「宇宙」インタビュー

loundraw×HIDEYA KOJIMAが語る、デビュー曲「宇宙」とCHRONICLEが目指す表現の追求

 気鋭のイラストレーター・loundrawと、サウンドクリエイターのHIDEYA KOJIMA、シンガーのT.B.Aの3人によって結成され、「物語」「映像」「音楽」を組み合わせた新しい形の表現を追求する音楽アート集団、CHRONICLE。先だって6月に配信限定でリリース、併せて予告編アニメ映像も公開していた彼らのデビュー曲「宇宙」が、いよいよフィジカルで9月4日にリリースされる。プロジェクトの成り立ちについて話を聞いた前回のインタビュー(loundraw×HIDEYA KOJIMA、CHRONICLEの成り立ちと“アートの力”を信じた表現方法を語る)に続き、今回はデビュー曲「宇宙」の制作風景について、loundrawとHIDEYA KOJIMAの二人にじっくりと語ってもらった。(杉山仁)

「この3人で生み出した中で、ふさわしいものを、手探りでもいいから追求しよう」

HIDEYA KOJIMA

――CHRONICLEはそれぞれ得意分野が違うメンバーが集まっているプロジェクトだと思います。だからこそ聞いてみたいのですが、loundrawさんとKOJIMAさんは、自分の得意分野以外の要素については、これまでどんな距離感で接してきたのでしょうか?

loundraw:僕の場合、普段から絵を描いているときにも音楽を聴いていることが多いので、自分を支えてくれるものでもありつつ、同時に憧れでもあるという感じです。僕は音楽が好きでありつつも、自分で「音楽が作れる」とは思わなかった人間なので、そういう意味でも以前から(音楽制作に対して)憧れを持っていたんですよ。よく聴いているアーティストはMVも印象的なものが多いので、そういった部分も含めて、影響を受けていると思います。

―― 一方で、KOJIMAさんが映像作品で印象的だったものというと?

KOJIMA:映像作品だと……最初に印象的な出会いをしたのは、小さい頃に観た『ハリーポッター』の映画でした。僕が初めて観に行った映画が『ハリーポッターと賢者の石』(2001年)で、CGの映像表現の現実なのか夢なのか区別がつかなくなる雰囲気に惹かれて、エンターテインメント全般にそういうものを求めるようになりました。個人的には、ローくんの絵にも同じような魅力を感じます。キャラクターは近くにいるのに、背景はとても壮大になっていたりして、近いようで遠いような、現実にありそうでないような魅力があると思っていて。FLAT STUDIO(loundraw が設立したアニメーションスタジオ)のメインビジュアルにも、そういう魅力がありますよね。ローくんの絵は、キャラクターの表情ひとつを取っても物語が浮かぶというか、「この子は何を思っているんだろう」「何を見ているんだろう」ということを考えさせられます。……実際に、想定というか答えはあると思いますが。

loundraw:一応はあります。僕自身、いつも「この子はどんなことを思っているのかな」と想像しながら描いているので。それが何かは、言わないようにしているんですけどね(笑)。

――では、デビュー曲「宇宙」の制作過程について聞かせてください。前回のお話(loundraw×HIDEYA KOJIMA、CHRONICLEの成り立ちと“アートの力”を信じた表現方法を語る)では、loundrawさんが考えた物語の断片から、まずはKOJIMAさんが曲を考えたそうですね。

loundraw:僕は最初に物語の世界観だけを用意していたんです。

KOJIMA:まずはそのストーリーの断片と、ローくんが考えたCHRONICLEのビジュアル、そしてT.B.Aの声をヒントに、曲を作りはじめました。CHRONICLEの音楽を作る際には、「ダンスミュージックを作ろう」「ロックを作ろう」というふうに特定のジャンルの音にしようとは考えていなくて、「この3人で生み出した中で、ふさわしいものを、手探りでもいいから追求しよう」ということを大切にしています。そこで、これまで自分が培ってきたスタイルや常識を一旦置いて曲をつくっていきました。その結果、今までやったことがないアプローチもたくさん入ることになったので、制作を進めていく中で自分自身でも「ああ、こんなこともできるんだ」と感じることが多かったと思います。

――自分の新しい引き出しを開けるような経験になっている、と。

KOJIMA:そうですね。「宇宙」の場合、最初にできたのはピアノのイントロでした。あのフレーズは、静かに始まり壮大な世界を予感させるようなイントロで、CHRONICLEというプロジェクトのスタートの雰囲気に合うと思ったんです。それに導かれるようにメロディが出来て、サビは試行錯誤して何パターンもトライしました。僕は普段はクリーントーンが綺麗に出せるギターを使っていますけど、今回はそれも取っ払って、メロディや楽曲に合うものにしようと突き詰めた結果、サビでは歪んだギターも使っています。

――そこに、loundrawさんはどんなふうに歌詞をつけていったんですか?

loundraw:KOJIMAくんが楽曲を考える際に、僕が描いたCHRONICLEのメインビジュアルから発想を広げたと言っていたので、僕もそこから星や空を連想して、壮大な要素と、僕たちの日常とを繋ぐ歌詞が作れたらいいなと思っていました。その結果、サビの頭の〈何度、何度でも〉という歌詞が出てきたんです。これは年代を越えた「CHRONICLE(=年代史、編年史)」という大きな物語で繰り返されていくことを表現した言葉でもありますし、同時に、ひとりの人の気持ちの浮き沈みを表現したものにも取れるように考えたものです。

CHRONICLEメインビジュアル

――その「壮大なもの」と、「日常的なもの」のどちらにでも取れる、というアイデアはどこから出てきたものだったんでしょう?

loundraw:たとえば、夢もそうだと思うんですけど、人はギリギリ手が届かないものに憧れると思うんです。それはある意味スケールが関わってくる話で、物理的なものだけではなく、気持ちの面についても、そういう幅を描けたらいいなと思っていました。

KOJIMA:ローくんの歌詞って、いい意味で歌詞っぽくないと思うんですよ。歌詞のように言葉のリズムは曲にはまっていますけど、もっと情報量が多くて詩的な歌詞のように感じられます。そういう歌詞で、なおかつメロディにバチっとはまっていることに感動しました。特に〈何度、何度でも〉のところは、メロディをつくっている段階から僕も「繰り返しの言葉が入ったらいいな」と思っていました。

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