『B.PチャンネルFes.』イベントレポート

ヴィジュアル系バンド×YouTuber『B.PチャンネルFes.』、成功の秘密は? イベントから感じた未来への可能性

 ヴィジュアル系バンドとYouTuberのフェスという、新しい音楽の楽しみ方が実現した。2019年11月7日、幕張メッセイベントホールで開催された『B.PチャンネルFes.』である。

 同イベントは、己龍、Royz、コドモドラゴン、BabyKingdomなどヴィジュアル系バンドが所属する事務所・B.P.RECORDS(以下、B.P.R)が主催し、ゲストにはNon Stop Rabbit、夕闇に誘いし漆黒の天使達や、YouTuber・ヴァンビが以前活動していたヴィジュアル系バンド・LOG-ログ-、そしてヴィジュアル系エアーバンド・ゴールデンボンバーを迎えた。今回が初開催となったフェスは多くの観客を集め、成功をおさめた。その秘密がどこにあったのか、当日の様子を振り返っていきたい。

 ステージは「開会宣言」からスタート。舞台上のスクリーンに映し出されたのは、今日この日を迎えるまでのB.P.RECORDSチャンネルの歩み。B.P.RECORDSチャンネルとは、B.P.R所属バンドによるYouTubeチャンネルだ。これまでは主に各バンドのMVなど音楽活動にまつわる動画が公開されていたが、2018年11月からは「自分達に興味を持ってもらう」ことを目的とし、いわゆる“YouTuber"として動画が配信されるようになった。そこから1年間、毎日動画配信することを目標とし、そのひとつの集大成として今回のフェスを開催することもB.P.RECORDSチャンネルの動画で発表されたのであった。

B.P.Rを代表して黒崎眞弥からの重大発表

 映像が終わると、B.P.R所属バンドのボーカル4名が楽屋から生中継で登場し、己龍の九条武政(Gt)が“仕事"としてスタッフとトランプに興じている場面も映されつつ、開幕を宣言。トップバッターであるLOG-ログ-による動画へとつなげた。各出演者が登場する前に流れた動画は、YouTuberが多く集まるこのフェスならではの演出で、出演者のことを知らなくても、自己紹介、導入としての効果があったように思う。ライブパフォーマンスを披露するだけに留まるわけにはいかない、という主催者側の意思も感じられた。

 動画では、ヴァンビによる人気YouTubeチャンネル「ヴァンゆんチャンネル」さながらにLOG-ログ-のメンバーが「モッツァレラチーズゲーム」を実行。動画が終わると程なくしてメンバーがステージに登場し、ライブスタート。ヴァンビが「V・A・M・B・I! どうも! ヴァンビです! いや、今日は、L・O・G! LOG-ログ-だ!」と叫ぶと、一日限定復活の彼らを待ち焦がれたオーディエンスがグッズのリングをキラキラ輝かせながら飛び跳ねる。「Adore you~キミヲ想フ声~」「PEACH SAMURAI」といったエレクトロでポップな楽曲を披露し、サポートの己龍・遠海准司(Dr)も含めメンバー全員で笑い合いながらステージを進めていった。まっすぐ前を見つめ真剣に歌いながらも、「何が起こるかわかんないね、人生!」「今日はどんな経験も経験値になるから!」と、彼が身を以て感じてきたであろうリアルな言葉を伝えながら、奇跡の再演を果たした。

 LOG-ログ-のステージが終わると、すかさず己龍の酒井参輝(Gt)、九条、遠海がMCとして登場。出番を終えたばかりの出演者にインタビューし、終わるとすぐに次の出演者の制作した動画が始まる、という流れに。結果として、このフェスにおいて何も催しがない時間は各出演者間で5分前後しかなかったのである。オーディエンスを飽きさせない、時間の限り楽しませようとする心意気が感じられた。そして、分刻みの厳しいタイムスケジュールの中でも、最後までほぼタイムテーブルどおりに進行していたことも同時にお伝えしておきたい。

 次に登場したのはB.P.R所属バンド・BabyKingdom。“MUSIC THEME PARK”をコンセプトに活動しているだけあり、「MUDDY CANDLE」「大阪ちんぷんかんぷんROCK」など、テーマがピンポイントでコンセプチュアルな楽曲ばかり。そこに咲吾(Vo)の嬉々とした歌声が乗り、オーディエンスはテーマに合わせた振り付けでライブに参加する。「カマッチャイナ!」では、他の出演者も大勢登場し、ステージを全力で走り抜け、踊り、まるでお祭り騒ぎ。大型フェスならではの愉快な光景を見せてくれた。

 続いてはYouTuberバンド・Non Stop Rabbit。彼らは一体どれだけ“キャッチーなメロディ"の引き出しを持っているのか。そして矢野晴人(Vo/Ba)の歌声の素直さや純粋さたるや。その連続攻撃にただただ引き込まれるオーディエンスも多かった。MCでは、ゲストバンドとしてホームのオーディエンス(B.P.Rのファン)に対し「仲良くなるには差し入れが必要」と、田口達也(Gt/Cho)が客席にお菓子を投げ楽しませるシーンも。その他、“Twitterでバズった曲”として「いけないんだ、いけないんだ」を披露するなど、彼らのまっすぐなパフォーマンスに、心が浄化されたような感覚を得た。

 一方、コドモドラゴンはハヤト(Vo)が「やっとヴィジュアル系っぽい気持ち悪いの出てきたでしょ」と自虐するほど、スクリームや楽曲の激しさ、速さでこれまでの流れの全てをかっさらってしまう。「棘」から「RIGHT EVIL」まで、盛り上がるしかない楽曲達を武器に最初から最後までかっこよさ、強さを叩きつけていった。

 彼らに客席が圧倒された後に登場したのは、夕闇に誘いし漆黒の天使達。ヴィジュアル系と思われそうなバンド名だが、実態は“神奈川厚木発コミック系ラウドバンド”。この日のためにヴィジュアル系メイクを施したメンバーをよそに、千葉(Gt)は"V違い"のピーマン(=Vegetable)姿で登場。「はたらく君に贈る歌」では小柳(Vo)によるフリップ芸や、運転手のジェスチャー(顔の表情と右折時、左折時の動作が秀逸)など、あの手この手で笑わせる。「ウォウウォウイェイイェイ酒ナイト」では他の出演者が大勢登場し〈テキーラ ジン ウォッカ ウォウウォウイェイ〉の歌詞に合わせて全力ダンス。ワンマンかと錯覚するほどの一体感とひとつの到達点を見た。

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