Perfumeの登場、BABYMETAL世界的なヒット……「楽曲派」アイドル誕生から現在に至るまで

3.「ロック」を掲げるアイドル~ライブアイドルシーンの活況

 「ロック」的なアイドルソングは、1970年代に宇崎竜童が山口百恵に提供した楽曲に端を発し、それ以降も途切れることなく数多く作られてきたものです。しかし、アイドル自身が自ら明確に「ロック」を掲げてそれをコンセプトとして活動を行った事例は、少なくともメディアに乗るレベルとしては、ハロー!プロジェクトのユニットBuono!がそのロック調の楽曲から「ガールズロックユニット」を名乗り始めたことに端を発します。デビュー1周年のファンクラブ限定ライブを、所属のハロー!プロジェクト内のみならず、当時はアイドル界全体の中でも珍しかった生バンド形式で行って以降、その方針はより強固なものになっていきます。

 2009年にデビューしたぱすぽ☆(後にPASSPO☆)も「ガールズロックユニット」と名乗りましたが、両者の共通点はアイドル運営としては比較的潤沢な資金を持った大手事務所の所属だった点。特別なライブでない限りバックトラックはカラオケだったとはいえ、テクノ型のユニットとは異なり少なくともレコーディングにあたってはバンドのメンバーも時間をかけたレコーディングも必要なこのスタイルは大手でないと難しかったのかもしれません。

 最初にインディーズで「ロック」をスタイルに掲げた例で『TOKYO IDOL FESTIVAL』出演レベルまで初めてたどり着いたアイドルは、名古屋を拠点に活動していたしず風&絆~KIZUNA~。元々はしず風と絆~KIZUNA~、別々に活動していたものが2011年に「アイドルとロックの融合」をめざす「Iロック」の活動を開始し、翌年には2グループが合体してひとつのグループとしての活動を開始します。これは所属事務所の社長の強い意向によって開始されたスタイルですが、生バンドの演奏+80年代バンドのカバーを中心としたステージで熱心なファンを生み出しました。

 2010年にはBiSがデビュー。元々「ニューエイジロックアイコン」の肩書きでシンガーとして活動していたプー・ルイの発案のもとに結成されたグループのため、デビューからロック寄りの楽曲で活動を開始、その常識外れなプロモーション手法もある意味「ロック」的に見えるものでした。松隈ケンタの手によるその楽曲の方向性は、以降もBiSHをはじめとしたWACKの各グループに受け継がれています。

 それ以降、あゆみくりかまき、ベイビーレイズ(後にベイビーレイズJAPAN)、偶想Drop、ひめキュンフルーツ缶等多くのグループが、「ロック」を掲げたり、ロック的な楽曲を中心に活動を行うようになりました。

 AKB48のブレイク以降、急激に拡大した「ライブアイドル」シーンですが、CDを潤沢に売り上げられるのはやはりテレビ等の既存メディアに乗ることができるメジャーなグループに限られるため、それら一部以外のグループは、SNSを駆使して情報発信を行い、ライブと物販・接触イベントを中心にした活動を展開するようになっていきます。

 その活動上もっとも重要となるライブで「いかに盛り上げることができるか」という点を重視すれば、多少コストをかけてでも「ロック」的なサウンドに向かうのは自然な流れです。実際、活動の途中からあえて「ロック」的な方向に舵を切るグループも多くいました。しかしその数が多くなってくると、ただ「ロック」と名乗って激しい音を鳴らすだけでは他のグループとの差別化が難しくなることもあり、後発のグループはさらに「ロック」からジャンルの細分化を図るようになっていきます。

4.「ラップ」のアイドル化~孤高の潮流

 アイドルによるラップの始祖をたどると1994年、(初代)東京パフォーマンスドールの市井由理が参加したEAST END×YURIに遡ります。

 ラップはその存在がメジャー化して以降様々なジャンルの楽曲で使用されるようになると共に、2003年にはHALCALIがデビューしてヒットしたり、その後もフィメールラッパーは次々に登場して活躍するようになります。しかしアイドルの楽曲としては、1曲ラップ調の曲をやったり、曲の一部にラップを取り入れる等のパターンはあっても、本格的な「ラップアイドル」は登場しませんでした。

 それは恐らく「ラップはスキルがあってこそ」という制作側の先入観、そしてそれだけのスキルを持ち得る女の子がアイドルとして活動することに手を挙げなかったためと思われますが、その先入観を飛び越え、「可愛い」優先のアイドルとしてのラップが生まれたのは、2010年デビューのtengal6(後のlyrical school)と2011年デビューのライムベリーからということになるでしょう。

 前者はプロデューサーのキムヤスヒロ、後者はコンポーザーのE TICKET PRODUCTIONの、それぞれ思い付きに近いアイデアから始まったものですが、その後lyrical schoolはメンバーを入れ替えながら今も活動継続、ライムベリーは解散したものの、E TICKET PRODUCTIONの楽曲提供はMIC RAW RUGA (laboratory)に受け継がれています。

 アイドルを目指す女の子や運営を行う人の属性としてヒップホップラップを志向する層がいまだに薄いためか、残念ながら大きなムーブメントにはなっていませんが、様々なスタイルでの活動の後に2014年頃からラップデュオとして活動しているhy4_4yhや、ギターバンド的なトラックにラップを乗せる校庭カメラアクトレス、またO'CHAWANZや963等、ラップアイドルのシーンは現在も健在です。

関連記事