星野源「うちで踊ろう」はなぜ一大ムーブメントとなったのか? 3つのポイントから考察
星野源がInstagramに投稿した「うちで踊ろう」が大きなムーブメントを巻き起こしている。
ことの発端は4月2日の深夜、星野源が自身のアカウントに投稿した約1分ほどの弾き語り動画から始まった。動画には「家でじっとしていたらこんな曲ができました」「誰か、この動画に楽器の伴奏やコーラスやダンスを重ねてくれないかな?」との文言が添えられ、フォロワーに投稿への参加を呼びかけた。すると瞬く間にハッシュタグ「#うちで踊ろう」に国内外問わず自作の動画が投稿されていく。
投稿された動画はコーラスを重ねたものから、歌に合わせて踊るものまでさまざま。すぐにこの動きは他のSNSへも波及し、TwitterやTikTok、YouTubeといったサービスでも見られるようになる。著名人の投稿も相次ぎ、もはや社会現象と呼べる規模にまで膨れ上がった。
こうした状況を受けて彼は7日深夜、自身のラジオ『星野源のオールナイトニッポン』でこの動画を投稿した経緯について語った。
「家にいましょうとか、外に出るなということではない曲を作りたいと思ったんです」
「家の中で楽しくなれる、面白がれる”仕組み”を作りたいなと思って。そういう”仕組み”を作りたいという気持ちと、歌を作りたいなという気持ちをドッキングさせて、そのどっちも出来るようにしたのが『うちで踊ろう』という曲」
今回の投稿に対する反響はInstagramだけでも3日で1万の投稿を超え、その勢いは日に日に加速している。
2020年の音楽業界における最大のトレンドになりつつある「うちで踊ろう」。なぜここまで大きな広がりを生み出せたのか、いくつかのポイントを整理しておきたい。
(1)誰でも参加できる”敷居の低さ”
「歌とかコーラスとか、音とか好きに重ねて下さい。ダンスでもいいし、イラスト化してもいいし、アニメを重ねてもいいし、この動画を好きに使ってほしい」(同ラジオ番組より)
と本人が言うように、なにかを”重ねる”という行為は誰もが可能なアクションだ。加えて、許可も連絡も不要とあらば、多くの人びとが気軽に参加できる。なんなら自撮りを貼り付けるだけでもいい。その”敷居の低さ”が参加意識を高めたのだろう。
昨今注目されているVTuberからもバーチャルセッションと称した投稿が続いているようだ(参考:MoguLive)。“歌ってみた”や“踊ってみた”風に言えば、この企画はいわば”重ねてみた”。その方法は無限大である。
(2)”自粛”のイメージを覆すポジティブなコンセプト
今回の新型コロナウイルスによって人びとに要請されている”外出自粛”。この”自粛”という言葉は、ともすれば”我慢”や”節約”といったある種の修行のようなイメージに結び付きかねない。しかし、そうした”自粛”にまとわりつく辛いイメージを「うちで踊ろう」は見事に払拭する。
「家にいても、どれだけ離れていても、僕らはこういう風に面白がれるという仕組みになるんじゃないか」
「病院関係者の方とかが、朝仕事に出てヘトヘトで夜帰ったときに、素敵なアレンジが上がっていたらその時間を楽しみに出来るだろうし」
「それこそずっと家にいる人たちは、”いま”、”ここ”で、みんなと一緒に自分が思う面白いことをやれると思った」
家にいても面白いことができるというこうしたポジティブなコンセプトこそが、多くの人びとを呼び込んだように思う。おそらくこれがもし、”外に出るな”という強いメッセージソングだったとしたら、ここまでの規模には至らなかっただろう。まさに発想の転換と言ったところだ。