MGFが世代やジャンルを超えて響かせたグルーヴ HUNGER、Shin Sakiuraら迎えた自主企画を見て

 続いて登場したのはHUNGER。20年近い活動を経ても、常にオリジナルでフレッシュなラップを提示し続け、最前線で戦う彼だが、その圧倒的なスキルはこの日も健在。また、MGFの世代から考えても、若いリスナーが多い会場に向かって、日本語ラップの歴史を人名を散りばめることで表現した「JAPPCATS」を披露したことは、非常に意味を感じさせる展開だった。

 そしてHUNGERのライブにはゲストとしてサイプレス上野が登場し、サイプレス上野とロベルト吉野「RUN AND GUN pt2 feat.BASI,HUNGER」や、RHYMESTER「爆発的 feat. サイプレス上野 & HUNGER」などをタッグで披露。キャリアを経てきたラッパーの地力の強さを提示する。そしてこのイベントへの感謝と次世代を繋ぐ意思を織り込んだフリースタイルを経て、ラストはGAGLEのクラシック「雪ノ革命」。GAGLEが現在のMGFと同年代だった時期の楽曲を披露するという、メッセージ性の高い展開を経てライブはMGFへ。

 3MCというバラエティを生かして派手に登場するMGF。どうしてもパブリックイメージとして、いわゆる非ストリート系のラッパーのライブは何故か「ゆるい」と思われがちだが、例えばTOKYO HEALTH CLUBやDos Monosなどのように、タフでエンターテイメント性の高いパフォーマンスを魅せるグループは決して少なくない。それはMGFも同様で、低い温度でライブの低層部を支える1010、フリーキーなスタイルで華やかな空気を送り込むJapssy、確かなスキルと視野の広さでパフォーマンスを安定させるKSKと、MGFのライブは非常にパフォーマンスとして優れているし、とにかく心地が良い。そして、その空気感をこの日さらに高めたのは、序盤で披露された彼らの代表曲である「優しくしないで'94」だろう。キャッチーなフックでは会場で多くの手が上がり、彼らへの期待感を感じさせられる。

Japssy

 そのまま「湿った夜の儚き嵐 feat. Kan Sano」や「Hey Dude」、Shin Sakiuraを迎えての「忘れられなくて feat. Shin Sakiura」など、ニューアルバム『Real Estate』の楽曲を中心に披露していく。MCではKSKの「自由ってなんだと思う?」という問いかけに対して、かなりグダグダなトークが繰り広げられたが、この「交わってるのか、交わっていないのか」というアンバランスさも、MGFの魅力の一つだろう。

1010

 そして「Wonder Peace Creation」、「時の流れのせいで」に続いて、アンコールではアルバムのラスト曲でもあり、サザンオールスターズへのオマージュだという「Bling Bling Woman」を肩を組みながら歌い、会場の一体感は最高潮に。LOCASのクロージングDJもこの流れを受け、サザンオールスターズ「愛の言霊~Spiritual Message~」から始まるなど、楽曲の文脈を丁寧に受ける展開も印象的だった。

LOCAS

 デイタイムでありながらも、しっかりと「パーティ」としての機能性に加え、MGFのパーティを通してのメッセージ性も表現されたこのイベント。HIPHOPというジャンルにとらわれない、MGFならではなオルタナティブな空間を十二分に感じられる時間だった。

(文=高木 "JET" 晋一郎/写真=Nao Takeda)

■リリース情報
アルバム『Real Estate』
価格:¥2,500(ライブ会場限定販売)
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