skillkills、tricot、ZAZEN BOYS、54-71、MIYAVI......独自のリズムで日本のロックを更新してきた者たち
リズムに抗った先駆者たち
たとえば、54-71。ヘヴィなリフにラップというスタイルが主流だった90年代ミクスチャーロックの中で、隙間だらけのアンサンブルに一切の贅肉を削ぎ落としたシンプルでストイックなリズムと、極東を感じさせる奇天烈なボーカルが乗る異色のバンドだった。バスドラム、スネア、ハイハットという必要最低限のセットでリズムを刻んでいたbobo(Dr)はのちに、これまたロック界の異端児・MIYAVIとともに日本のリズムを更新していく。
向井秀徳という奇才も忘れてはならない。読経的でもあり落語的でもある、語り部というべきあの特異な節回しの歌と一体化したギター。ニール・ヤングや長渕剛といった、強烈な歌を歌うシンガーだからこそ生み出される独特のタイム感のギターストロークとカッティングを、自分のオリジナリティに昇華させた。
ZAZEN BOYSはそんな向井に寄り添い、絡みつくようなアンサンブルを持ったバンドだ。かのFreeのベーシスト、アンディ・フレイザーはバスドラムの軸から微妙にズラす“タメ”で魅了したが、ZAZEN BOYSは全員が絶妙な“ズレ”と“タメ”で聴く者を錯乱させていくのである。
さらにリズムを更新していくバンド
現在、リズムを更新しているバンドはまだまだいる。不条理を抉っていく不安定なボーカルながらも、無駄のないシンプルなリズムが淡々と気持ちよく響くトリプルファイヤー。ハードコア、テクノ、ニューレイヴからトライバルの薫りまで漂わせる“スサシ”こと、SPARK!!SOUND!!SHOW!!はごった煮のミクスチャーながらも、日本のロックバンドらしいわかりやすさを持ったバンドだ。ボスニアをはじめとした世界各国の民族音楽を、“ウンザウンザ”とかき鳴らすバックドロップシンデレラは、今やフェスを中心としたライブシーンに欠かせない存在となっている。
こうしたリズムを自在に操っていくバンドに共通すること、それは“間合い”である。各楽器、音と音との“間”。音圧や重低音、音数の多さ……隙間を埋めていく派手なサウンドメイクが持て囃される中、あえて隙間を作っていく。それがグルーブとなり、心地良さになるのだ。弾かない鳴らさないカッコよさ、引き算の美学である。人間がいちばんリズムを感じ取ることが出来るのは、音が鳴っていない瞬間なのかもしれない。
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/Twitter