2019.10.19 16:00

コロナナモレモモは“マキシマムザホルモンの作品”である　兵庫慎司がデビュー作に感じた異質さ

　コロナナモレモモによる2曲、聴くと「コピーバンドのバージョンを買わされてもねえ」と思うような仕上がりではない。ちゃんとおもしろい。なんて言えば伝わるかな、そうだ、たとえば銀杏BOYZのトリビュートアルバムを聴いて「あ、サンボマスターが『NO FUTURE NO CRY』をやるとこうなるんだ？」っていうおもしろさ、あるじゃないですか。つまり、アマチュアがプロをコピーした感じじゃなくて、プロがプロをカバーした時くらいおもしろい、ということです。

　DANGER×DEERの音が加わっていることでずいぶん響きが変わっているなあ、とか、歌もギターも亮君の完コピをしたい「亮君が神である男」がタクマなのに、こうして聴くとちゃんと自分が出て亮君とは違うボーカルになっていておもしろいなあ、とか、いろいろ聴きどころがある。だから、ここまで過剰にいろいろ付けて超豪華にしなくてもいいのに。本店じゃなくて2号店だからサービス多くしなきゃと思ったのか？　亮君！　と言いたくなったが、考えたら亮君、本店の時もいつもこれくらい過剰にしてますね。

　要は、今の時代にパッケージを買わせたい、ということは音楽以外も含めて「これなら買いたい」というものにしなければならない、というかそういうものにしたい、俺そういうの作るの超得意だから！　という亮君の信念は、ここでも同じ、ということだ。よって、ファンは「ホルモンじゃないから買わなくていいや」というわけにはいかないのだった。

というふうに、つい、このプロジェクトのおもしろさにのめりこんでしまうが、なるべく冷静になって客観的に見ると、バンドの2号店を作って、その2号店が本店の昔の曲を演奏するシングルが出る。って、わけがわからないですよね、やっぱり。挙句そのシングルが『王様のブランチ』のエンディング曲になっているって、もう、「何？　この現象」と、言いたくなります。初週、あっさりオリコンのトップ10に入ってたし。（※10月7日付オリコン週間シングルランキングで4位を記録）

　あともうひとつ。そもそもこの2号店プロジェクト自体、「アウトサイダー広告代理人」である亮君が、日清食品「カップヌードル　コッテリーナイス」のプロモーションの一環として行っているものだ、という事実には、さらに言葉を失ってしまう。超巨大企業と組んで、超巨大広告代理店が間に入ったりしながら、こういうものを作り上げている、と考えると。

　特に、「ハングリー・プライド」の曲とMV。「CMとかのプロモーションとバンドの組み方、こんな方法があるのか……」と、目と耳からウロコが落ちました。しかも、このプロジェクトで、日本最大の広告＆マーケティングの賞を受賞しちゃうし。『ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS』のブランデッドコミュニケーション部門BカテゴリーでACCシルバーを受賞。ということは、その筋のプロからも一目置かれた、ということだ。

　なお、過去にリアルサウンドで、この2号店企画について、二回書いています。まだの方はぜひ。

・マキシマムザホルモン、なぜ2号店を開店？　デビューライブを観て感じたこと
・YouTube番組『ガチンコザホルモン』は映像企画のエポックに？　書類審査からオーディション編までを振り返る

■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「DI:GA ONLINE」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「KAMINOGE」などに寄稿中。