ゴールデンボンバー 鬼龍院翔が語る、変わらぬスタンスと理想のリーダー像「こんな状況でもたくましく活動できるって思いたい」

 自分が映り込みながらも1時間一言も話さない「癒し&安眠のための焚き火動画」や「癒し&安眠のための川のせせらぎ動画」、さらに10時間ひたすら羊を数える「安眠&不安な夜のために朝まで羊を9千匹数える動画」など、現在ライブ活動が制限されている中で新たな試みを続けるゴールデンボンバー・鬼龍院翔。そんな鬼龍院の思考法を紐解くインタビュー前編では、こうした動画を投稿した背景や、今感じている課題について聞いた。後編では、自身のこだわりや海外に対する思いの変化、理想のリーダー像などをじっくりと語ってもらった。(編集部)

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世界のことを知っていれば、今の状況でもなにか違ったことができたかも

ーーゴールデンボンバーとして、思うような活動ができない状況ですが、鬼龍院さんご自身は、今後どのような活動を考えているのでしょうか。先日、Twitterで自宅のクローゼットを改造したレコーディング設備を公開されていましたが。

鬼龍院翔(以下、鬼龍院):今の状況的にも、社会的にも、やってはいけないことが「ライブ活動」じゃないですか。これまでは「僕の人生はライブがあればいいのだ」ってくらいの勢いだったけれど、今はそこから人生の喜びを得ることができない。でも、そこで「ライブやりたいよ~」と嘆いていても仕方ない。では、僕はライブ以外で何に快感をおぼえるのか? それを探るところからはじめたんです。

ーーそうだったんですか。

鬼龍院:それはなかなか大変なことで、例えば、「やりたいことが見つからないんです、どうしたらいいんですか?」みたいな相談って、学生さんにはよくある話じゃないですか。僕は、運良くバンド活動やライブ活動を見つけることができたから、活発な人生を送れていた。つまり今の僕は、言うなればそういった学生さんと同じ状態になっていると思うんです。だから、何をすることが、自分にとっての人生の快感、喜びになるなのかを改めて探すことが、大きな命題になってしまった。こういう時は、根本に立ち返るべきなんでしょうね。

ーー「根本」とは。

鬼龍院:僕は目立ちたがり屋で、驚かせたがり屋で、音楽……とくに90年代のJ-POPが好きでヴィジュアル系も好き。そういった要素が入った、ライブ以外の「なにか」を、自宅にいながらもウェブ上で発信して、みんなが驚いて喜んでくれる。それを見つけることができたら、きっと僕はライブほどじゃないけど、満たされると思ったんです。そこで歌を録るマイクや設備が必要だと思ったんですね。今のところは、大声出しても苦情が来ていないので大丈夫かな。というか、そもそも今まで家の設備を揃えなすぎたんですよ。

ーーミュージシャンの方は、自宅にスタジオ、あるいはスタジオ並の設備を持っている方も多いですよね。

鬼龍院:僕の場合、家に防音室や良い機材を置いてしまったら、曲を作らなくなってしまうんじゃないかという危惧があるんです。手元には安いギターと、安いカシオのキーボード、そして紙とペンだけあればいい。それでいい曲を作ったらすげえじゃん、みたいな。そんな感じで生きてきたんですよ。

ーー設備を完璧にすると、満足してしまうということでしょうか?

鬼龍院:満足するというよりは、「安い機材で良い曲を作ったらかっこいい」というか(笑)。Twitterで公開した設備も、すごく安上がりなんです。マイクスタンドも、Amazonで半日くらい値段を見ますからね。少しでも安く手に入れたい。プロなんだから良いものを使えよって話なんですけど、どうしてもそれはやめられないですね。

ーーそれに半日かけるのであれば、鬼龍院さんの時給に換算したら、明らかに「損」な気がしますが、それは「こだわり」であると。という話はさておき、そのスタンスは今の状況になっても変わらない、と。

鬼龍院:変わらないですね。こんな大変な状況になって、世の中の価値観も大きく変わるかもしれないというのに。なんでこうなんだろうなぁ~。きっと、安い機材で面白いことをすることが、自分への自信につながるというか、僕はこんな状況でも、たくましく活動できるって思いたいんでしょうね。

ーーゴールデンボンバー、鬼龍院さんの根幹には、低予算でも誰も見たことがないエンターテインメントを作ることができるぞ、というマインドがあるように思います。

鬼龍院:そこは、貧乏時代から、世界が大変なことになっても、変わらないんですね。自分自身の価値観の変化はあまり感じていないけれど、少し変わったこともありますね。

ーーそうなんですか。

鬼龍院:もっと海外に興味を持つべきだった、世界のことを知っておくべきだったと感じています。日本でしか暮らしたことがないので、こういう状況でも日本のことしか目に入らない。世界のことを知っていれば、もう少し色々な視点で物事を見ることができるようになっていれば、今の状況でも、なにか違ったことができたかもしれない。

 日本の音楽が好き、日本のお笑いが好きで、今までは日本にしか興味がなかったというか、他の国のことにはあまり興味がなかった。今回のことでそこの価値観が大きく変えられました。他の国のことも知っておくべきだった。それは強く感じてます。

ーー他の国の価値観を知ることで、別の発想ができたかもしれない、と。

鬼龍院:不安になってしまっているファンの方や、家族に対して、何か不安を軽くできるような文化の話もできたかもしれない。日本で今起きていることを、他の国と比較して、「ここがおかしい」「ここは大丈夫」とか、もっと冷静に見つめることができたかもしれない。

 とにかく、発想の面でも、誰かを安心させる意味でも、別の文化を知っておくことは大事だと思いました。旅行はしている方ではあるんですが、それもだいたい2泊3日くらいだったんですよね。それだと生活や文化のことはわからない。

ーーそれは「観光」ですよね。観光も楽しいし、大事ですけど。

鬼龍院:以前、お世話になっている先輩が「GPS理論」という話をされていて。GPSって、1つの点だけだとダメで、3つの点がないと、自分の位置情報を割り出せないそうなんです。その原理を応用した考え方で、3つの国や都市に拠点を持つ、住んだ経験を持っているべきだと。当時の僕は、その話を聞いて「なるほどな~」と、なんとなく捉えていたんですけど、今になって「こういうことか」と、実感しています。観光を味わうのではなく、文化を味わうことをやっておきたかった。そこは少し後悔がありますね。またいつか、海外旅行をすることができるようになったのなら、よりたくましいリーダーになるためにも、そんな知識を身につけたいですね。

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