テレビは平成の時代をどう切り拓いたのか? 『紅白』やアイドル文化の変遷から太田省一が振り返る
平成から令和へとテレビの過渡期は続いていく
ーー平成はインターネットの普及もテレビに様々な影響を与えました。はたして今後、インターネット上のコンテンツがテレビの役割を担う時代がやってくるのでしょうか。
太田:現状はテレビとネットがせめぎ合っているというのが個人的な印象です。ネットと一口に言っても、新しい地図(稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾)がAbemaTVでテレビ的なエッセンスを感じさせるSNSバラエティに挑戦したり、YouTuberのように一般の個人でコンテンツを作る人たちが登場したりというようにさまざまです。また一方で、『紅白』や朝ドラなどテレビ番組で影響力を持つものもまだまだ存在します。ネットがテレビに取って代わるというよりは、それぞれの特徴を活かしながら、相乗効果を狙うようなコンテンツが出てくるのではないかと想像します。
ーーテレビとインターネットの関係性で言えば、昨今、テレビとSNSが結びつくことによって特に芸能スキャンダルにおいて大きな騒ぎになるという出来事が増えています。
太田:それについてはテレビだけではなく、SNSをニュースの素材にすることについての問題があると感じます。SNSは全体から見れば一部の人が発言していることにすぎないけれど、それをマスコミが取り上げるとまるで世論のような印象を与え、そのニュースを見た世間やメディアがまた騒ぎ立てる。SNSは基本的に誰でも見ることができるが故に、使い勝手のいいネタにされてしまっている印象はありますね。裏を返せば、SNSが象徴するように、ネットが私たちにとってそれほど日常的なものになったんだとも感じます。そこにはプラス面もあればマイナス面もある。ネットはまだまだ若いメディア。ネットの世界が成熟してルール作りが進むことでそういった煽りも自然と減っていくようになればと思います。
ーー最後に、今後のテレビに期待することは?
太田:テレビはネットに比べれば古いメディアになりつつありますが、それは必ずしも悪いことではありません。それまで蓄積してきたエンターテインメントを作るノウハウは、60年以上かけて築いてきた大きなアドバンテージです。それを使って何ができるのか。そしてテレビにこだわっていくのかネットに進出するのか。どのプラットフォームで何をやるのかが重要になっていくのではないでしょうか。今テレビが難しいのは、音楽もそうですが視聴者の趣味嗜好が多様化、細分化している中で、視聴率を獲得するため最大公約数を求める作り方を変わらずしなければならないということ。マニアックな部分、リアルなものが求められる時代に不特定多数の視聴者を相手にしなければならない。だからこそ、いろいろな試行錯誤が繰り返されている。平成から令和になってもテレビの過渡期はしばらく続いていくと思いますが、見る側としてはそこに潜む新しい可能性の芽を見逃さないようにしたいですね。
(取材・文=久蔵千恵)