BABYMETAL、米ビルボード躍進は現地レーベル設立の成果 最新作に感じた原点回帰と冒険心
BABYMETALが3rdアルバム『METAL GALAXY』を、10月11日に世界同時リリースした。前作、2016年4月1日にリリースされた2ndアルバム『METAL RESISTANCE』から、じつに約3年半ぶりとなった最新盤。その間、いくつかの収録曲はデジタル配信されていたが、道中ではYUIMETALの脱退を受けた体制の変化もあり、ライブを軸に先行きを見守り続けていたファンにとっては待望のアルバムとなった。
ひとたび聴いてみたところ、率直に浮かんできたのは“何じゃコレ!?”という感想。メタルと身がまえて聴いても、BABYMETALの最新盤と身がまえて聴いても、いいようのない肩透かしを食らったのが本音ではあるものの、全編を通して「BABYMETALの“今”が凝縮されている」と、思わず納得せざるをえない仕上がりとなっていた。
ビルボードで日本人最高位を獲得
本作の発売日には『BABYMETAL METAL GALAXY WORLD TOUR LIVE AT THE FORUM』と題して、自身初となるアメリカでのアリーナ公演をロサンゼルス・The Forumで達成したBABYMETAL。9月から10月にかけて20都市を巡った全米ツアーの一環として実現した大舞台となったが、海外でのアリーナ公演はアルバムと同じく約3年半ぶりで、2016年4月2日に行われたイギリスのウェンブリー・アリーナ公演以来の2度目となった。
また、3rdアルバム『METAL GALAXY』はその後、アメリカの音楽チャート・ビルボードにおけるアルバム総合チャート「Billboard TOP 200」(10月21日付)で、日本人史上最高位となる13位を獲得したのも広く話題を集めた。歴史をたどれば、1969年に坂本九が記録した14位を56年ぶりに更新。日本人女性アーティストとしては、初めての快挙だった。
2014年3月に日本武道館で2日間にわたり行われた公演を境にして、活動の軸足を海外へ向け始めたBABYMETAL。以降、国内外を問わず支持を獲得してきたが、今回の結果は前作にあたる『METAL RESISTANCE』が同チャートで記録した39位も大幅に上回り、アメリカでのさらなるファン層の拡大を印象づけるものにもなった。
要因はさまざまに考えられるが、大きな分岐点に位置づけられるのは、2018年5月に彼女たちの名前を冠したレーベル<BABYMETAL RECORDS>がアメリカで設立されたことである。
これによりBABYMETAL側は、SlipknotやMegadethらのマネジメントを手がける<5B Artist Management & Records>とパートナーシップを結び、さらに、Marilyn MansonやTHE PRODIGYのリリースを手がけ、ロンドンやメルボルン、ニューヨークに拠点を持つ<Cooking Vinyl>と連携した。
当時、海外のハードロック/メタル事情に詳しいライター・西廣智一氏が弊サイトに寄せた解説によれば、先述の2社は「メタルやハードロックを中心としているレーベル・マネジメントではなく、いずれもミクスチャーといっていいモダンな音楽性を持ったアーティストをバックアップしている会社」であり、さらに、所属するアーティストも「ポップスを意識しつつ、真の部分はメタル/ラウド/パンク的なスピリットや音楽性があるというのが特徴」であるため、BABYMETALもその系譜にあったと考えるのが自然だ。(参照:BABYMETAL、なぜ新レーベル設立? 5B&Cooking Vinylとタッグ組んだ背景を考える)
同じ所属事務所であるアミューズのONE OK ROCKが、2016年9月にワーナーミュージック傘下であるアメリカのレーベル<Fueled by Ramen>に移籍して海外戦略をより強化した先行事例もあったが、イギリスやドイツをはじめとしたヨーロッパに続き、現地での強力なバックアップを受けてより広く認知を高めていったとみるべきだろう。