『mortal portal e.p.』インタビュー

m-floに聞いた、20周年以降の新モード「メチャクチャなパラレルユニバースみたいなことが起こる」

 2017年12月にオリジナルメンバーであるLISAの復帰を発表。翌年3月に『the tripod e.p.2』をリリースして再始動したm-floが、今年7月7日に迎えるメジャーデビュー20周年に向けて『mortal portal e.p.』を完成させた(m-floが語る、再結成への想いとそれぞれの現在地「今は間違ってることが面白いと感じられる」)。

m-flo / EKTO Music Video

 1曲目を飾る「EKTO」は届かぬ想いをテーマにした切ないラブソングで、美しいピアノと神秘的なストリングスの音色が印象的。続く「STRSTRK」はダークな金属音と粗暴なシンセ音が交錯するクレイジースペイシーチューン。m-floの持ち味であるレフトフィールドな感性が炸裂したアバンギャルドにして超絶クールな楽曲だ。彼らはこの2曲をどのようにつくりあげたのか。現在のチームワークやmortal portalというワードに込めた意味、さらには今後の展開までオープンに語ってもらった。ラストに出てくる☆Takuの哲学的な答えも必読だ。(猪又孝)

3人のチームワークは65点?

m-flo

ーー『the tripod e.p.2』のリリースから1年ちょっと経ちますが、3人のチームワークは今どのような感じですか?

☆Taku:リリースからは1年だけど、再始動はその前からだから、チームワークはいいんじゃないですか? そこはLISAに聞くのがいちばん良いと思う。

LISA:相変わらず熱いですよ、私は。愛がなきゃ動かないし、やっぱり音楽は愛から生まれると思うから。Loveを感じながら私はホットにやらせていただいてます。

VERBAL:点数で言うと65点くらいかな。

ーーその理由は?

VERBAL:僕たち3人のグループLINEがあるんですけど、LISAを招待するといつもすぐ退会しちゃうんですよ。

LISA:それ、言うよねー。私、グループLINEがすごく苦手で。そこに入って発言するのが怖いんですよ。あれはダメっす。

ーー1対1ならOKなんですか?

LISA:それなら全然いいんです。逆にそれが嫌なの? って思っちゃう。

VERBAL:けど、このあいだ、結局、送ってる内容は☆Takuと僕で一緒だということが発覚して。だったら同じところで話せばいいじゃん、って言うんですけど。

LISA:いや、私は一人ひとりがいいの! 一人ひとりに送るのが手間だと思わないし!

VERBAL:けどシナジーが欲しいじゃん、音楽つくるときも。10人くらいのグループLINEならまだしも、3人で作ったグループLINEを退会されたら俺と☆Takuしかいなくなる。それじゃ、いつものLINEだから(笑)。

LISA:けど、私はそれまで1対1でやってきたし、その方が好きなの!

☆Taku:あはは。m-flo、LINE事件ですね。スクープですよ、これ(笑)。

勝ちパターンにこだわらない

☆Taku Takahashi

VERBAL:m-floが再結成したとき、僕はみんなに、なんでもかんでも共有することをテーマにしようって言ってたんですよ。要はガラス張り。良いこともシブイ話も共有して頑張りたいっていう話をして、LISAも「だよね!」って言ってくれたのに、いつも退会されちゃうんですよね。だからLISAが退会しなくなったら90点台になると思います(笑)。

ーー『the tripod e.p.2』リリース後は、昨年末にシングルを立て続けに出しました。☆Takuはm-flo以外の仕事も多いですが、最近はずっとm-floモードで制作している感じですか?

☆Taku:そうですね。特に去年の年末から今年の前半までは、やっと方向性が見えてきてガーッとトラックを作ってました。今はDJの数もだいぶ少なくして、それを完成させる方にシフトしてます。しばらく音楽を作るのがホント嫌いだったんですよ。でも最近楽しいです。

ーーそんな中、今回はどのようなEPをめざしたんですか?

☆Taku:まずEPを作ろうとしてつくったEPじゃないんです。

ーー去年出したシングル曲「MARS DRIVE」も入ってますしね。

☆Taku:そう。20周年だし、記念になるようなものを出したいよねっていう話をしていて。シングルでポンと1曲出すよりは、楽しい感じの方がいいじゃんって。で、今ある曲の中で「EKTO」と「STRSTRK」と「MARS DRIVE」を入れようと。この3曲にしようって言ったのは僕とVERBALじゃなくてスタッフなんですよ。セカンドオピニオンみたいな形で「こういう感じで行くのはどう?」って提案されて「いいじゃん」って。で、EPのタイトルを考えなきゃねってことになってVERBALが「mortal portal」というワードを出したんです。

ーー『mortal portal』と名付けた意図は?

VERBAL:デビューした頃の僕たちは未来や宇宙というコンセプトを打ち出していて。たとえばインタールードで「将来CDはなくなるであろう」とか言ったりするのは当時、新鮮だったと思うんです。そういうコンセプトはまだ好きなんですけど、ちょっと擦り倒した感じがあるので、次のファンタジーはなんだろう? と、みんなでざっくばらんに話していて。そのときにパラレルユニバースだろうと。要は異次元です。それって説明できないし、不透明でワクワクする感じがあるから、そこにportalを通して行くとか、我々の世界に来て下さいっていう意味を込めたんです。で、portalと語呂の良い言葉っていうところからmortalを付けたんです。

☆Taku:portalってワームホール(wormhole=時空トンネル)みたいなことじゃん。で、mortalってコトは、そのワームホールが消えちゃうかもしれないってことだよね。

ーーmortalには「いずれ消滅する」みたいな意味がありますからね。

☆Taku:そう。だから、もしチャンスを逃したら、そのportalが見つけられないっていうことにもなる。

VERBAL:そういう意味もあるんです。immortalだと語呂が悪いし、ずっと存在するという意味になるからドキドキ感がない。「なくなっちゃうかも」っていう方がロマンチックだなって思ったんです。

ーー20年前に打ち出していた未来や宇宙がもう過去になってる感じもありますしね。

VERBAL:そう。2000年に「Mirrorball Satellite 2012」っていう曲をつくったときに「2012年か。すげえ先だけど、実はそんな先でもないよね?」っていう話をしてたけど、それがもう過去になってる。でも、そういう数字じゃなくて、縦軸でも横軸でも考えられるものにしようと。たとえば映画『インターステラー』とかそういう内容じゃないですか。

ーー☆Takuの好きなMARVEL作品だと『スパイダーマン:スパイダーバース』のマルチバースとか、そういう概念ですよね。

☆Taku:うん。そうそう。

ーー前作『the tripod e.p.2』をつくるとき、☆Takuは、再始動ということもあり、かつてのm-floサウンドを意識しながらそれをどうアップデートさせるかをテーマにしていたと話していました。今回はどんな意識で制作していましたか?

☆Taku:その“かつて”を捨てました。前作で1回やって、自分らが思ってた以上にお腹いっぱいになっちゃって違うものが欲しいなって。で、ある意味それがm-floじゃない? っていう結論になったんです。

ーー真新しいことをやることがm-floだろうと。

☆Taku:そう。勝ちパターンにこだわらない。

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