兵庫慎司の「ロックの余談Z」 第25回

サポート降格、週末だけ活動……各々のスタイルを軸にバンドと就職問題を考える

 この「そういうこともあるよね」というのは、「そういうこともあるというのが俺たちはわかるよ」という意味合いではない。「そのバンドの中のことはそのバンドにしかわからない、だからハタから見たら理解不能だけど、そのバンドにとってはそれしかなかったということがある、それを俺たちはわかるよ」というニュアンスだった。

 たとえば、5月19日代官山UNIT/UNICEで開催された、Sundayカミデ主催のイベント『Love sofa Tokyo』で、ワンダフルボーイズを観たのだが、番長(Dr)がいなくて、代わりにチャーリーという男がドラムを叩いていた。そのままなんの説明もなくライブを続けたワンダフルボーイズは、後半のMCでSundayカミデが、今日は番長が大阪で主催するレゲエのイベントと当たってしまったので不在である、ということをさらっと言葉にした。

 もうひとつたとえば、長谷川プリティ敬祐(Ba)、が交通事故に遭ってしまい、療養のため離脱しているgo!go!vanillasは、2018年末から年明けにかけてのライブは仲間のバンドマンたちにサポートを頼むことで乗り切り、4月以降は、プリティが事故前に弾いたベースの音源を使って3人でステージに上がる、という形でライブを続けている。これは脱退とかではなく不慮の事故なので、一緒にくくるのは本来は違うのかもしれないが、「バンドがひとり欠けた時にとる方法」の一例として挙げました。

 さらにたとえば、the HIATUS。活動がスタートした時点で、ドラマーは柏倉隆史と一瀬正和のふたり体制だった。「いいドラマーがヒマなわけない」「でもいいドラマーは確保したい」「じゃあハナからふたりにして来れる方に来てもらおう」という、とても現実的な考えから、そうしたのだと思う。

 ことほどさように、バンドにはいろんな形があるし、いろんなやりかたがある。これはバンドだけどこれはバンドじゃない、みたいなことなんてない。全部バンドだ。だから気にするな、そのまま行け、ハンブレッダーズ。と言いたくて書き始めたら、こんな長いことになってしまった。

 余談。あとこういう「バンドマンと就職」問題って、昔からあるテーマだが、今後さらに増えていくだろうなあ、とも思う。「CDで当てさえすれば印税でなんとかなる」というビジネスモデル、崩壊してもうずいぶん経つわけなので。

■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「DI:GA ONLINE」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「KAMINOGE」などに寄稿中。

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