いもあるだろう。そんな大切な音楽を、今回のようにプレイリスト形式で他者と共有することは、リアルな対面が叶わずとも、誰かを深く知り、誰かと“繋がる”きっかけになるのは、もはや言うまでもない。

 また、アーティストだけでなく、あらゆる領域の著名人が参加していることにも、“音楽に垣根はない”と改めて証明する意義があったに違いない。企画参加者の多さから、本稿ではごく少数のプレイリストを抜粋した上、簡単な紹介のみに留めてしまった。だからこそ、ぜひ気になるタイトルのプレイリストを、自分なりに深掘りしながら聴いてみてほしい。

 「#AloneTogether」には、今後も様々なアーティストや著名人のプレイリストが追加されるそうだ。夏フェスなどへの参加も難しい今日だからこそ、“一緒にひとりを楽しむ”ことで、緩やかな時間の流れる一夏を過ごしてみても悪くはないのかもしれない。

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