星野源は現代日本ならではのポップスター “POP VIRUS”を最大限に発揮した東京ドーム公演

写真=田中聖太郎

 こうしたライブ構成や演出もさることながら演奏自体もまた素晴らしい。ギターを長岡亮介、ベースをハマ・オカモト、ドラムを河村"カースケ"智康、キーボードを石橋英子、MPCをSTUTSが担当し、息の合ったトークとパフォーマンスを披露する。星野源の音楽というのは主旋律ももちろん良いのだが、楽器同士の掛け合いやアンサンブルも見逃せない。「桜の森」のイントロで行われたギター2人のカッティング合戦や、「プリン」で見せる息ぴったりのバンド演奏は、紛れもなく彼のライブの見所のひとつである。

 本編終了後には会場中がすっかり彼の音楽の虜になっていた。筆者の両隣に座っていた記者陣も、アンコール中は心なしか笑顔で溢れていた。ポップという名のウイルスに取り憑かれ、日常を忘れて音楽に合わせて踊る人びとたち。その光景は、まさしく〈歌う波に乗っていた〉〈一拍の永遠〉そのものであった。

写真=田中聖太郎

 そういえば、筆者が足を運んだ東京ドーム公演では、会場に入るとBGMにマイケル・ジャクソンの1979年のアルバム『Off The Wall』が丸ごとかかっていたが、キング・オブ・ポップの異名を持つマイケルこそ歌からダンスまで何でもできるエンターテイナーであった。星野源もまた日本を代表するエンターテイナーのひとりだが、カジュアルなパーカースタイルの似合う彼のような親しみやすい人柄のミュージシャンは、現代の日本ならではのポップスターなのだと思う。“ポップ”という今最もその存在意義に疑問符のつく言葉に、現代なりの解を与える存在が星野源という人物ではないだろうか。

写真=田中聖太郎

 歌も歌えて曲も作れる、笑いも取れて親しみ易い。ダンスからバンド演奏まで難なくこなす。まさにオールラウンダーな魅力を目の当たりにした東京ドーム公演だった。

(文=荻原梓/メイン写真=西槇太一)

オフィシャルサイト

関連記事