欅坂46 平手友梨奈「角を曲がる」で表現された葛藤と解放 過渡期迎えるグループとのリンクを考察

 しかし、その考察のほとんどが推測の域を出ないものばかり。一つ、「角を曲がる」のメッセージを追う手がかりとして、『響 -HIBIKI-』のホームページに主題歌について月川翔監督のコメントがある。

「15才の鮎喰響と現在の平手友梨奈が重なり合ったような歌詞。いくつもの騒動を経てなお角をひとつ曲がっただけ、という鑑賞後感を支え、響と出会った人々の人生の転機にも思いを馳せられるエンディング曲になりました」

 さらに、月川翔監督は終演後に「角を曲がりましたね」ともツイートしている。デビューから3年5カ月で欅坂46が辿り着いた東京ドームという節目。9thシングルでの初の選抜制導入。これをキャプテンの菅井友香は「欅坂46が太く強くなるために必要な乗り越えなきゃいけないこと」と話していたが、常にグループのセンターに立ってきた平手もまた自分自身を超えるために苦悩し葛藤してきた。欅坂46、メンバー一人ひとり、そして平手にとってもターニングポイントであった東京ドームという場所で最後に「角を曲がる」が披露されることによって、グループが次の未来へと歩みを進めていくイメージは大きくなる。もし、これがアンコールの「不協和音」と逆であったならば、印象も違っただろう。

 あまりにも考察が加速し見失ってしまいそうになるが、「角を曲がる」の素晴らしい部分は、平手のダンスパフォーマンスと表情の機微だ。ステージの上で軽やかに舞い、大人からの支配に抵抗し、柔和な笑顔で笑えば、鬼気迫る表情へと変わっていく。『響 -HIBIKI-』公開から1年。鮎喰響の曲でありながら、改めて現在の平手友梨奈を映し出したのが「角を曲がる」という楽曲だ。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

関連記事