山猿、“独り”を歌うことで“愛”を届ける アルバム『あいことば6』を分析
山猿が5月22日にアルバム『あいことば6』をリリースした。
『あいことば』と冠したオリジナルアルバムを約8年の間に6枚発表してきた山猿。今作ジャケットの帯にある「こんな時代の真ん中で、あいも変わらず“愛”を唄う。さみしがりやたちに贈る“あいのことば”」という言葉は、直球のポジティブソング「DREAMER」を収録した『あいことば4』、敬愛する先輩・SEAMOの「マタアイマショウ」カバーや夢と現実にもがく姿を描いた「満月」を収録した『あいことば5』などの過去作でも一貫して掲げられてきた、山猿の代名詞ともいえるキャッチコピーだ。
『あいことば6』でも、山猿は普遍的な愛を歌い、家族のような“ファム”(山猿ファンの総称)に向けてメッセージを投げかける。軽快なファンクミュージックに乗せ恋心を歌った「ツギハギ」、2PAC、Dr. Dre、Snoop Doggといった自身のヒップホップルーツを提示するドープなヒップホップサウンドの「slang」、アップテンポなバンドサウンドでアルバムのラストを飾る「相棒2」と、これまで以上に多彩なジャンルに挑戦した『あいことば6』。そんなアルバムを聴いて筆者がイメージしたのは「独り」というワードだった。
2019年1月に配信リリースされた「じゃあね…」は、ファムに向けライブで先行して披露されていた楽曲。山猿が愛してやまないアーティスト・casumiのイラストをリリックビデオに起用し、LINE MUSIC配信チャートにおいて1位を獲得した。広くファムに浸透していきながら、同時にこの曲は次のアルバムが示すメッセージの一欠片でもあった。当時、配信を前にした山猿は自身のTwitterで「綺麗や可愛いだけじゃなく… 心が綺麗な女の子ほど過去にたくさん恋をして傷ついている。」とツイート(山猿公式Twitterより)。片思いをしている全ての人に向けた叶わない恋の歌が「じゃあね…」である。