リゾ×AB6IX、リル・ナズ・X×BTS RM……さらに接近していくK-POPと英米アーティストの関係性

 K-POPリスナーならよくご存知の通り、「K-POPと英米アーティストのコラボレーション」自体、何も最近になって始まったことではない。JYJの楽曲にカニエ・ウエストが、BIGBANGのG-DRAGONの楽曲のリミックス版にフロー・ライダーが参加した2010年あたりから徐々に増えている。だが、昨年のRealSoundでの記事でも最も多い例と紹介されていた(参照)BIGBANGのG-DRAGONと元2NE1のCLがその流れを牽引していた2010年代前半の場合は、この2組のように英米のアーティストとの交流が深い一部のアーティストに限られていた印象だ。現在のようにコラボレーションがどんどん気軽に実現されるようになるには、何かしらの契機があったはずだ。

 その一つは言うまでもなく、K-POPの世界的なファンベースの存在を可視化させたBTSの成功だろう。世界各国の総合チャートでトップ10に入るほどのBTSの成功は、ヨーロッパでも、南米でも、中東でも、K-POPが一部のマニア層だけでなく、大衆的なレベルで注目を浴びていることを証明した。f(x)「4 Walls」やEXO「Power」などのプロデュースで知られるイギリスのプロデューサーデュオ・LDN Noiseはビルボードのインタビューで「K-POPの注目度は、信じられないほどの国際的なファン・ベースを通じて世界中で大きくなっています。アーティスト、レーベル、ソングライターがシーンを発見し、その一部になりたいと思っていて、楽曲はこれまで以上にチャートに入り、より多くのビューを獲得しています」と話している(参照)。BTSの成功以来K-POPシーンの重要度が上がったことは、先述のデュア・リパ、エリー・ゴールディングの例が示す通り、英米のアーティスト側からもコラボ実現のためにオープンに歩み寄る例が増えることに繋がったと思う。

 もう一つ、ここ最近K-POPグループがアメリカの現地レーベルと契約する例が急速に増えていることも注目に値する。最近1年だけでも、<Interscope Records>と契約としたBLACKPINKを始め、<Capitol Records>とNCT 127、<Epic Records>とMONSTA X、<Republic Records>とTXTとその例が多い。新人のTXTを除けば、すでに英米アーティストとのコラボ曲を発表しているアーティストたちであることは偶然でないだろう。現地における流通拡大等のコマーシャルな面が主な目的だと思うが、現地の大手レーベルとの契約は各グループが晴れてアメリカの音楽シーンの一員になったことも意味する。K-POPと英米シーンが産業的にもより接近したことで、本稿で紹介したようなコラボレーションが増えるのもより自然なことだろう。

 こうして国境を大きく超えたコラボレーションが増えることはリスナーたちに、アメリカ、イギリス、韓国といったそれぞれの国のシーンをよりフラットに捉えることを促すはずだ。もちろんそれは韓国だけに限らない。近年、アジア各国や、中南米、ヨーロッパの非英語圏のなどに出自を持つアーティストが英米のシーンの表舞台に立つことは珍しくない。それぞれのアーティスト同士のコラボレーションは一度きりでも、その積み重ねはポップミュージックの世界地図を塗り替えて行く。

■山本大地
1992年生まれ。ライター、編集者。海外の音楽を中心に執筆。2016年まで「Hard To Explain」編集部。現在は音楽メディア「TURN」編集スタッフも。

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